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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続くなか、契約文書に押印をするために出社を余儀なくされる「ハンコ出社」がテレワークの障害になると問題視されています。
そのため、ハンコを使わずにオンライン上で契約を締結できる電子契約サービスに注目が集まっています。
今回は電子契約サービスの導入を検討している企業の担当者向けに、電子署名と電子印鑑の違い、電子署名の仕組みなどの基礎知識を加え、おすすめのサービスの概要を紹介します。
電子署名・電子印鑑が注目される背景
電子署名や電子印鑑が注目されるようになった背景や法改正の流れを簡単に解説します。
テレワークの推進を目的とした「脱ハンコ」の流れ
新型コロナウイルス感染症の影響拡大によって企業でテレワークが推奨されるなか、「脱ハンコ」の議論が本格化しています。
「脱ハンコ」の動きは過去にもあり、2001年には電子署名が手書きの署名や押印と法的に同様の効力がある旨を定めた「電子署名法」が施行されています。
しかし、中小企業が多い日本では契約業務のフロー変更や新たなコスト発生などがネックとなり「脱ハンコ」の施策は普及しませんでした。
ところが、近年は電子署名のクラウドサービスが次々と登場し、電子署名の導入が進みつつあります。
2020年6月には、押印がテレワークの障害になっているとして法務省や経済産業省などがガイドラインを作成し、企業に「脱ハンコ」の施策を進めることを求めています。
「脱ハンコ」に関する政府のガイドラインの内容
「脱ハンコ」に関する 政府のガイドライン「押印についてのQ&A」では、通常の契約書に押印をしなくても法律違反とならないことや、電子署名の効力などが解説されています。
その他、テレワークの観点から押印以外の手段を確保する必要性を指摘し、文書の真正を証明する手段として電子署名や電子認証サービスの活用を推奨しています。
(参考:法務省|押印についてのQ&A)
電子署名と電子印鑑の違い
電子契約に馴染みがない場合、電子署名と電子印鑑の具体的な違いがよく分からないということもあるかもしれません。
ここでは、電子署名と電子印鑑の概要と法的な扱いの違いを解説します。
電子署名とは
電子署名とは電子証明書の利用方法の1つで、電子文書が改ざんされていない正式なものであることを証明するための署名です。
PKI(Public Key Infrastructureの略。公開鍵暗号基盤)というデータの暗号化技術を利用して、署名した人の特定や改ざんの防止を行うことができます。
電子署名は従来の紙の書類における、本人のサインや押印にあたる効力があります。
電子印鑑とは
電子印鑑(電子印)とは、単純に印影を画像化したものと、印鑑の使用者の情報や契約書に押印した日付のデータ(タイムスタンプ)を付与できるタイプの2種類があります。
前者は電子印鑑の無料サービスやフリーソフトを使ってパソコンで簡単に作成し使用できますが、複製も容易なので、無断で使用される不安があります。
後者は使用者情報やタイムスタンプが記録されるため、セキュリティ面での信頼性を担保できるほか、社外文書にも使用しやすいというメリットがあります。
電子署名を使うメリット
電子署名を導入することで得られる代表的なメリットを3つ紹介します。
リモートでの契約業務の実現
第一に、オフィスに出社しなくても契約業務が可能となり、テレワーク実施の障害を取り除ける点にあります。
出社に伴う新型コロナウイルス感染症の感染リスクの抑制が実現できます。
業務効率化の推進
紙で取り交わしていた契約を電子署名による契約に置き換えることで、書類を郵送したり、先方に確認の連絡を入れたりといったフローを短縮でき、業務効率化につながります。
ペーパーレス化の推進
紙の契約書が電子化されることでペーパーレス化が進みます。
書類の印刷費やインク代の削減、書類の保管スペースが必要なくなるなど、書類管理にかかっていたコスト削減の効果が期待できます。
電子署名を使うデメリット
電子署名を用いても解決しない点や導入時に発生する問題などのデメリットを紹介します。
契約によっては不可になるケースも
基本的にほとんどの契約は電子化に対応していますが、不動産に関連するものなど一部に法律で書面による契約が必須なものもあります。
以下は電子化が認められていない文書の実例です。
・定期借地契約
・定期建物賃貸借契約
・宅地建物売買等媒介契約
・マンション管理業務委託契約
・投資信託契約の約款
・一般消費者と対象とした、訪問販売等特定商取引における交付書面
取引先の理解を得る必要がある
自社が電子署名のシステムを取り入れても、取引先企業が契約方式に電子署名を採用していない場合はサービスを利用できません。
取引先と電子署名による契約締結を希望する場合は、電子署名のメリットや安全性を説明し、同意を得る必要があるでしょう。
電子署名を強化するタイムスタンプ
電子署名にも機能上の弱点があり、これを補完する技術が「タイムスタンプ」です。
「タイムスタンプ」の内容と電子署名の補完として機能する点を2つ解説します。
タイムスタンプとは
電子署名に活用されるタイムスタンプとは、刻印されている時刻以前にその文書が存在し、その時刻以降文書が改ざんされていないことを証明するために用いる技術です。
電子署名に信頼性を与える
タイムスタンプは、時間を刻印することで電子データに信頼性を与えることができます。
電子署名はそのままでは「いつ文書に署名をしたか」を証明することができませんが、タイムスタンプを使うことで、署名した電子データが確実にその日時に存在しており、その日以降改ざんされていないという証明になります。
電子署名の有効期間を延長できる
通常の電子署名の有効期限は1~3年ですが、有効期限10年のタイムスタンプを使うことで電子署名の有効性を延長することが可能です。
また、10年ごとに新しい暗号技術に基づくタイムスタンプを押して、期限を延長する国際規格「長期署名」を電子契約書に付与することで、署名検証できる期間を、10年、20年、30年と延長することが可能になります。
