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テレワーク導入のメリット・デメリットと導入時に注意すべきポイントとは
2020.06.05
INDEX
新型コロナウイルス感染症の拡大によって一気に注目を集めたのが、テレワーク(リモートワーク)です。
2016年に安倍首相が提言した「働き方改革」以降、私たちを取り巻く労働市場は大きな変革期にあります。そして今回の新型コロナウイルス感染症の影響による在宅勤務促進に加え、副業解禁、育児や介護との両立など、もはや全従業員が一律に「同じ時間」「同じ場所」に出社するという既存の働き方だけでは、優秀な人材を確保しづらい時代となりました。
こちらの記事では、このように働き方が変革期を迎える中、企業にとって重要な施策の1つになりつつあるテレワーク導入のメリット・デメリット、そして導入の際に注意すべき点をご紹介していきます。
テレワークとは? ーリモートワーク、在宅勤務との違いー
まずは「テレワーク」の基本的な定義や導入事例を紹介していきます。
テレワークの定義
「テレワーク」とは、ギリシャ語で「遠方」を意味する「テレ (tele)」に働く(work)を組み合わせたもので、IT技術などを活用して、時間や場所にとらわれることなく働くことを指します。
また、テレワークにも働く場所や勤務スタイルによっていくつかパターンがあるため、自社にあったものを検討することが大切です。
在宅勤務との違い
テレワークと混合しやすい言葉に「在宅勤務」がありますが、同義語ではありません。在宅勤務はテレワークの1つの形態のことで、この他にもカフェやホテルのラウンジ、交通機関や取引先で仕事をする「モバイル勤務」、「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」があります。
「在宅勤務」については、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
テレワーク導入のメリット6つ
では、企業から見たテレワークのメリットはどのような点にあるのでしょうか?
テレワーク導入のメリット①:従業員の安全の確保
新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛要請(2020年4月時点)の影響もあり、会社に従業員が集まって就業することが難しくなってきました。
特にミーティングでは締め切った会議室で議論することもあり、感染への懸念を感じる従業員も多いでしょう。
テレワークの導入により、従業員が通勤せずに勤務できることで、安全を確保できることはメリットの1つです。
テレワーク導入のメリット②:企業コストの削減
テレワークを導入すると、会社に出社する人が減るため、空いたスペースを有効に活用できます。
例えば、固定席を減らすことで、今までよりも狭いオフィスに移転するケースや、オフィス自体を解約するケースもあると思います。
こういった取り組みを通じてオフィスの賃料を下げることで固定費が抑えられますし、その分を事業投資に回すなどが可能になるため、事業拡大に向けた投資を加速することも可能になります。
テレワーク導入のメリット③:従業員のQOLの向上
自宅や自宅近くのカフェが職場となれば、通勤に費やしていた時間を家族との時間や趣味の時間、ビジネススキル向上のための時間にあてることができるため、従業員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上が期待できます。
また、満員電車による通勤時のストレスから解放され、前向きな気持ちで業務に取り掛かることもでき、生産性効率の向上も期待できるのではないでしょうか。
テレワーク導入のメリット④:従業員の定着率の向上
育児や介護など家庭と仕事の両立が難しくなって退職するケースは、会社にとって大きな損失です。新たに人材を採用しようとすると追加コストもかかるでしょう。
「場所」や「時間」に縛られないテレワークを導入することで、これらの退職を回避できる可能性があります。
またテレワークの推進を社外にアピールすることで、企業ブランディングにもつながり、採用活動へのプラスの効果も期待できます。
テレワーク導入のメリット⑤:従業員の生産性の向上
1人で考え続けられる環境に身を置くことで、集中力を高めることができるとも言われています。
