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違反には罰則も!有給休暇取得義務化への対応のポイントを解説

2020.11.06

働き方改革の一環として、2019年4月にスタートした「有給休暇取得義務化」。
すべての企業に対し、年10日以上の有給休暇(「年次有給休暇」。以下、「年休」)が付与される従業員には、そのうち5日を取得させることを義務付けたものです。

 

改正法の施行から1年半が経過しましたが、義務化に対応しきれず苦慮している企業も見られ、改めて自社に合った年休の取得方法について考えなければいけない時期に差し掛かっています。

 

本記事では、有給休暇取得義務化の概要や違反となりうるケース、年休の取得を促進する方法などについて紹介します。

有給休暇取得義務化とは

有給休暇取得義務化への対応のポイントを解説しています。
年休とは、一定期間継続勤務し、所定の出勤率を満たした従業員に与えられる賃金が減額されない有給の休暇のことで、労働基準法においてすべての企業に対してその付与が義務付けられています。

 

具体的に、企業は、雇用した日から6か月間勤続し、その期間の労働日の8割以上出勤した従業員に、原則10日の年休を与えなければなりません。

その後も、1年ごとに勤続年数によって決められた日数を与えます。付与日数については、下記厚生労働省のWebサイトの表1をご確認ください。

 

(参考:厚生労働省│FAQ – 労働基準行政全般に関するQ&A

 

その他のルールとしては、

 

・年休は原則として従業員が請求する時季(希望する時期)に取らせる必要があること

・年休の時効は2年で前年に取らなかった日数は翌年に繰り越せること

・年休を取った従業員に対する不利益な取り扱いは禁止されていること

 

などを押さえておきましょう。

 

休息の機会の確保を目的に設けられた年休ですが、日本では周囲への気兼ねなどから、取得率が低い状況が続いていました。

平成31年就労条件総合調査によると、平成30年(または平成29会計年度)1年間に企業が付与した年休の日数(繰越日数を除く)は従業員1人平均18.0日、そのうち従業員が実際に取得した日数は9.4日で、取得率は52.4%と半分程度にとどまっていました。

 

そこで2019年4月に、年10日以上の年休が付与される従業員には、うち5日は

 

①従業員自らの取得
②計画年休
③使用者の時季指定(新設)

 

のどれかの方法により取らせることをすべての企業に義務付けました。
これを有給休暇取得義務化といいます。

 

同義務には罰則も設けられており、年5日の年休を取らせなかった場合、対象となる従業員1人につき30万円以下の罰金が科せられ、原則として労働基準監督署の指導を受けても改善されない悪質なケースに適用されます。

時間外労働の上限規制と並んで今後の監督指導のポイントとなってくることが予想されますので、義務化に対応しきれていない企業では改めて自社に合った年休の取得方法について考えていきましょう。

【有給休暇取得義務化】違反となりうるケース

有給休暇取得義務化がスタートし、1年半が経過しましたが、知らないうちに同義務違反をしてしまっているケースや、違反となりうる方法で年休を取らせているケースもよく見られます。

以下では、違反となりうる代表的な事例について解説します。

①パートタイマーやアルバイトに年休を与えない

年休は、フルタイム従業員だけでなくパートタイム従業員も対象となるものですが、この点の理解が不十分で、パートタイマーやアルバイトに年休を与えない企業も見られます。

 

所定労働日数が少ない従業員(所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下)については、年休の日数は前出の原則の日数ではなく、所定労働日数に比例して与えます。

付与日数については、下記厚生労働省のWebサイトの表2をご確認ください。

 

(参考:厚生労働省│FAQ – 労働基準行政全般に関するQ&A

 

パートタイマーやアルバイトであっても付与日数が10日以上であれば、フルタイム従業員同様、うち5日は取らせることが必要となります。

自社のパートタイマーやアルバイトの年休の付与・取得状況について改めて確認をしてみましょう。

②休日や特別休暇を年休に振り替える

労働日数を確保するために、従来の休日や特別休暇(夏季休暇や年末年始休暇など)を労働日に振り替え、その日に年休を取らせるといった対応も見られます。

ただ、休日や特別休暇の削減は労働条件の不利益変更に当たりますので、原則として個々の従業員の合意が必要となります。

就業規則の変更により実施する場合には、変更の必要性や内容の相当性などが問われますので、安易な変更は控えるべきでしょう。

③年休の買い上げを行う

年休を買い上げて何らかの名目で対価を支払い、労働日のどこかを休んだことにすれば良いのではと考える場合もあるかもしれませんが、年休の買い上げは原則違法となります。

 

年休は、休息の機会の確保を目的に設けられたものですので、上記のような対応は、その取得を妨げ、労働基準法の趣旨に反するものとして原則禁止されています。

買い上げが認められるのは、法定付与日数を上回る年休の買い上げ、時効により消滅してしまった年休の買い上げ、退職時に未消化の年休の買い上げといった特別な場合に限られるため、注意が必要です。

【有給休暇取得義務化】取得を促進する方法

それでは、違反をせず、従業員に年休を上手に取ってもらうには、どのようにしたら良いのでしょうか。

以下では、現状の年休の取得率別にその取得を促進する方法を3つ紹介します。

①年休を取りやすい環境の整備

1つ目は、年休を取りやすい環境の整備です。この方法は、年休の取得率が高い企業に向いています。

 

企業は、年休取得の周知・啓発や気兼ねなく年休を取れる体制の整備などを行い、従業員自らの取得によって年5日の取得を目指します。

 

具体的には、年休の効果(しっかりと休息を取ることによって普段の業務にメリハリがつく、年休中の体験を仕事に活かすことができるなど)を周知・啓発して積極的な取得を呼びかける、複数担当制を導入するなど周囲に気兼ねなく年休を取れる体制を整備することなどが考えられます。

 

また、従業員に年休の取得を意識させるため給与明細に取得日数や残日数を記載する、半日単位の年休を導入して通院や役所での手続きなどに気軽に使用できるようにするなども良いでしょう。

時間単位の年休取得を導入する企業もありますが、これは年5日の取得にはカウントされないため注意が必要です。

②使用者の時季指定

2つ目は、使用者の時季指定です。この方法は、年休の取得率が高い従業員と低い従業員の両方がいる企業に有効です。

 

使用者の時季指定は、2019年4月の改正法施行により、新たに可能となった年休の取得方法ですが、企業が年休を取る時季を指定するにあたっては、就業規則の定めが必要となります。

従業員の希望を聞く義務、希望を尊重する努力義務が定められている点も押さえておきましょう。

 

具体的には、基準日(年休を付与した日)と今後1年間の年休の取得希望日を確認した上で、それを基に年休カレンダーを作成し、企業が年休取得日を指定するなどが考えられます。

また、基準日から一定期間経過後に、年休の取得日数が5日未満となっている従業員と個別面談を行い、企業が年休取得日を指定するなども良いでしょう。

③計画年休制度の活用

3つ目は、計画年休制度の活用です。この方法は、年休の取得率が低い企業にも有効です。

 

計画年休制度は、就業規則の定めと従業員代表との労使協定によって、あらかじめ年休の取得日を決めておく方法です。

年休管理がしやすく、業務の見通しが立てやすい点が導入のメリットと言えるでしょう。

 

具体的には、企業全体で夏季や年末年始に年休取得日を設定する、部署ごとに閑散期に年休取得日を設定する、従業員ごとに誕生日や記念日に年休取得日を設定するなどが考えられます。

年休管理簿の作成・保存も忘れずに

2019年4月からは年休管理簿の作成と3年間の保存も企業に義務付けられています。

年休管理簿には、年休を取った日付、年休を取った日数、年休を付与した基準日の記載が必要です。

現在、使用している勤怠管理ソフトや給与計算ソフトで作成できる場合もありますので、年休の取得義務を確実に履行でき、効率的に管理できる方法について検討してみましょう。

 

本記事では、有給休暇取得義務化の概要や同義務違反となりうるケース、年休の取得を促進する方法などについて紹介してきました。

前出の就労条件総合調査の最新版(令和2年版)によると、平成31年・令和元年(または平成30会計年度)1年間に企業が付与した年休の日数(繰越日数を除く)は従業員1人平均18.0日、そのうち従業員が取得した日数は10.1日で、取得率は56.3%と、取得日数・取得率ともに過去最高となりました。

 

本改正が一定の効果をもたらしたものと考えられ、従業員の年休に対する意識も徐々に変化し、働きやすさの指標となることも想定されます。

企業の人材戦略としても、年休の取得を促進する取り組みを加速させていきましょう。

(執筆: 特定社会保険労務士 水間 聡子)

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