人気の電子署名サービス6選
現在、電子署名を用いて電子契約を結ぶことができるクラウド型のサービスが数多く用意されています。
ここでは、安全性の高さや使いやすさ、コストパフォーマンスなどの面で優れたサービスを6つ紹介します。
人気の電子署名サービス①:法的安定性が高い -リーテックスデジタル契約-
リーテックスデジタル契約は、金融機関と同レベルの厳重な本人確認を実施し、業界最高峰の法的安全性を誇っている電子署名サービスです。
デジタル契約の内容は法学者と大手弁護士事務所が監修し、何重ものシステムにより「証拠力」を担保した契約書を発行します。
反社会的勢力との取引排除や安全性の高い電子契約を望む企業に適したサービスです。
導入費用は無料で、「エントリー」、「スタンダート」、「プレミアム」、「エンタープライズ」の4種類の利用プランがあります。
エントリープランは月額無料で契約受信(ダウンロード)は無制限ながら契約発信(アップロード)は5回まで、スタンダートプランは月額1万円〜で認印レベルの契約発信は無制限、実印レベルの契約発信は月5回までの制限があります。
プレミアムプランは月額10万円〜で、認印レベルの契約発信は無制限、実印レベルの契約発信は月20回まで可能で、それ以上は1回につき500円の課金が発生します。
エンタープライズプランは別途見積もりが必要となります。
人気の電子署名サービス②:機能が充実 -GMO電子印鑑Agree-
GMO電子印鑑Agreeは、電子サインと電子署名という2つの署名タイプが利用できるサービスです。
電子サインタイプの契約ではメールによる認証、またはメールによる認証に手書きサインを加えた認証を行い、電子署名タイプの契約では電子証明書による認証を行います。
電子契約を結ぶ際、実印を使用するような契約には電子署名を採用し、実印以外を使用する契約には電子サインで押印をするといった使い分けも可能です。
この他、スマートフォンやタブレットでの署名ができたり、紙の契約と同じような見た目の印影を登録できたりと、スムーズに電子契約が結べる機能が充実しています。
利用プランは3種類あり、電子サインの利用ができる無料の「お試しフリープラン」、月額1万円〜で電子サインが利用できる「契約印プラン」、月額2万円〜で電子署名と電子サインが両方利用できる「実印&契約印プラン」で、「実印&契約印プラン」は年間契約となります。
人気の電子署名サービス③:知名度が高い -クラウドサイン-
クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供している電子契約サービスで、弁護士監修の安全性の高さと国内シェア80%以上を占める知名度の高さが特徴です。
契約書の準備から押印までシンプルな手順で完了でき、取引先企業がクラウドサインのサービスを利用していなくとも、クラウドサイン上で押印をすることで電子契約の締結が可能です。
利用プランは基本の3プランと、月間5件までの契約が無料で利用できるフリープランがあります。
Standardプランは月額1万円〜で書類作成・送信と電子署名・タイムスタンプなどの基礎機能が利用でき、紙の書類のインポート機能を追加したStandard plusプランは月額2万円〜、高度な管理機能を追加したBusinessプランは月額10万円〜で利用ができます。
人気の電子署名サービス④:440万社のネットワークを持つ -BtoBプラットフォーム契約書-
BtoBプラットフォーム 契約書は、40万社のネットワークを有しているため、取引先が同サービスを利用している可能性が高く、導入しやすい点が大きなメリットです。
電子契約を結ぶ際には、取引先企業は無料でサービスを利用することができます。
導入後は見積・契約・受発注・請求で発生する書類・帳票類をすべて電子データ化することができ、複数の取引先と、契約書の発行・受領の両方を電子データ化できるのも大きな特徴です。
プランは3種類あり、無料で利用できるフリープラン、月額1万円〜で電子契約がスムーズにできるシルバープラン、月額3万円〜で電子契約に加え書類管理も一元化できるゴールドプランから選べます。
人気の電子署名サービス⑤:送信できる契約書が無制限 -ワンストップ契約サービスNINJA SIGN(忍者サイン)-
NINJA SIGN(忍者サイン)は、契約書の署名から管理までを一元管理できる電子契約サービスで、月額利用料だけで何枚でも契約書を送信できます。
NINJA SIGNのライセンスを持っていない取引先相手でも、署名の依頼を送付し、契約締結までが可能です。
利用プランは4種類用意されています。
無料で月5通まで契約書が送信できるFreeプラン、月額4,980円〜で契約書が何枚でも送れ、1アカウントのみの運用が可能なLightプラン、月額19,800円〜で6アカウントの作成が可能、契約書送信数は無制限で各種の追加機能が利用できるLight+プラン、個別の見積もりで利用できるProプランがあります。
人気の電子署名サービス⑥:完全無料で利用可能 -e-sign-
e-signは、電子契約大国・エストニア発の電子契約サービスで、契約数の制限もなく完全無料で利用できます。
マイナンバーカードと連携したデジタルIDで署名者の本人性を担保する仕組みを採用しており、署名はスマートフォンでも可能です。
電子署名の有効期間は3年で、タイムスタンプによる長期署名には対応していないため、長期にわたる電子契約を締結する際には不向きなサービスと言えます。
テレワーク促進のため電子契約フローの整備を
厚生労働省が支援助成金を出すなど新型コロナウイルス感染症対策として普及するテレワークを円滑に進めるためには、電子契約サービスの導入は不可欠と言っても過言ではありません。
電子署名を活用して契約業務を行うには、社内外共に理解が得られやすいシンプルで安全性の高いサービスを導入できるかがカギとなります。
自社の契約書の種類を洗い出した上で、いくつかのサービスの無料プランを試験的に導入し、自社に適したサービスを選定しましょう。