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バーチャル株主総会とは?実施方法やメリット、問題点、事例まで

2021.02.24

バーチャル株主総会とは?実施方法やメリット、問題点、事例まで

2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以降、オンラインで参加するバーチャル株主総会の需要が高まっています。バーチャル株主総会はコロナ禍以前から経済産業省が推奨しており、株主とのコミュニケーション促進や透明性の確保といったメリットが知られています。ウィズコロナ時代にますます需要が高まると考えられるバーチャル株主総会。実施するポイントとは何でしょうか。

今回は、バーチャル株主総会の概要に加え、実施方法やメリット、バーチャル株主総会を実施した企業事例を紹介します。

バーチャル株主総会(オンライン株主総会)とは

バーチャル株主総会とはWeb会議システムなどを用いて、取締役や監査役、株主が遠隔から参加できる株主総会のこと。バーチャル株主総会に対し、指定された会場で参加する形式はリアル株主総会と呼ばれます。

経産省が推奨する「ハイブリッド型バーチャル株主総会」とは

経済産業省は2020年2月に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を発表しました。これまでの「リアル株主総会」に加え、、全てオンライン上で行われる「バーチャルオンリー株主総会」そして「ハイブリッド型バーチャル株主総会(参加型・出席型)」を提案しています。

バーチャル株主総会「オンリー型」「ハイブリット型(参加・出席)」3つの違いとは

バーチャル株主総会にもいくつか種類があり、それぞれ以下のような点が異なります。

バーチャルオンリー型株主総会 参加者が会場に赴くリアル株主総会ではなく、取締役や株主らが、インターネット上で「出席」をする株主総会
ハイブリッド参加型バーチャル株主総会 会場で開催される株主総会(リアル株主総会)が行われる中で、オンライン上から審議を確認・傍聴ができる株主総会
ハイブリッド出席型バーチャル株主総会 リアル株主総会の開催に加え、リアル株主総会の場所にいない株主が、オンライン上から会社法上の「出席」をする株主総会

(参考:経済産業省『ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド』)
「参加型」と「出席型」の違いは、株主総会への関与が法律上の「出席」となるか否かです。
株主総会への関与が法律上の「出席」となるか否か

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会は、リアル株主総会の場にはいない株主が、通知されたID やパスワードによる確認を経て中継動画を傍聴する形で行われるケースが想定されます。オンライン上で参加している株主は「出席」とはみなされず、会社法上で株主が認められている質問や動議を行うことはできません。

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、インターネットを介して参加した株主が会場にいる株主と同様に、審議に参加した上で決議にも加わる形態が想定されています。ハイブリッド参加型株主総会を行う条件は、開催場所と株主との間で①情報伝達の双方向性、②情報伝達の即時性が確保されていることです。

バーチャル株主総会を実施するメリット

バーチャル株主総会を実施する具体的なメリットについて確認しましょう。

新型コロナウイルス感染症の対策になる

2020年以降にバーチャル株主総会を行う最大のメリットは、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを減らすことができる点です。リアルな株主総会では、県をまたいで移動する参加者も多く、関係者が一堂に会するため、「三密」になりやすい状態になると想定されます。飛沫感染や接触感染によるリスクも高くなるため、株主の安全確保が難しい現状あると考えてよいでしょう。また、通常の株主総会の運営に加え感染症対策を実施することは運営スタッフにとっても大きな負担・コストがかかり、進行に支障をきたす事態も考えられます。

バーチャルオンリー型株主総会やハイブリッド型株主総会であれば、株主総会に実際に集まる人数も制限でき、株主や役員の感染リスクを抑えた上での開催が可能になります。

遠方や海外からも参加しやすくなる

インターネット上で行われるバーチャル株主総会の場合、地方や海外などの遠隔地からも参加可能になり、従来よりも多くの株主が総会に参加・出席できるようになります。日程調整や交通手段、宿泊施設の確保も不要になり、参加へのハードルが大幅に下がることからより活発な議論や審議が期待できるでしょう。

情報開示がしやすくなる

バーチャル株主総会では、動画の配信によりリアルタイムで議論の様子を開示できます。一部では、インターネットを介して株主総会を一般公開している企業もあり、株主総会の透明性担保にも一役買うことが可能です。

バーチャル株主総会実施における注意点

バーチャル株主総会を開催するにあたって押さえておくべき注意点を解説します。

企業・株主双方に環境整備が必要

企業・株主双方がバーチャル株主総会開催に必要なインターネット環境と参加のためのIT設備(PCなど)を整えておく必要があります。安定した動画配信を行うため、参加予定の株主には安定した回線環境から接続するよう依頼しましょう。

