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欧米諸国の中小企業リーダーたちが挑むニューノーマルの働き方

2020.07.30

「世界のはたらく2」のメインビジュアルです。

 

5月25日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としての緊急事態宣言が日本全国で解除され、オフィスでの業務を再開する企業も徐々に増えてきました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の発生以前と同様の働き方や生活に戻れたわけではないようです。

安全面や感染防止への配慮から、多くの企業は出社人数を制限するなどソーシャルディスタンスを十分に保つ対策を行っています。

テレワークを含むフレキシブルな働き方の普及が今後も大きく期待されるなか、規模の小さい中小企業では対応が遅れているところも少なくありません。

 

今回は、企業総数の約99%を中小企業が占めるドイツや、テレワーク先進国のアメリカの中小企業の“ニューノーマル”(New Normal)をご紹介します。

日本の中小企業が悩むニューノーマル

東京商工会議所が、6月17日に発表した「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」の調査結果によると、67.3%の中小企業がテレワークを実施しており、3月に行われた前回の調査に比べ41.3ポイント増加したことがわかりました。

一方、テレワークの実施率を規模別で見てみると、従業員300人以上の企業で90%、100人以上300人未満は77%、30人未満では45%となっており、全体的にテレワークの導入が進んでいるものの、規模の小さい企業では依然テレワーク導入に課題を抱えているようです。

同アンケートによると、テレワーク実施を検討する際の課題としては、「社内体制が整っていない」が51.1%と最多になっており、続いて「テレワーク可能な業務がない」が49.4%となっています。

 

また、ニッセイ基礎研究所が3月に被用者を対象に行った「働き方と健康に関するアンケート調査」では、新型コロナウイルス感染症の予防に対して44.1%が「特に取り組みをしていない」と回答しました。

こちらも企業規模別にみると、従業員数が300人未満の企業では半数以上が取り組みをしていない結果となり、企業規模によって感染対策の取り組み実施に差が出ていることがわかりました。

 

テレワークの導入には、「セキュリティも含めたIT環境の整備」や、「社内コミュニケーション」など、対応しなくてはならない課題が多くあります。

また、職場の感染対策としても、「体調管理」、「ソーシャルディスタンスの確保」、「清掃・除菌」など、従業員の健康と安全を守るために様々な対策を講じる必要があります。

 

しかし、規模の小さい企業では、人員や費用の面で「“どこから”、“どのような”取り組みをしたら良いかわからない」というところもあるのではないでしょうか。

 

ここからは、企業総数の多くを中小企業が占めるドイツやテレワーク先進国のアメリカにおける中小企業のニューノーマルを見ていきましょう。

ドイツ経済を支える強い中小企業

ドイツは、企業総数350万社のうち99%が中小企業です。

これらの中小企業は「隠れたチャンピオン(Hidden Champion)」と呼ばれ、国際的にも高い競争力を持つ強いドイツ経済を支えています。

 

ドイツの“中小企業”には法令で定められた画一的な定義はなく、各経済機関が独自の定義を持っています。

ドイツ連邦統計局(FSO)が採用している基準では、「中小企業とは、従業員が249人以下であり、かつ、売上高が61.86億円(1ユーロ=123.72円で計算)以下の企業」と定義されています。

一方、ドイツの中小企業研究所(IfM)は従業員数を「500人以下」とし、その他の分類基準はドイツ連邦統計局と変わりませんが、同じくドイツの貯蓄銀行グループは2016年1月よりIfMの定義を使用しています。

なお、どちらの統計においても、企業総数の99%が中小企業に属します。

働き方先進国・ドイツのビフォーコロナ

ドイツは、もともと「労働先進国」と呼ばれ、効率の良い働き方で高い生産性を実現しています。

 

例えば、法律により1日の労働時間は原則8時間であること(最長10時間/日まで。残業時間分は後日相殺する)が義務付けられており、これに違反した企業には罰金などの刑罰が科されます。

店舗の営業も原則、「平日は午後6時まで」、「日・祝日は終日閉店」となっています。

 

また、年間最低24日間の有給休暇があり、そのほとんどが使用されます。

これとは別に有給の病気休暇もあるため、病気になったときは有給休暇を使用せずに休むことができます。体調の悪いときは、無理をして出社するよりも自宅で休む方が良いという考え方です。

さらに、フレックスタイム制が主流で、朝早く出社して夕方早い時間に退社する人がほとんどです。

 

子育てに関しては、原則満3歳(36か月)まで育児休暇を取得することが可能ですが、休暇期間のうち24か月を限度として、子が満8歳になるまで別の期間に休暇を持ち越すことができ、短時間勤務をしながら手当の受給期間を延長する選択もできるなど、フレキシブルな制度になっています。

ドイツの中小企業リーダーたちが考えるニューノーマル

新型コロナウイルスの感染拡大前からメリハリのあるフレキシブルな働き方が浸透していたドイツですが、マッキンゼー・アンド・カンパニー(Mckinsey&Company)の調査によると、中小企業のリーダーの88%がコロナウイルス感染拡大前は対面での業務を求めていました。

また、就業時間の管理が厳しいこともあり、新型コロナウイルス感染拡大前のドイツの正社員のテレワーク率は8%ほどでした。

 

