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近年、物理的な「鍵」を使わずにオフィスや自宅、そして車などのドアの鍵を管理・制御する「キーレス」が広がりを見せています。
スマートフォンのアプリやICカード、さらには指紋、静脈、音声、顔などの生体認証で、自宅や会社、車のドアを開け閉めできる「物理鍵を使わない社会」の実現に向け、さまざまな企業が動き始めています。
本記事では、「キーレス」で実現する新しい社会についてご紹介します。
キーレス社会とは?
「キーレス社会」とは、従来の物理鍵を使わず、スマートフォンのアプリやICカード、生体認証などを用いてドアの鍵の管理・制御(解錠・施錠など)を行う方法が広く普及した社会のことをあらわす言葉です。
キーレス社会がもたらすメリット
キーレスが進んだ社会は、私たちに以下のようなメリットをもたらします。
キーレス社会のメリット①:携帯する持ち物が減る
スマートフォンやICカードに鍵の機能を持たせることで、物理鍵を携帯する必要がなくなり、持ち物を減らすことができます。つまり、普段使っているスマートフォンやICカードが鍵の代わりになるということです。
携帯する持ち物を減らして、鍵の開け閉めとICカードによる交通機関の利用や買い物、そしてスマートフォンによるアプリの利用などが一緒になれば、日常の動作が簡略化されて楽になると同時に、ストレスの軽減にもつながるでしょう。
キーレス社会のメリット②:物理的な鍵の管理が不要になる
キーレスになると、物理的に鍵を管理したり、利用者がわざわざ鍵を受け取りに行くなどの手間がなくなります。
ホテルやフィットネスジムなどでは、フロントや受付で鍵を受け取って部屋やロッカーの施錠・解錠を行いますが、キーレスの場合、フロントに立ち寄ることなくそのまま目的の部屋やスペースを利用することができるようになります。
利用者の利便性が向上するうえ、管理側は人件費などのコストや手間の削減が可能となるでしょう。
キーレス社会の事例
ここからは、実際にキーレスが導入されている事例をご紹介していきます。
キーレス社会:事例① 自動車
近年、多くの車で標準装備されるようになってきているのが、無線通信を利用したスマートキーです。
スマートキーとは、キーをカバンやポケットに入れた状態で、車のドアの解錠、施錠、エンジンの始動や停止を行うことができる鍵のことです。
その歴史は古く、欧米では1990年代に導入が始まり、2000年代に入ると日本車にも搭載されるようになりました。
また、2019年10月に国土交通省は、スマートフォンを利用してエンジンを起動できるよう道路運送車両法に基づく保安基準の改正を行いました。
この改正により、車のキーレス化はさらに進んでいくことが予想されます。
キーレス社会:事例② ホテル
アメリカの大手ホテルチェーンを中心に、スマートフォンで客室への入退室が可能となるデジタルキーの導入が進められており、日本国内でもヒルトン東京ベイなどで導入が開始されています。
専用アプリ「ヒルトン・オナーズ・アプリ」をインストールすることで、自身のスマートフォンがルームキーとして使えるようになり、スマートフォンさえ持っていれば部屋に鍵を置いたまま外出してしまい、入室できなくなってしまうなどのリスクを回避できるほか、ネット上で決済を完了すれば、フロントに出向くことなくチェックイン・チェックアウトが行えるなど、非常に便利です。
(アプリ上でのチェックイン・チェックアウトのサービスは、2020年2月現在日本国内では開始されていません)
キーレス社会:事例③ オフィス
複数人で鍵を共有することの多いオフィスも、キーレス化のメリットを受けることができる場所の1つで、近年はスマートロックと呼ばれる電子錠を利用する企業が増えています。
スマートロックを使うと、従業員がスマートフォンやSuicaなどの交通系ICカードでオフィスの施錠・解錠ができるようになり、“鍵当番”がなくなるほか、鍵の閉め忘れもなくなることが期待されます。
また会社側はPCやスマートフォンの管理画面で鍵権限の付与・削除ができ、従業員がスマートフォン/ICカードなどの鍵の権限を持ったデバイスやカードを紛失した場合も同様に管理画面から簡単に権限の削除が可能になるため、セキュリティ上のリスクも軽減されます。
さらに、入退室管理もできるスマートロックを導入すれば、鍵の管理が容易になるだけでなく、オフィスセキュリティをさらに強固にしたり、入退室の履歴などを活用し、従業員の勤怠管理を行うことも可能になります。
キーレス社会:事例④ ロッカー
駅構内などに設置されているコインロッカーも、鍵を使わず、暗証番号やSuicaやPASMOなどの交通系ICカードで施錠・解錠するタイプが徐々に増えています。
交通系ICカード対応型の場合、料金の支払いもICカードでできる場合が多く、キャッシュレスの便利さも同時に体験できます。
また、宅配便の再配達の増加でニーズが急速に高まっている宅配ボックスにおいても、スマートフォンに表示される二次元コードをかざすだけで荷物の取り出しが行えるIoT宅配ボックスの導入が広がりを見せています。
キーレス社会で実現する便利で安全な社会
本記事では、キーレス社会の広がりについて紹介しましたが、物理鍵の使用からキーレス(デジタル)への移行は、利便性の向上だけでなく、失念や抜け・漏れといった人間の脆弱性をデジタルで補うことができるため、その用途によっては安全性も高まることが期待できます。
ここ数年、クレジットカードや電子マネーを利用した「キャッシュレス」が急速な広がりを見せているなか、次に普及が期待されるのは「キーレス」ではないでしょうか。
IT技術の飛躍的な向上などで、私たちの社会システムは大きな転換期を迎えています。財布と鍵がなくなり、「外出時はスマホだけ」という未来はそう遠くないのかもしれません。
(「キーレス社会:事例③」 で挙がったオフィスのスマートロックについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています)