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労働者が企業から不当な扱いを受けていないか、取り締まる役目を担っているのが労働基準監督署です。しかし、企業からの不当な扱い全てに対応できるわけではありません。
ワラにもすがる思いで勇気を出して相談したのに、「うちの管轄じゃないんで…」と言われてしまったら、時間と労力がもったいないですよね。
今回は労働基準監督署への相談前に知っておきたい、労働基準監督署ができること、できないことについて解説します。
労働基準監督署とは労働基準関係法令に基づいて企業を取り締まる機関
労働基準監督署は労働基準法や労働安全衛生法などに基づいて、企業が労働者に違法な行為を行っていないかを取り締まるための機関です。
労働者の相談が集まってくるため勘違いされやすいのですが、労働者を救済することが目的の機関ではありません。
ただし、捜査権を持っているため、労働者の相談に基づいて違反企業を発見すると、最終的には捜査・摘発まですることができます。
詳しくはこちらの記事にも記載がありますので、ご確認ください。
しかし、先述したように労働基準監督署は労働関連のトラブルなら何でも受け付けられる機関ではありません。
では、具体的にどういった内容であれば話を聞いてもらうことができ、逆にどういった内容だと「業務範囲外」となってしまうのでしょうか。
労働基準監督署で相談できる6つのケース
労働基準監督署で取り扱うのは「労働基準関係法令に明確に違反していること」です。よく指摘があるパターンは大きく分けて6つあります。下記では、より具体的な事例も併せて記載します。
※こちらの記事もご参照ください。
①労働時間についての指摘
「36協定なしの長時間労働」「休憩時間が少ない」など
②賃金についての指摘
「賃金が支払われない」「残業代が支払われない」など
③労働条件についての指摘
「性別による不当解雇があった」「雇用契約書にない事項をつきつけられている」など
④有給休暇についての指摘
「有給休暇がもらえない」など
⑤安全基準管理についての指摘
「労災に遭ったのに会社が何もしてくれない」など
⑥健康管理についての指摘
「粉塵の近くで作業するなど特殊な健康診断が必要な業種なのに、健康診断を受けさせてもらえない」など
労働基準監督署では相談できないケース
労働基準監督署では労働基準関係法令に明確に違反しているかどうかの判断が業務範囲です。
従って、法律に明確な基準がなく、民事的な判断が必要となる場合は、労働基準監督署に相談して解決することは難しくなります。
具体的には
・セクハラやパワハラを受けた
・悪意のある異動や配置転換(昇進・昇格も含め)をされた
・不当な懲戒処分を受けた
・強制解雇された
といった内容になりますが、こちらは労働基準監督署ではなく、個別労働紛争解決制度を設けている「労働局」への相談を検討すると良いでしょう。労働局は、労働基準監督署の上部機関で、各都道府県にあります。
労働基準監督署と労働局の業務内容は混同しやすいので気をつけましょう。
労働基準監督署に対応してもらうための2つのポイント
あなたのケースを整理した結果、明らかに労働基準法違反だと判断して労働基準監督署に相談したとしても、すぐには対応してもらえないこともあります。
しかし、可能な限り早めに対応してもらいたいですよね。下記では早めに対応してもらうための2つのポイントについて説明します。
①緊急性が高いことをアピールする
そもそも、労働基準監督署は相談事項に対して人員不足だと言われており、優先順位の高い事項から順番に対応しています。
そのため、あなたのケースが優先順位が高いものだと判断してもらうことが大切です。
具体的には
・「電話」より「直接訪問」を選ぶ
・「匿名」より「実名」を選ぶ
・「相談」ではなく「申告」する
といった形で緊急性の高さをアピールすると良いでしょう。
②明確な証拠を提示する
当たり前ですが、証拠なき訴えに動いてもらうことはできません。労働基準法に違反していると証明できるものをできる限り多く持っていきましょう。
例えば、
・残業時間に関する訴え
タイムカードや出退勤記録データなど
・賃金に関する訴え
賃金規程や給与明細など
・労働条件に関する訴え
雇用契約書など
が準備事項として考えられます。当該事項についてのやり取りが音声や議事録に残っていると、なお対応を急いでもらえる可能性が上がるでしょう。
労働基準監督署で相談できること、できないことを理解し、正しく依頼しよう
労働基準監督署でできること、できないことについて記載してきました。先述したように、「労働基準関係法令に明確に違反しているかどうか」が判断の分かれ目となっています。
万が一、相談したいケースが出てきた際は、相談事項が労働基準法などに規定されていて、かつ明確に違反していると考えられるかを吟味してから行動しましょう。
また、企業側としては「気付かぬうちに労働基準法などに違反をして」おり、訴えがあってからは後の祭りです。
入退室管理システムや勤怠管理システムによる残業時間や残業代の支払状況の把握、雇用契約書や就業規則と実態がかけ離れていないかのチェックなど、仕組みを整備しながら従業員の働き方と向き合っていきましょう。
(監修: 社会保険労務士 水間 聡子)
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