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パワハラ防止法とは?施行・適用前の中小企業に防止措置義務や対策を解説

2020.10.19

2019年5月、企業のパワーハラスメント防止措置義務などを新たに定めた「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(いわゆる「労働施策総合推進法」。以下、本記事では「パワハラ防止法」)が改正され、2020年1月には、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下、「パワハラ指針」)が公表されました。

同法・同指針は、大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から施行・適用されます。

 

企業のパワハラ対策では、防止措置が義務付けられている“パワハラの定義”を正しく理解し、パワハラ指針に沿った対策を講じることはもちろんですが、役員や管理職だけでなく、一般社員に対してもパワハラへの関心と理解を深めてもらうことが重要になります。

また、コロナ禍で顕在化した新たなパワハラへの対策も考えていく必要もあるでしょう。

 

本記事では、パワハラの定義や、企業のパワハラ防止措置義務と対策上の留意点などを紹介し、ウィズコロナ時代のパワハラ対策について考えます。

パワハラ防止法成立の背景

パワハラ防止法の防止措置義務や対策を解説しています。
2020年7月に厚生労働省が公表した「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、全国379か所にある総合労働相談コーナーへの令和元年度の民事上の個別労働紛争相談件数は27万9,210件で、相談件数の上位は次の通りとなっています。

 

①いじめ・嫌がらせ : 87,570件

②自己都合退職   : 40,081件

③解雇       : 34,561件

 

「いじめ・嫌がらせ」がトップとなるのは8年連続のことで、近年、職場のパワハラが社会問題化している状況が続いていました。

このような情勢を背景として、企業のパワハラ防止措置義務などを定めたパワハラ防止法が2020年6月に施行されています。

パワハラの定義

パワハラ指針では、パワハラの定義を次のように定めています。

 

職場において行われる

①優越的な関係を背景とした言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③労働者の就業環境が害されるものであり、

①~③をすべて満たすもの

 

上記の「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外も含まれます。

「労働者」は、正社員・パート社員・契約社員など、雇用するすべての労働者をいい、派遣社員については、派遣元・派遣先の両方でパワハラ対策が必要となります。

 

「優越的な関係を背景とした」言動とは、上司から部下への言動に限りません。同僚や部下からの言動であっても、その者の協力がなければ業務遂行が困難だったり、集団による行為だったりなどの事情があれば、優越的な関係に当たるとされています。

 

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念上、その言動が明らかに業務上必要ではなかったり、やり方が相当(適切)ではないものを指します。パワハラ指針には、代表的なパワハラの言動の類型として、6つの類型が挙げられているので参考にすると良いでしょう。

なお、この6類型は、挙げた例以外は認められないという“限定列挙”ではありません。

「どれにも当てはまらないから即、パワハラではない」とはならないことに注意が必要です。

 

「労働者の就業環境が害される」とは、その言動により身体的や精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が出るなど、就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

この判断には、「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが適当であるとされています。

企業のパワハラ防止措置義務とその留意点

では、こういったパワハラに対し、企業はどのような防止措置を講じていく必要があるのでしょうか。

パワハラ指針では、企業に対し、次の措置を義務付けています。

 

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

④①~③までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシーの保護、不利益取扱いの禁止)

 

①~④を踏まえた具体的な対応としては、以下のようなものが考えられます。

パワハラ指針への対応(1)就業規則の作成・変更

就業規則に、

 

①パワハラを行ってはならない旨の方針

②パワハラに係る言動を行った者に対する懲戒

③パワハラの相談窓口

④パワハラの相談等を理由とした不利益取扱いの禁止

 

などについて規定します。

 

パワハラの相談窓口については、パワハラ指針において、セクハラやマタハラなどを含めて一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

これらの相談窓口を兼ねたものを人事部やコンプライアンス担当部門などに設置すると良いでしょう。

 

社内で人材が不足している場合には、弁護士や社会保険労務士など外部に相談窓口を委託することも可能です。

 

就業規則の作成・変更のポイントや記載事項などについては、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

パワハラ指針への対応(2)作成・変更した就業規則の従業員への周知、啓発

作成・変更した就業規則を従業員に周知し、パワハラへの関心と理解を深めてもらうための啓発を行います。

 

啓発の方法としては、研修や資料の配布、社内研修の実施などが考えられます。

外部研修のほか、厚生労働省が運営しているハラスメントの予防・解決に向けたポータルサイトには、研修用の動画やダウンロードできる資料などが用意されていますので、適宜、活用すると良いでしょう。

 

(参考:厚生労働省│あかるい職場応援団

 

また、企業のパワハラ対策においては、役員や管理職だけでなく、一般社員に対してもパワハラへの関心と理解を深めてもらうことが重要となります。

 

パワハラは上司から部下への言動だけに限られません。一般社員であっても他人ごとではなく、人間関係からの切り離しや性的指向などの機微な個人情報の暴露など、パワハラの加害者になり得ることを注意喚起していきましょう。

 

企業全体でパワハラへの理解を深めていくことが、役員や管理職が委縮せず、適切な指導を行える環境にもつながっていきます。

パワハラ指針への対応(3)相談窓口担当者への研修やマニュアルの作成

相談に対して適切に対応できるようにするため、相談窓口担当者への研修やマニュアルの作成なども必要となります。

 

以下は、相談対応の流れの一例ですが、相談窓口担当者の役割は①の相談の受付(一次対応)までとし、②以降は人事部などに引き継ぐ方が仕組みとしても良いでしょう。

 

相談対応の流れ(例)

①相談の受付(一次対応)

②事実関係の確認

③行為者・相談者への取るべき措置の検討

④行為者・相談者へのフォロー

⑤再発防止策の検討

 

前出の「あかるい職場応援団」には、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」や「相談受付票」などの資料も掲載されていますので、こういった資料も活用しながら相談窓口の充実を図っていきましょう。

ウィズコロナ時代のパワハラ対策

パワハラ防止法の大企業への施行とほぼ同時期に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてテレワークの導入が飛躍的に進みました。

そのような状況もあって、「テレハラ」や「リモハラ」(以下、「テレハラ」)といった新しいパワハラ類型が増加しているという報道がされています。

 

テレハラの内容としては、上司から「頻繁な報告を求められる」「厳しく監視される」などが多いといった印象です。

上司の“テレワークでは業務の進捗が分かりにくい”という不安からの行動を、部下が負担に感じていることが考えられます。

 

対策としては、対面とテレワークではマネジメントの方法も異なってくることを全員が共有し、新たなコミュニケーションのあり方を考えたり、報告がしやすい環境を整えたりといったことが考えられます。

 

本記事では、パワハラの定義や、企業のパワハラ防止措置義務と対策上の留意点などを紹介し、ウィズコロナ時代のパワハラ対策について考えました。

前述の相談対応の流れに見るように、パワハラは、一度発生するとその解決に多大な時間と労力を要します。

まずは予防が第一という姿勢のもと、企業全体でパワハラへの理解を深め、職場のコミュニケーションを促進するなど、問題が発生しにくい環境を整備していきましょう。

(執筆: 特定社会保険労務士 水間 聡子)

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