しかし、現在ではドイツの従業員の55%がテレワークをしており、81%の企業がアフターコロナもフレキシブルな働き方をキープしたいと考えています。

ドイツ連邦政府による新しい労働安全基準とサポート

ドイツ連邦政府は、4月16日に経済活動再開に向けて「SARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症)労働安全基準」を作成しました。

これは職場における感染予防対策を明示したもので、中小企業への支援を目的としており、可能であれば在宅勤務を推奨し、出勤する場合は、

 

・職場では最低1.5メートルのソーシャルディスタンスを確保
・食堂やトイレの衛生対策
・シフト勤務のメンバー固定
・対面ではなくWeb会議や電話会議の実施
・新型コロナウイルスの感染が疑われる従業員への対応
・産業医へのホットライン相談

 

など、17項目にわたって詳細に対策を説明しています。

また、新型コロナウイルス感染の収束後も労働者が望めば在宅勤務をすることができるよう「在宅勤務権」を認める法案の準備も進んでいます。

テレワーク先進国・アメリカの中小企業のニューノーマル

世界最大級の統計データベースStatista(スタティスタ)によると、アメリカでは、新型コロナウイルス感染症の拡大以前から約53%の人が1週間のうち数日をテレワークで働いていました。

そしてアフターコロナでは、テレワークをする人の割合は67%となり、うち週5日以上をテレワークで働く人は44%となっています。

68か国の全従業員がテレワーク─米GitLab Inc.の事例

ギットラボ(GitLab Inc.)は、ソフトウェアのソースコード管理サービスなどを提供するアメリカの企業で、2015年に10名ほどの従業員で事業を開始しました。

起業当初から、CTOはウクライナ、CEOはオランダに在住しながら仕事をしていましたが、2020年6月現在、68か国にいる1,305人の全従業員が完全テレワークで働いています。

 

同社はテレワークに関連する情報をまとめたWebページを用意し、テレワークによって何を推進するのかを宣言した「Remote Manifesto」に始まり、完全テレワークを導入している理由、利点・欠点、スタートガイド、テレワークのコツなどを紹介しています。

また、「Handbook」という全従業員が閲覧・編集できるWikiページのような社員マニュアルも公開しています。

 

さらに、同社は今までの経験で培った知識をまとめ、テレワークを成功させるためのeBook「The Remote Playbook」も作成し、テレワーク導入を検討する企業やこれからテレワークを始めるワーカーに向けて、無料で公開しています。

例えば、

 

・テレワークで使用するオンラインツールを最低限の数に絞る(おすすめツールの紹介付き)
・VPNを従業員が簡単にアクセスできるよう設定する

 

などのIT環境に関することから、

 

・家族と事前に話し合いをして、在宅しているからといって手が空いてるわけではないことを理解してもらう
・終業時間のリマインダーを設定し、私生活とのバランスを取る

 

などのワークライフバランスのためのアドバイス、さらに

 

・身体に負担をかけない椅子の選び方
・オンラインコーヒータイムの設定
・絵文字の使い方

 

など、テレワークに関するあらゆる知恵が共有されています。

 

ギットラボは、テレワークの利点として

 

・働き方にフレキシビリティをもたらし、通勤のストレスをなくして生産性を高めること
・場所を問わず有能な人材を確保できること
・高騰するオフィスコストを削減できること

 

などを挙げています。

一方、欠点としては、

 

・入社したメンバーが業務や企業のシステムに慣れるまでに時間がかかること
・オリエンテーションが難しいこと
・孤独を感じやすいこと
・より意図的に企業文化を浸透させる努力が必要であること

 

などを挙げています。

アメリカでの最新調査でわかった「中小企業こそテレワークを導入するべき理由」

企業の口コミなどの情報サービスを展開するグラスドア(Glassdoor, Inc.)社の調査・研究部門であるグラスドア経済研究所(Glassdoor Economic Research)が3月に発表した調査結果によると、従業員数が50名以下の企業でテレワークを行った人たちは、大企業・中規模企業でテレワークを行った人よりも満足度が高かったことがわかりました。

 

規模が大きい企業の方が、インフラの面ではテレワークに切り替えやすいですが、従業員間の関係が密接な小規模企業の方がテレワークになってもコミュニケーションがスムーズで、高い生産性を維持しやすいためだと考えられています。

 

また、ギットラボの例もありますが、所在地に関係なく優秀な人材を獲得できる可能性が高まることも中小企業にとってメリットと言えるでしょう。

日本の中小企業におけるニューノーマルの働き方のポイント

アフターコロナでは、ドイツとアメリカの中小企業がテレワークを活用したフレキシブルな働き方を進めていることを紹介しましたが、現在、日本でも中小企業を対象にテレワークの助成金・補助金を受け取ることが可能になっています。

 

厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

 

こういった助成金を活用し、まずは可能な従業員からテレワークを部分的にでも導入すれば、オフィスへの出社率を下げ、ソーシャルディスタンスを保つことが可能になります。

ニューノーマルでは、やはりテレワークの導入は重要なポイントとなるのではないでしょうか。

 

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