電気自動車で有名なテスラ社の社名の由来となった、発明家のニコラ・テスラ は
“外界の影響があると、クリエイティブな発想を摘み取られてしまいます。ひとりになりなさい、それが発明の秘訣です”
と著書の中で語っています。
集中力を高めることで、生産性が向上し、1つ1つの仕事に余裕ができるため、より付加価値の高い発想を生み出すことができる場合があります。
テレワーク導入のメリット⑥:国内外を問わない優秀な人材の確保
企業によっては、自社が求めているコア人材が海外にいる場合もあります。
例えば中東の個人投資家向けのアプリを開発する場合、投資会社での勤務経験があり、さらに中東地域の文化に精通している現地在住の方をテレワーク採用することで、アプリ開発の大きな戦力として活躍してもらうことも可能になるでしょう。
テレワーク導入のデメリット4つ
ここまでテレワークのメリットをご紹介してきましたが、一方でデメリットもいくつか指摘されています。
テレワーク導入のデメリット①:Wi-Fi環境やモバイル機器が必須
ほとんどの業務をオンライン上で行うためにWi-Fi環境が必要となり、Wi-Fiの電波状況によっては会議などが中断し、業務に支障が出る可能性もあります。
また、業務内容によっては、全従業員にパソコンやタブレット、スマートフォンなどを支給しなければならない場合もあるため、追加のコストがかかることを想定しておきましょう。
テレワーク導入のデメリット②:共通の評価基準を設けづらい
テレワークでは、従業員がそれぞれ違う場所で勤務することになるため、勤務実態を把握しづらく、第三者からの評価が難しいことも挙げられます。
そうなると必然的に「成果」を基準に従業員を評価することになりますが、成果の定義はわかりづらくなりがちで、部署によっても一律ではありません。
そのため、テレワーク導入時には、成果基準を明確にする必要があるでしょう。
テレワーク導入のデメリット③:情報漏えいの懸念
テレワークを推進していくと、「スマートフォンやタブレットなどを外で使用していたら紛失してしまった」「セキュリティが弱い外部ツールを利用している」「カフェなど外で作業を行うため外部の人に仕事内容を見られてしまう」など、情報漏えいのリスクも高まることが危惧されます。
そのため、従業員へのルール徹底を促進すると同時に、セキュリティ対策ソフトの導入も必須になります。
テレワーク導入のデメリット④従業員同士のコミュニケーションの希薄化
テレワークを導入したら「相談しづらくなった」「すぐにブレストできなくなった」など、従業員間のコミュニケーションにおいてのデメリットも見受けられます。
情報共有をスムーズに行うことができず、生産性が下がったり、企業文化の醸成が難しくなったりと、影響範囲が大きくなると考えられます。
そのため、チャットツールや社内SNSを活用することが大事になってきます。
また、遠隔であってもビデオ会議ツールなどを活用して積極的に雑談することを奨励することで、従業員のストレスを緩和させるようにしましょう。
テレワークを導入する際の注意点
実際にテレワークを導入する際、気をつけなければならないことはなんでしょうか。特に代表的な3つについて解説していきます。
テレワーク導入の注意点①:導入目的を明確化し、適応範囲を定める
業種や職種によっては、テレワークをすぐに導入できない場合があります。
トライアルで進めるにしても、「どの部署、どの人が、どれぐらいの期間で導入するのか」を決める必要があり、それを正しく従業員へ伝えていかなくてはなりません。
まずは「なぜ導入するのか」を明確にしておき、従業員の理解を得ることが重要です。従業員によって不平不満がでる可能性もありますので、そういった従業員をきちんとケアすることも大切です。
テレワーク導入の注意点②勤怠管理ルールを明確にしておく
テレワークになると、いつから勤務開始とするのか、休憩時間はどのようにカウントするのかなど、勤怠に関するルールが曖昧になることが予想されます。
同様に、自宅だからとつい遅くまで仕事をしてしまい、長時間労働になる恐れも考えられるでしょう。
テレワークを実施する際には、①勤怠管理システムを導入する、②勤怠ルールを定め、全従業員と共有しておく、③今まで以上に従業員のフォローを実施することなどが重要になります。
テレワーク時にもおすすめの「クラウド型勤怠管理システム」について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
