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いま企業に求められる健康経営とは?具体的な取り組みやメリットを紹介

2020.02.14

従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する「健康経営」。
生産性の向上や企業のイメージアップなどのメリットが期待され、働き方改革における有休の取得義務化や時間外労働の上限規制、企業の人手不足などを背景に、注目度が増しています。

本記事では、健康経営が注目される背景や、健康経営に取り組むメリット、健康経営への具体的な取り組みについて紹介します。

(健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です)

健康経営とは ~今、健康経営が注目される背景~

健康経営の具体的な取り組みやメリットを紹介します。
健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性などを高めるための投資であるとの考えの下、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する経営手法をいいます(※1)。

※1 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課「企業の『健康経営』ガイドブック(改訂第1版)」(2016年)より

 

以前から大企業を中心に健康経営への取り組みは行われていましたが、それは一部の企業に限られたものでした。その後、2013年に日本政府で閣議決定された「日本再興戦略」の中に「国民の健康寿命の延伸」が掲げられたのを機に、2014年度には経済産業省が「健康経営銘柄」の選定制度を、2016年度には「健康経営優良法人」の認定制度を創設しました。

5回目となる「健康経営銘柄 2019」では26業種35社を選定、3回目となる「健康経営優良法人2019」では、大規模法人部門(ホワイト500)に816法人、中小規模法人部門に2501法人が認定され(2020年2月1日現在)、着実な広がりを見せています。

 

一方で、2019年4月からは国が推進する働き方改革が本格的にスタートし、年次有給休暇の取得義務や時間外労働の上限規制(中小企業は2020年4月から適用)など、改正法が施行されました。

これらの新たな制度に対応していくためには、生産性の向上が不可欠であるといわれ、生産性の向上につながる健康経営が、企業規模を問わず注目を集めるようになっています。また、企業の人手不足へのアプローチとしても、企業イメージやエンゲージメントの向上が期待できる健康経営が注目されています。

次からは、健康経営に取り組むメリットとして主なものを3つ紹介していきます。

【健康経営への取り組みメリット①】生産性の向上

1つ目のメリットは、生産性の向上が期待できることです。

誰しも体調不良で欠勤して仕事が溜まってしまったり、無理をして出勤したものの仕事の能率が上がらないという経験はあるはずです。健康問題によって欠勤している状態を「アブセンティーイズム(Absenteeism)」、出勤しても生産性が低下している状態を「プレゼンティーイズム(Presenteeism)」ともいいますが、両者は生産性にどれほどの影響を与えるのでしょうか。

 

前出の「企業の『健康経営』ガイドブック」には、健康関連総コストに占める相対的プレゼンティーイズムの割合は77.9%であり、アブセンティーイズムは4.4%であるという試算結果が掲載されています。同試算では、医療費の占める割合が15.7%ですので、プレゼンティーイズムによるコストの方がはるかに大きく、総コストの大部分を占めているという点に驚かされます。

また、経済産業省が2016年に作成した資料(※2)によると、健康関連リスク(生物学的リスク、生活習慣リスク、心理的リスク)の各項目の該当数が多いほど、プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムによる生産性の損失は大きくなり、低リスク層に対して高リスク層は損失コストが1.4倍(一人あたり30万円程度の損失増)となることが、調査研究により明らかになったとしています。

※2 経済産業省 商務情報政策局「健康経営の推進に向けた取組」(2016年)http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/yuuryouhoujin.pptx

 

これらの研究結果は、健康に問題を抱えながら出勤し生産性が低下している状態を、健康経営の実践により解消していくことによって、従来の損失コストを削減し生産性の向上が期待できることを示しています。

【健康経営への取り組みメリット②】医療費の適正化

2つ目のメリットは、医療費の適正化につながることです。

健康保険組合連合会(健保連)は、「2022年危機」による「保険料率30%時代」が目前に迫っていると警鐘を鳴らします。

 

