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働き方改革によって労働基準法へいくつもの変更が加わりましたが、企業が労働基準法を違反していないか取り締まる役目を持つ機関が労働基準監督署です。
経験したことのない方にとっては「予告なしにやってくる」「何かしら粗を探されて是正勧告がくだる」…など憶測が飛び交うこともある労働基準監督署の調査ですが、実際にどんな内容について調査され、調査を受ける企業はどのようなことを準備する必要があるのでしょうか。
本記事では、労働基準監督署が調査に入る際、準備を指示されることが多いものについて記載致します。
労働基準監督署がよく指摘する6つのケース
労働基準監督署は労働に関するトラブルすべてを受け付けているわけではなく、労働基準法に記載してある事項に明確に違反しているかどうかを中心に見ます。詳しくはこちらの記事でも解説しておりますが、指摘事項としてよくあるケースは下記の6つです。
・労働時間に関する内容
・賃金に関する内容
・労働条件に関する内容
・有給休暇に関する内容
・安全基準管理に関する内容
・健康管理に関する内容
つまり、これらに紐づく書類やデータでの記録を求められるケースが多いと考えることができます。
労働基準監督署によく準備を求められるもの
それでは、具体的に準備を求められるものとしてどのようなものが挙げられるのでしょうか。
①労働時間に関する内容で準備が求められるもの
・36協定の協定届(時間外労働、休日労働について定めがあるもの)
・直近6か月間のタイムカードや入退室履歴など、従業員の労働時間がわかるもの
36協定で定められた上限以上に労働していないかが焦点となります。
②賃金に関する内容で準備が求められるもの
・賃金規程
・直近6か月間の賃金台帳
残業代の支払いについて、焦点が当たることが多いです。また、タイムカードと比較して、残業がないように見せて、実態として残業をしている可能性について調査が入ることもあります。
③労働条件に関する内容で準備が求められるもの
・就業規則や賃金規程
・労働条件通知書や雇用契約書の控え
従業員が10名以上の場合、就業規則の作成・届出がされているかどうか、また、実態と異なるものとなっていないかが焦点となります。
④有給休暇に関する内容で準備が求められるもの
・年次有給休暇管理簿(有給を付与した日、取得した日数、取得した日付を記入したもので、賃金台帳等と併せて作成することも可)
働き方改革関連法により、一定日数の有給の取得と年次有給休暇管理簿の作成が義務となりました。そこで、有給の取得状況を把握し、きちんと取得させているかが焦点となります。
⑤安全基準管理に関する内容で準備が求められるもの
・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任状況がわかるもの
・安全衛生委員会の議事録
・安全衛生管理の組織表
従業員が50名以上の組織に関しては、安全管理者・衛生管理者・産業医の選任と安全衛生委員会の開催が必要となっています。これらの組織体制を整備しているかが焦点となります。
⑥健康管理に関する内容で準備が求められるもの
・健康診断の結果
・ストレスチェックの記録
企業は健康診断はもちろんですが、従業員が50名以上の場合は従業員のストレスチェックを義務付けられています。これらを適切に行なっているかが焦点となります。
⑦その他準備が求められるもの
・労働者名簿
労働基準監督署への対応の注意点
証拠資料の用意が最も重要
労働基準監督署が最も重要視されるのは、上記の証拠資料です。
証拠資料があるのかないのか、証拠資料を補足するものはあるか、一度提出した証拠資料に間違いがあるとき、その間違いを反証するための資料はあるのか、という点も併せて見られます。
証拠資料の補足のために関係者の証言を取ることもありますが、証拠資料と証言が矛盾するなどがあると、調査官の心象が悪くなります。
是正勧告を受けないためにも、証拠資料となり得るものは必ず正しく作成し、内容を把握しておきましょう。
証拠資料を慌てて揃えることにならないための対策
証拠資料となるものは普段から企業で管理すべき内容です。しかし、こういった管理ばかりに時間を取られるのも生産性が落ちてしまいます。
例えば紙のタイムカードを廃止して入退室管理システムを導入し、勤怠管理システムと連携して入退室ログから勤務時間を把握できるようにするなど、普段から自動化できるものは自動化し、管理を楽にしつつも求められたときにすぐに準備できるような仕組みをつくっておくことも大切です。
労働基準監督署の調査が入っても、堂々と対応できる組織づくりを
労働基準監督署の調査時に企業が準備するものについて記載してきました。
そもそも労働基準法に違反をせず、法律に則った組織づくりをしていれば、いざ労働基準監督署の調査が入った際でも準備に時間がかかることはないはずです。
働き方改革関連法案が施行されたこのタイミングで、今一度自社の体制が法律に則ったものか、見直してみてはいかがでしょうか。
(監修: 社会保険労務士 水間 聡子)