テレワーク導入の注意点③緊急時対応も想定しておく
テレワークを実施する中で注意しなければならないのは、「不測の事態」です。
例えば、サーバートラブルにより社内システムに入れなくなった、体調不良で勤務ができなくなった、などが考えられます。
そのため、トラブルが発生した際の緊急連絡先や問い合わせ先を組織ごとに決めておく必要があります。
あわせて、会社から全従業員へ向けての共有ルールも定めておくと安心です。
テレワーク導入時のおすすめツール
では、いよいよテレワークを導入するとなった場合の便利なツールを紹介します。
導入時におすすめのツールについて、詳しくは【テレワークに役立つツール10選】をご紹介したこちらの記事をご参照ください。
テレワークのおすすめツール①:【Slack(社内コミュニケーションツール)】
世界100カ国以上で使われいる「ビジネスチャット」ツールです。
リアルタイムでコミュニケーションが取れるのはもちろんのこと、プロジェクト事にチャンネル(グループ)を作って密な意見交換ができたり、様々なファイルを手軽に共有することができたりします。
API連携を活用して、勤怠管理などに活用している企業も増えているようです。
テレワークのおすすめツール②:【Office365(統合的な情報共有ツール)】
ファイル共有からスケジュール管理など、多彩な機能を備えた、Microsoftが提供しているグループウェアです。
ExcelやWordなどのOfficeアプリケーションとの互換性が高く、Windowsを活用している企業にとって導入しやすいツールと言えるでしょう。
テレワークのおすすめツール③:【Whereby(オンライン会議ツール)】
ログイン不要のWEB会議用のツールです。
Wherebyのサイト上で作成したチャットルームのURLを共有するだけで、ビデオチャットをすることができ、その手軽さから多くの企業に採用されています。
日本におけるテレワーク導入事例
では、実際どのような企業がテレワークを導入しているのでしょうか。
以下に代表的な企業の取り組みを見ていきましょう。
テレワーク導入事例①:【株式会社リクルートホールディングス】
株式会社リクルートホールディングスは2016年1月、雇用形態を問わず全従業員を対象に、上限日数のないテレワークを導入しました。
同社は導入する過程で実証実験を行い、実験に参加した従業員の約9割が「テレワークには期待感が持てる」と回答したそうです。
テレワーク導入事例②:【株式会社イトーキ】
株式会社イトーキでは、優秀人材の確保や生産性向上はもちろん、災害や緊急事態でも業務遂行ができる体制を作ることを目的にテレワーク導入を開始しました。
事前のトライアルの結果、「家族との時間・家事の時間が確保できた」「通勤時間を有効活用できた」と好意的意見もあり、その後本格導入へと至っています。
テレワーク導入事例③:【カルビー株式会社】
カルビー株式会社は、テレワーク導入が難しいとされる製造業において、経営陣が率先して導入を進めています。
在宅勤務導入時に行ったアンケートによると「今後も在宅勤務を継続すべきと思いますか」という問い に対して上司71%、部下73%が「はい」と答えており、従業員満足度は高いようです。
テレワーク導入事例④:【広島市役所】
広島市役所では、業務効率化・生産性向上や家庭生活の充実、通勤困難者への対応を目的としてテレワークを導入しています。
導入にあたっては、電子化を促進し、携帯電話、Webカメラ、電子メールなど、ITを活用して適宜コミュニケーションが取れる環境づくりに取り組みました。
一方で、窓口業務などテレワークが適していない業務も多くあったため、様々な検討をしながら導入を進めています。
“コロナ後”にテレワークの全面実施を打ち出した企業の事例については、こちらの記事をご参照ください。
「テレワーク」は多様化社会を生き抜くための武器となるのか
「少子化による労働人口の減少」「経済のグローバル化」など労働市場は今後ますます複雑化していくことが予想されます。
そのような中で、新型コロナウイルス感染症の拡大など非常事態に対応していくために、テレワークの活用など「柔軟性」と「バランス感覚」が今後も企業に求められるでしょう。
これまでに紹介したメリット・デメリットを踏まえた上で、「テレワーク」という新たな武器を手にすることを検討してみてはいかがでしょうか。