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副業禁止、違反で解雇はできる?副業・兼業普及促進時代の実務対応

2019.11.18

昨今の働き方改革の一環として、政府が副業・兼業の普及促進を図っているのは周知のとおりですが、パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」によると、副業許可と全面禁止の企業の割合はそれぞれ50%で拮抗しており、現在も半数の企業が原則として副業を禁止していることが分かります。
クラウドソーシングなど副業が身近になってきた現在、副業を禁止している企業でも、社員の副業が発覚し、対応に戸惑うといった話がよく聞かれます。
今回は、社員の副業・兼業が発覚した際の対応や、副業を許容する場合の労務管理について解説します。

厚生労働省「モデル就業規則」の改訂

副業・兼業普及促進時代の実務対応をご紹介します。
政府は、平成29年3月に「働き方改革実行計画」をとりまとめ、その中で「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る。」と明記しています。

上記を踏まえ、厚生労働省は、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、「モデル就業規則」を改訂しました。同モデル就業規則では、それまで服務規律の章にあった遵守事項の条文「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」が削除され、副業・兼業について下記のような届出制とする規定が追加されています。

(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

また、前出の働き方改革実行計画では、「複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、雇用保険及び社会保険の公平な制度の在り方、労働時間管理及び健康管理の在り方、労災保険給付の在り方について、検討を進める。」とされており、この点については、今まさに議論がされているところです。

副業・兼業に関する企業の対応状況

一方で、企業における副業・兼業への対応状況は、どのようになっているのでしょうか。
前出のパーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」によると、「全面的に許可している」が13.9%、「禁止していない(希望者がいれば条件つきで許可)」が36.1%、「全面的に禁止している」が50.0%となっています。副業許可企業の許可を始めた時期は、ここ1年以内が22.8%、2~3年前が29.2%と近年増加傾向にあり、昨今の副業・兼業の普及促進の流れを受けたものだと推察されます。

これに対し、副業禁止企業の今後の意向は、副業を「奨励、推進していく予定」が2.3%、「奨励、推進はしないが、希望すれば認めていく予定」が26.8%、「今後も、全面的に禁止していく予定」が70.9%となっており、依然として副業・兼業に対して慎重な姿勢であることがうかがえます。禁止理由は、「従業員の過重労働につながるから」が最多、2位が「自社の業務に専念してもらいたいから」、3位が「疲労による業務効率の低下が懸念されるから」となっており、副業・兼業の普及促進には、過重労働に対する懸念が大きな壁となっていることが読み取れます。

社員の副業・兼業が発覚したら

副業を許可する企業は、近年増加傾向ではあるものの、現在も半数の企業が原則として副業を禁止しており、従前のモデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という遵守事項を現在も保持しているものと思われます。
それでは、上記のような副業禁止企業において、社員の副業・兼業が発覚した場合、企業はどのように対応したら良いのでしょうか。

そもそも近年の副業・兼業の普及促進の流れからして、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定自体、有効であるのか疑問に思われる経営者や人事担当者も多いかもしれません。この点に関しては、裁判例で、労働者の副業・兼業について、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であるものの、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合(=前出のモデル就業規則第3項各号。以下、本記事では「副業禁止4事由」といいます)には、各企業の制限が許されると示されています。事情の如何を問わず副業を全面的に禁止するような規定でなければ、合理性が認められ、有効であると考えられます。

社員の副業・兼業が発覚した場合の具体的な対応については、まずは、遵守事項である「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」に違反していたことは事実ですので、その点に関して指導を行います。就業規則では、遵守事項に違反することは、懲戒の事由になっていると思いますが、他の懲戒事由にも該当するなどの事情がなければ、まずは、簡単な指導からということになるでしょう。

次に、副業をしている社員に、副業の雇用形態や勤務時間、業務内容等を確認します。「兼業許可申請書」などの様式を作成し、必要事項を記入の上、提出してもらうと良いでしょう。提出を受けたら、当該書類や本人との面談により、副業禁止4事由に該当するかを判断し、副業の許可・不許可を決定します。副業禁止4事由を拡大解釈すると、社員との間でトラブルに発展しかねませんので、不許可にする場合も、どのような点が副業禁止事由に該当するのかを客観的に説明できるようにしましょう。委託契約・請負契約等の非雇用形態で、自社の業務に支障を来さない範囲で副業を行っている場合など、例外的に許可せざるを得ない場面が出てくることも想定されます。ただ、その場合も、職務への専念や勤務時間等の報告、許可の取り消し事由などに、書面で誓約・同意してもらい、あくまでも副業の許可は例外的なものであるという姿勢を示しましょう。

合理的な理由があって副業を制限したのにもかかわらず、社員が副業を中止しない場合は、就業規則に則って懲戒処分を検討していくことになります。副業禁止規定への違反に限りませんが、懲戒処分を検討する際の注意事項としては、以下の点が挙げられます。

・就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできない。
・就業規則に懲戒規定を設ける以前にした行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることや、1回の懲戒事由に該当する行為に対し複数回の懲戒処分を行うことはできない。
・自社の過去の同種事例における処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要がある。
・懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権を濫用したものとして無効となる。
・就業規則所定の手続きを踏んで適正に行う必要がある。本人には弁明の機会を与えた方が良いとされている。
・減給の懲戒処分は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

懲戒の種類は、企業によって就業規則の定めは若干異なりますが、通常、処分が軽いものから順に、けん責、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。よほど悪質な行為でない限り、一発で懲戒解雇というわけにはいかず、まずは程度が軽い処分を科して改善を促し、改善されず、同様の行為を繰り返した場合に上位の処分を行うのが原則です。

副業を許容する場合の労務管理

では、上記のような手順を踏み、結果的に副業を許容することになった場合は、どのような労務管理が必要となるのでしょうか。
副業・兼業の労働時間管理の在り方は、副業・兼業の普及を進める上での課題となっており、今まさに議論がされているところですが、当面は副業・兼業の促進に関するガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf)やそのQ&A(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000473062.pdf)に基づき、労働時間管理をしていくことになります。

具体的には、特に自社と副業先の両方で雇用されている社員の場合、自己申告により副業先での労働時間を把握する必要が出てきます。労働基準法では、労働時間は、事業場を異にする場合(事業主を異にする場合をも含む)においても通算すると定められているためです。労働時間を通算した結果、法定労働時間を超えた場合には、自社で発生した法定時間外労働については、割増賃金を支払わなければなりません。ガイドラインのQ&Aでは、「甲事業主と所定労働時間8時間を内容とする労働契約を締結している労働者が、甲事業場における所定労働日と同一の日について、乙事業主と新たに所定労働時間5時間を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合は、乙事業場で行う5時間の労働が法定時間外労働になる」など、実例を挙げて自社と副業先のどちらの法定時間外労働となるのかを解説していますので、参考にしてください。

委託契約・請負契約等の非雇用形態で副業・兼業を行う者についても、ガイドラインでは、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、自己申告により就業時間を把握することを推奨しています。

労務リスクなどを考慮した慎重な運用が必要

副業・兼業の普及が進められているとはいえ、現状では、労働時間管理や健康管理、安全配慮義務などにおいて、煩雑な実務が求められ、曖昧な部分が未だに多いのも事実です。副業を許可している企業も、原則として禁止している企業も、許可した場合のリスクや許可しない場合のリスクをきちんと理解し、慎重に運用していくことが肝要となります。

(執筆: 社会保険労務士 水間 聡子)

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