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ジョブ型雇用とは?人事制度設計のポイントや雇用管理上の注意点を解説

2020.09.04

職務などを限定した雇用形態である「ジョブ型」雇用。

従来の日本型雇用である「メンバーシップ型」雇用と対比され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって急速に普及したテレワークにも対応できる人事制度として関心が高まっています。

大企業では、富士通や日立製作所、KDDIなどがジョブ型雇用の導入を表明し、今後も導入を検討する企業が増加することが予想されますが、導入にあたっては、従来のメンバーシップ型雇用とは異なる雇用管理上の注意点もあり、慎重な検討が必要となります。

 

本記事では、ジョブ型雇用の概要やジョブ型人事制度の制度設計のポイント、雇用管理上の注意点などについて紹介します。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用における人事制度の設計のポイントや雇用管理上の注意点を解説しています。
2020年7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針2020)において、ジョブ型の雇用形態は、「職務や勤務場所、勤務時間が限定された働き方等を選択できる雇用形態」と定義されています。

同方針は、同一労働同一賃金などの働き方改革の一環として、「従業員のやりがいを高めるためのメンバーシップ型からジョブ型の雇用形態への転換や、より効率的で成果が的確に評価されるような働き方への改革に向けて、取り組みを加速させる」としています。

 

このように、近年、国を挙げて推進されてきたジョブ型雇用ですが、新型コロナウイルスへの感染症対策として普及が加速したテレワークなどの新たな働き方の流れからも、改めて注目を集めています。

 

ジョブ型雇用のメリットとしては、一般的には、職務や成果に重点を置いた「仕事基準の賃金」が馴染みやすいため、従業員の納得感が得られ、中途入社の即戦力を確保しやすい点などが挙げられます。

デメリットとしては、スペシャリストを育てやすい反面、柔軟な人事異動がしにくい点などが挙げられます。

メンバーシップ型雇用とは

ジョブ型雇用に対し、従来の日本型雇用はメンバーシップ型雇用であると言われています。

2013年6月5日に規制改革会議が公表した「規制改革に関する答申」にかかる雇用ワーキング・グループ報告において、日本の正社員は、無限定社員という性格が強く、職務、勤務地、労働時間などの制約、限定がない社員、つまり、将来、職種、勤務地の変更、残業などの命令があれば基本的に受け入れなければならないという「暗黙の契約」が上乗せされている社員であると述べられており、入社した企業の一員となることが大きな意味を持つため、メンバーシップ型社員とも言えるとしています。

 

メンバーシップ型雇用のメリットとしては、一般的には、勤続年数や能力に重点を置いた「人基準の賃金」が馴染みやすいため、長期勤務へのインセンティブが働き、柔軟な人事異動がしやすい点などが挙げられます。

デメリットとしては、従業員は幅広い能力向上に意欲的になる反面、評価基準が抽象的になりやすく、従業員の納得感が得られにくい点などが挙げられます。

ジョブ型人事制度の制度設計のポイント

メンバーシップ型雇用の企業がジョブ型雇用の導入を検討する場合、

 

①メンバーシップ型社員⇔ジョブ型社員

②非正規社員(契約社員やパートタイマー)→ジョブ型社員

 

などの転換制度を整備し、導入の効果を見ながら移行を進めていく方法などが考えられます。

①の転換制度は、育児や介護などの事情により転勤や長時間労働が難しい従業員の就業継続に、②の転換制度は、労働契約法に基づき通算契約期間が5年を超える有期契約労働者が、希望により無期転換する場合の受け皿としても有効です。

 

ジョブ型社員の賃金については、

 

①メンバーシップ型社員とは別個の賃金テーブルを用意する

②メンバーシップ型社員と同じ賃金テーブルを使用し、賃金係数を設定することで調整する

③メンバーシップ型社員と同じ賃金テーブルを使用し、メンバーシップ型社員の方に職務などが無限定であることに対する手当を支給する

 

などの方法が考えられます。

 

ジョブ型社員は正規雇用であるため、正規・非正規間の均等・均衡待遇を求めるパートタイム・有期雇用労働法の規制(いわゆる同一労働同一賃金)の対象とはなりませんが、従業員の納得感を高め、生産性の向上へとつなげるためにも、同法に準じたバランスの取れた賃金とすることが肝要です。

ジョブ型人事制度の雇用管理上の注意点

ジョブ型社員の雇用管理については、前出の「骨太方針2020」においても、「さらなる普及・促進に向け、雇用ルールの明確化に取り組む」とされており、法整備などについては未だ道半ばとなっています。

現時点では、雇用ルールの明確化の論点を先取りし、トラブルのない雇用管理を行っていくようにしましょう。

 

具体的な論点としては、2019年6月6日に規制改革推進会議が公表した「規制改革推進に関する第5次答申」において、勤務地(転勤の有無を含む)、職務、勤務時間などの労働条件について、「労働契約の締結や変更の際に書面による確認が確実に行われるよう方策を検討し、所要の措置を講じる」とされています。

労使間の紛争を未然に防止し、従業員に安心して働いてもらうためにも、限定の内容については、労働条件通知書(雇用契約書)や就業規則によりしっかりと明示をするようにしましょう。

 

また、ジョブ型社員は、勤務地や職務が限定されているため、事業所閉鎖や職務の廃止などに際して解雇の有効性が認められやすいのではないかと考えられがちですが、この点は「多様な正社員に係る『雇用管理上の留意事項』等について」(平成26年7月30日 基発0730第1号)において否定されています。

同通達は、整理解雇法理(整理解雇の4要素※)を否定する裁判例はないため、「配置転換を可能な範囲で行う必要がある」としています。

 

※整理解雇の4要素については、こちらの記事をご参照ください。

自社の課題を踏まえたジョブ型雇用の活用を

本記事では、ジョブ型雇用の概要やジョブ型人事制度の制度設計のポイント、雇用管理上の注意点などについて紹介してきました。

ジョブ型雇用は、成果主義と親和性が高く、テレワークのマネジメントに適しているというだけではなく、育児や介護などをする従業員など多様な人材の活用や、非正規雇用対策としても有効な雇用形態です。

ジョブ型雇用、メンバーシップ型雇用の双方のメリットを理解し、自社の課題を踏まえてジョブ型雇用の導入を検討していきましょう。

(執筆: 特定社会保険労務士 水間 聡子)

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