具体的には、団塊の世代が75歳に到達し始める2022年から、現役世代の高齢者医療のための拠出金負担がさらに急増し、健康保険・介護保険・厚生年金を合わせた保険料率が30%を超えると推計しています。健保連は、高齢者医療費の負担構造改革などとともに、医療費を大切に使い、結果として医療費の伸びを抑制する保険給付の適正化について提言しています。

医療費の適正化については、全国健康保険協会(協会けんぽ)が、都道府県支部ごとに定められている健康保険料率を、各支部の加入者・事業主の健康への取り組みに応じて引き下げるインセンティブ(報奨金)制度を2018年度より導入しました(保険料率への反映は2020年度から)。

75歳以上の後期高齢者の窓口負担を原則1割から2割に引き上げる方針が打ち出されたり、子ども医療費の無料化を取りやめる自治体が出るなど、医療費の適正化は、国の重要な課題の一つとなっています。

健康経営により従業員の病院にかかる回数が減り、医療費が抑制されれば、健康経営はCSR活動の役割も果たし、企業自身が負担する社会保険料の抑制にもつながっていきます。

【健康経営への取り組みメリット③】企業イメージやエンゲージメントの向上

3つ目のメリットは、企業イメージや従業員のエンゲージメントの向上が期待できることです。

企業イメージの向上については、前出の経済産業省作成資料(※2)によると、健康経営銘柄は、企業株価の持続的な伸びが見られるとしています。

その要因としては、財務諸表等から見える企業の経営力からは見えない無形資産等の効果が大きく、それゆえに健康経営の効果である可能性が示唆されています。また、健康経営銘柄や健康経営優良法人に認定された企業では、健康経営への取り組みを積極的にPRすることにより、エントリー者数の増加や内定辞退率の減少といった効果も出てきているようです。

 

従業員のエンゲージメントの向上については、エンゲージメントを「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」に分けて考えるとよく分かります。

「ワークエンゲージメント」は、主体的に仕事に取り組むポジティブな心理状態、「従業員エンゲージメント」は、組織と自身が同じ方向を向き、組織への貢献意欲が高まっている状態などと定義されます。従業員自身が健康であることと、会社が従業員の健康を気遣ってくれているという実感がこれらに良い影響を与えることは想像に難くありません。

健康経営に取り組むことは、従業員を大切にしている会社であることを内外にアピールすることにつながります。企業の人手不足の課題へのアプローチとして、採用難や人材の定着化への対策になることが期待できます。

健康経営への具体的な取り組み

最後に、健康経営への具体的な取り組みについて紹介していきましょう。

コストをかけずにできることからというのであれば、ラジオ体操やストレッチの時間を設ける、エレベーターではなく階段の利用を推奨する、血圧計や体組成計を設置するなども、立派な健康経営への取り組みです。「歩く」ということに着目すれば、スニーカー通勤の推奨や、ウォークラリーなどのイベントを開催して歩数に応じて景品を贈呈するなども考えられます。

経済産業省と東京商工会議所が作成している「健康経営ハンドブック」には、健康経営事例として独自の健康経営への取り組みを行う企業が多く紹介されていますので、参考にされてはいかがでしょうか。

健康経営への取り組みのアイデアを従業員から募集したり、プロジェクトチームを組んで考案してもらうのも、従業員の積極的な参加や意識の向上につながるといった点で有効であると考えられます。

 

具体的に何をするかももちろん重要ですが、健康経営に取り組むにあたっては、その方針をトップメッセージとして発信することが欠かせません。

経営者による「健康宣言の社内外への発信」は、健康経営優良法人の認定基準にもなっています。経営者自らが従業員の健康を大切にしていくという考えを伝え、トップダウンで取り組むことが、健康経営の考え方を企業全体に浸透させ、そのメリットを最大化していくうえで、とても大切な最初の一歩となるのではないでしょうか。

(執筆: 社会保険労務士 水間 聡子)

 

【参考インタビュー】
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