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労働先進国・欧州のワークライフバランスとテレワーク法制化に向けた動き

2020.09.12

世界のはたらく4のメインビジュアルです。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、テレワークの導入が急速に進んでいます。

5月25日に全国で緊急事態宣言が解除された後も、感染リスク低減のため従業員の出社率を制限し、引き続き在宅勤務との併用や完全在宅勤務の体制を維持する企業が多く見られます。

 

「働き方先進国」と呼ばれているヨーロッパ諸国も、日本同様に新型コロナウイルス感染症の拡大後にテレワークが普及しましたが、いま欧州諸国では、新型コロナウイルスの収束後も従業員がテレワークを選択できる権利を保障するための法整備を進める動きが出ています。

 

今回は、ワークライフバランスを重視する欧州の働き方とニューノーマル(New Normal)に向けた新しい取り組みを紹介します。

コロナ前の欧州のワークライフバランスと働き方

ヨーロッパの先進国は「仕事」はあくまでも人生の一部と考え、個人の「健康」や「生活の質」も重要視する傾向にあります。

従業員が1か月ほどの長期休暇を取ることも珍しくなく、長時間働くことよりも所定の労働時間内で効率良く業務を進めていくことが求められています。

 

また、雇用における「男女平等」も非常に重視されており、2019年8月に欧州連合(EU)は「ワークライフバランス指令」を新たに労働法に追加しました。

 

これには、下記の3つの目的があります。

 

・育児や介護に携わる労働者のワークライフバランスをサポートする
・男女平等な育児・介護への参加を促進する
・女性が仕事を続けやすい環境を整える

 

ここからは、“コロナ前”から採用されている各国のワークライフバランス施策を詳しく見ていきましょう。

北欧諸国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)の事例

北欧は「働き方」の先端をいくヨーロッパ先進国の中でも、最高水準の労働環境が整っています。

 

週の労働時間は40時間と定められており、残業をする人はほとんど見られません。

OECD(経済協力開発機構)が発表した「世界のワークライフバランスランキング」で3位のデンマークは、一般的な週の労働時間が37時間となっています。

 

スウェーデンは、1954年に世界で初めて出産休暇を取得する女性に定額給付を開始しました。

これは他の北欧諸国にも浸透し、現在ではさらに育児・介護に関連した手厚いサポートが充実しています。

1977年に世界初の「休暇法」を設定したのもスウェーデンでした。

以来、北欧の企業は従業員へ1年間で最低5週間の有給休暇を付与することが義務付けられていますが、実際には6~7週間の休暇を取得するのが一般的です。

 

また、北欧企業のほとんどは、フレックスタイム制度を導入しています。

2016年に株式会社ワークスアプリケーションズが行った調査によると、ノルウェーの企業の70%がコアタイムありのフレックスタイム制度を、そして12%がコアタイム無しのフルフレックス制度を採用しています。

 

なお、Eurofound(欧州生活労働条件改善財団)が発表した「European Working Conditions Survey 2015」によると、 コロナ前である2015年時点の北欧諸国のテレワーク普及率は、デンマーク38%、スウェーデン33%、フィンランド24%となっていました。

ドイツの事例

ドイツも「働き方」先進国として、常に名前が挙げられます。

 

残業への規制は大変厳しく、労働基準監督署が抜き打ちで企業を訪問して労働時間のチェックを行い、そこで悪質な違反が見られた企業には罰金が課せられます。

フレックスタイム制度が主流で、やはり朝早く出勤し、午後は早く退社して家族との時間や自分の楽しみのために時間を使う人がほとんどです。

 

有給休暇は、企業に対し最低でも年24日を給付するよう義務付けていますが、実際には25~30日間の休暇取得が一般的とされています。

また、有給休暇とは別に、有給の病気休暇があり、最長6か月間100%の給与を受け取ることができます。

 

さらに、共働きの家庭で、子ども(12歳以下)の体調不良で仕事を休む場合は、別途子ども1人当たり年10日の病欠休暇を取得することができます。こちらも有給の休暇となっています。

 

なお、コロナ前のドイツのテレワーク普及率は約11%で、残業規制が厳しいぶん、テレワークの浸透は他の欧州先進国より遅れていたと言えます。

イギリスの事例

女性の労働市場への参入を増やすためにワークライフバランス政策を導入してきたイギリスでは、「働き方のフレキシブルさ」は非常に重要な要素となっています。

 

週の最長労働時間は48時間と制定されており、北欧諸国やドイツに比べると多いですが、実際に残業をする人はそう多くないようです。

有給休暇は年5~6週間ほど付与されることが一般的で、長期休暇の取得が権利として認められているため、管理職層でも1か月ほど休暇を取ることは珍しくないようです。

また、有給の病欠休暇が最大28日間付与されます。

 

さらに、6歳未満の子どもを持つ従業員に「休暇取得」や「働く場所」を選ぶ権利も認めており、2003年からは出産休暇が拡充され、父親の育児休暇も新たに導入されました。

 

なお、コロナ前のイギリスにおけるテレワーク普及率は27%でした。

オランダの事例

OECD発表の「世界のワークライフバランスランキング」で1位の国がオランダです。

 

法律上の週の労働時間の上限は60時間ですが、実際の平均労働時間は38時間となっています。

残業はほとんどなく、中には週3日勤務の従業員もいるほど、非常に柔軟な働き方が認められています。

 

有給休暇は、常勤の従業員で週間労働日数の4倍の日数とされています。つまり、週5日勤務の場合、法律上の最低有給休暇数は20日になりますが、実際は5~6週間の有給休暇取得が一般的です。

病気休暇は最初の2年間は最低でも賃金の70%の支払いを企業に義務付けています。

 

なお、産前産後休暇は有給で、父親も出産後4週間のうち2日間有給の休暇を取得できます。

育児休暇は、週契約労働時間の26倍となっていますが、こちらは無給になります。

しかし、非常にフレキシブルな働き方が認められているオランダでは、育児休暇を取得しない人が多く、女性の育児休暇取得率は37.1%と日本(72.3%)の半分程度となっています。

 

テレワークに関しては、従業員の権利として認める法律が2016年に制定されており、コロナ前のテレワーク普及率は31%と、北欧のデンマーク、スウェーデンに次ぐ第3位でした。

コロナ後のテレワーク法制化に向けた動き

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてテレワークが急速に普及したのは欧州も日本と同じです。

 

しかし、以前からワークライフバランス政策を進める欧州先進国では、新型コロナウイルスの収束後も従業員がテレワークを選択できる権利を保障するための法整備を進める動きが出ています。

 

ドイツとイギリスでは秋までにテレワークを従業員の権利として認める法案を整備するための準備が進めらています。

ただし、現時点では、企業側にテレワークの権利を付与する義務を課すものではなく、罰則などは発生しない内容になるようです。

 

フィンランドは、2020年1月に、労働時間の半分以上を従業員が「好きな時間」に「好きな場所」で働く権利を認める法律を施行しています。

欧州先進国のニューノーマル

コロナ前の欧州先進国は、フレックスタイム制や厳しい残業規制が敷かれているぶん、テレワークに関しては、進んでいる国でも普及率は30%程度でした。

しかし、コロナ後のテレワーク導入、そして法制化に向けた動きも見られる今後は、テレワークの普及率は上がることが予想されます。

 

労働者の「健康」や「生活の質」、そして「男女平等」のために法整備を進め、施策を打ち続ける欧州先進国の動向は、”はたらく未来”の1つの指針になりそうです。

 

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