運営側は、安定した配信が行えるようリハーサルを入念に行った上で本番に臨む必要があります。また、回線トラブルがあった際の代替策、フォロー対応案などを用意することも大切です。

セキュリティ面の対策が必要

インターネットを介して株主の情報を取り扱うバーチャル株主総会では情報セキュリティ対策を万全しなければなりません。考えられる対策として、セキュリティが保障されているWeb会議システムやビデオ会議のツールを選択する、オンライン上の本人確認を入念に行う、などがあります。

会社側の負担が増加する

バーチャル株主総会を初めて実施する場合、従来型の株主総会から運営フローの変更を余儀なくされるため、スタッフや準備にかかる負担が増加することを念頭に入れておきましょう。特に、ハイブリッド型の場合は、通常の運用フローに加えてオンライン参加・出席をする株主への対応、新型コロナウイルス感染症の感染リスク対策をはじめとする業務の増加が考えられます。また、円滑な動画配信を行うためのスタッフの習熟や動画配信に精通したスタッフの手配が必要になることも考えられます。

なりすましの危険性がある

株主個人に送付するIDの流失やアカウントの乗っ取りなどがあった場合、なりすましが発生する可能性も考えられます。なりすましによって株主の議決権や発言権の侵害や悪用を防ぐ対策としては、以下の手順が挙げられます。


・動画配信のURLを送付する際には株主番号や氏名のダブルチェックを行う
・動画配信のパスワードを株主のメールアドレス宛に個別連絡する
・二段階認証の活用を検討する
・リアルで参加する株主には、受付で身分証を提示してもらう

バーチャル株主総会運営のポイント

バーチャル株主総会を実際に運営するにあたって押さえておく必須ポイントを解説します。

株主の本人確認

バーチャル株主総会においてインターネットで参加・出席する株主の本人確認は以下の手順で行います。

1.株主毎に固有IDとパスワードを記載した議決行使書面を事前に送付
2.株主総会の参加・出席用のURLを招集通知の中に記載、あるいは招集通知に同封して通知

議決権行使の扱い

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会ではオンラインで参加する株主も議決権を行使(※)できます。バーチャル株主総会の場合、インターネットを介した参加が容易なため「急に予定が空き、参加・出席が可能になる」というケースも考えれます。そのため、事前に議決権行使を行っていた場合でも、柔軟な取り扱いが必要になるケースも想定されます。

※議決権行使とは、株主が株主総会での決議に参加し、議案(経営方針や取締役の選任、定款の変更など)に対する賛否を投票すること。

議決権と出席の取り扱いは以下の考え方を運用の際の参考にしましょう。


・審議に参加するための本人確認としてログインのプロセスを依頼・実施する
・その時点では事前の議決権行使の効力を取り消さずに維持し、採決のタイミングで新たな議決権行使があった場合に限り、事前の議決権行使の効力を破棄する
・ログインしたものの、採決に参加しなかった場合には、事前の議決権行使の効力が維持される
・事前の議決権行使の判断を変更する意思のない株主のために傍聴のみの配信も用意するといった対処も検討しておく

質問と動議の取り扱い

バーチャル株主総会の場合、運営上、オンライン参加・出席の株主はリアル参加の株主と同等の質問・動議の取り扱いができない可能性があります。質問と動議に関しては以下の点を予め共有する必要があります。

質問
・質問回数や文字数、送信期限を設定してあらかじめ通知する
・用意したフォームに質問内容を書き込んでもらう

動議
・バーチャル出席者の動議については、取り上げることが困難な場合がある旨を伝えておく
・招集通知に記載のない動議について採決が必要になった場合、バーチャルでの出席者は採決に参加できない可能性を伝えておく

コメント等の受付と対応

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会の場合、オンラインで参加する株主については会社法上、株主に認められている質問や動議を行うことはできません。但し、質問・動議には含まれないコメントの受付については配慮の余地があります。以下の方法で株主のコメントに回答するとよいでしょう。


・株主総会のリアル出席者、オンライン出席者の質疑を踏まえつつ、株主総会の中で紹介する
・株主総会の終了後の懇親会などでコメントを紹介・回答する
・後日企業ホームページ内で紹介・回答する

通信障害があった場合の対応

株主総会の配信途中で通信障害などが発生した場合の対応について事前に取り決めておく必要があります。

経済産業省の「ハイブリッド型バーチャル株主総会実施ガイド(別冊)実施事例集」では以下の対策事例を紹介しています。


・通信障害発生のため、議決権を事前に行使しておくことを推奨する
・個別サポートはできない旨を事前に通知する
・事前登録制を採用し、それを受けて予め必要なサーバーを構築しておく
・バックアップ手段を確保しておく

(参考:経済産業省『ハイブリッド型バーチャル株主総会実施ガイド(別冊)実施事例集(p20~23)』)

バーチャル株主総会の事例

ここからは、実際にバーチャル株主総会を実施・運営している企業の取り組み事例を紹介します。

バーチャル株主総会を国内最初に実施:グリー株式会社

グリー株式会社は2019年に国内で初めてバーチャル株主総会を実施した企業です。また、コロナ禍の2020年9月にはハイブリッド出席型のバーチャル株主総会を実施しています。バーチャル株主総会においてはWeb面接システムを提供する株式会社ブイキューブと連携し、安定したシステム環境と入念な運営シナリオの両面から準備を整えました。

開催会場を本社とすることで準備の負担を減らしたほか、株主総会ではおなじみの「お土産」をギフト券に置き換えリアル参加者への接触感染リスクを減らす工夫も同時に実施しています。

(参照:6 deGREEs『リアルとバーチャルの空間を繋ぐ新たな試み「出席型バーチャル株主総会」』)

株主・一般参加者とのコミュニケーションを重視:サイボウズ株式会社

ソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社は2020年3月に「ハイブリッド参加型株主総会」を開催しました。同社の大きな特徴は株主総会をYouTube配信し、株主だけでなく一般の参加者も視聴できる体制を整えた点です。役員もリモート参加をするという試みで、当日は会場に足を運んだリアル参加の株主4人に加え、500人以上がライブ視聴者しました。

SNS上でも大きな反響を呼び、株主とのコミュニケーション促進だけでなく企業ブランディングにも有効な株主総会のあり方だと言えるでしょう。

(参照:PR TIMES『入社式、株主総会、製品イベント・・・オンライン配信で開催したサイボウズイベント』)

Zoomを活用した出席型のオンライン株主総会:株式会社ガイアックス

ソーシャルメディアなどに関する事業を行う株式会社ガイアックスは、2020年3月に議長や取締役、株主が完全にオンラインで参加するバーチャル株主総会を実施しました。株主総会の準備期間はわずか1日で、総会予定日の2日前に東京都から平日のリモートワーク推奨と夜間外出の自粛を推奨する声明が出されたことがきっかけでした。

株主総会開始までの準備は以下の手順を取っています。


・オンライン株主総会への参加を希望する株主に専用ダイヤルを案内する
・専用ダイヤルで本人確認を行う
・オンライン株主総会に関する決定事項を事前に伝達し了承を得る
・株主のメールアドレスを確認し、配信用URLをそれぞれ連絡する

新型コロナウイルス感染症の感染リスク対策として、迅速なバーチャル株主総会設計、運用が可能であることを示しました。

(参照:Gaiax blog『株主総会のオンライン化を1日で達成?!当たり前を疑うカルチャーにより実現』)

リアルタイム株主質問・投票を実現: アステリア株式会社

ソフトウェアサービスを開発・販売するアステリア株式会社は、Web会議システムを提供する株式会社ブイキューブと共同で開発したバーチャル株主総会を2020年6月に開催しました。出席者は議決行使権をネット上で行使できる形態で、同社が導入したブロックチェーン技術を活用したリアルタイム議決権投票が行われました。

株主総会の議決権行使に暗号化技術を用いたブロックチェーンを適用したのは世界初の試みで、2020年6月ではブロックチェーンによる投票数が50%となり、株主の利用率も向上しています。

(参照:アステリア株式会社『ブイキューブ × アステリア によるハイブリッド型バーチャル株主総会がコロナ禍における株主総会の開催を強力プッシュ』)

自社で実現可能なバーチャル株主総会の形態を確認する

株主との対話を促進や、感染症のような不慮の事態に備えるためにも、バーチャル株主総会の実施は現実的な選択肢となりつつあります。一方で、開催形態によって必要な設備や当日までの案内の方法も異なり、自社で開催可能な形態の見極めも必須です。準備期間、必要な環境、設備、実施可能な運用フローなどを洗い出し、自社の業態や企業規模に最適な形のバーチャル株主総会の設計を検討してみてください。

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