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少子高齢化で労働力人口が減少している日本において、優秀な人材の確保や維持は企業の課題の1つとなっています。さらに、ここで言う優秀という言葉が示すものは各企業によって異なり、それぞれの企業が求める人材像に合致していなくてはなりません。
そこで、最近ではこの企業のニーズに適した採用手法としてダイレクトリクルーティングという求職者に直接アプローチする方法が注目を集めています。
本記事では、SNSなどを活用したダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットや注意点について説明します。
ダイレクトリクルーティングとは?
これまで、企業が新たな人材を求める場合は求人や人材紹介専門のサイトなどに募集記事を掲載し、求職者からのアプローチを待つという受け身型の手法が一般的でした。
しかし、ダイレクトリクルーティングでは「待ち」の姿勢から、人材データベースやSNSなどを活用して企業側から求職者にアプローチする「攻め」の手法が取られます。
このような「攻め」の手法では、採用にかかるリソース(業務量)は大きくなるものの、コストは低くなる傾向にあります。
また、特にSNSを活用したダイレクトリクルーティングでは、投稿の内容からスキルや人柄をある程度把握できるので、履歴書と面接だけでは判断しきれず「採用してみたものの、やっぱり社風と合わなかった」といった失敗も少なくなるといった効果も期待できます。
ダイレクトリクルーティングが普及してきた背景
ダイレクトリクルーティングが普及してきた背景として、「労働力人口の減少」「ビジネスモデルの変化」「コミュニケーションツールの発展」の3つが挙げられます。
ダイレクトリクルーティングの普及の背景①:労働力人口の減少
日本では、ますます進む少子高齢化によって、労働力人口全体の母数が減っている中で、優秀な人材を探すことになり、求職者側に有利とされるいわゆる売り手市場がこれからも加速していくと考えられます。
このような状況下で、採用担当者はより確実に優秀な人材にアプローチすることが求められるでしょう。
ダイレクトリクルーティングの普及の背景②:ビジネスモデルの変化
IT関連技術の進化などを受けて、企業が取り組む一つひとつの事業サイクルが短くなり、かつ高難度化していると言われています。
例えば、携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラケー)からスマートフォンへの移行は十数年ほどの短期間でで起こっています。
このように急速に変化する社会では、ワーカーは1つの会社に生涯勤め、1つの事業に寄り添い続けるのではなく、事業の変化に合わせて転職を検討する機会が増えることが推察されます。
企業側としても、このような事業ライフサイクルに合わせて、従来のように時間をかけて育成するより、高い能力やポテンシャル、スキルを備えた人材を要所要所で採用したいと考えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングの普及の背景③:コミュニケーションツールの発展
ブログやSNSなど、コミュニケーションツールの普及によって個人による発信が増えていることで、これまで以上に個人の考えやスキルなどを知ることができる場所が増えてきています。
このような個人からの発信が活発になったことで、企業が求める人材を見つけやすくなったと考えられます。
ダイレクトリクルーティングのメリット
ダイレクトリクルーティングのメリットとしては、「転職潜在層(まだ転職を積極的に考えていない層)もターゲットにできる」「採用コストが低い」「採用ノウハウが蓄積される」「転職エージェントで紹介されにくい人材が見つかる」といったことが挙げられます。
以下で具体的に見ていきましょう。
ダイレクトリクルーティングのメリット①転職潜在層もターゲットに
「積極的に転職を考えているわけではないが、良い機会があれば転職したい」と考えている層もターゲットにできます。
この層は求人雑誌やサイトを見たり、転職エージェントなどに相談したりといった積極的な転職活動をしているわけではありませんが、SNSやスカウト型の転職サイトには登録している可能性があります。
また、こうした層とSNSなどでつながっていれば、投稿内容から人柄や転職に対する温度感を知ることができますし、自社の魅力を直接伝えることもできます。
つまり、ダイレクトリクルーティングの強みを最大限に活かせると言えるでしょう。
ダイレクトリクルーティングのメリット②採用コストが低い
求人の際に、求人/人材紹介メディアや転職エージェントに依頼する場合、掲載料や手数料、成功報酬などを支払う必要があります。
一方で、ダイレクトリクルーティングでは、スカウト型の転職サイトに登録する場合には費用がかかりますが、SNSなどの活用次第で採用コストを大きく抑えることができます。
ダイレクトリクルーティングのメリット③採用ノウハウが蓄積される
従来の求人/人材紹介メディアや転職エージェントでは、採用プロセスでのアウトソース部分が多く、採用の各ステップを分析しにくいという欠点がありました。
その点、ダイレクトリクルーティングでは採用プロセスをすべて自社で管理するため、どのような人材を求めるか、実際にどうアプローチするか、採用の成功・失敗についてその要因は何だったのかなど、準備から振り返りまですべてのステップで分析を行うことが可能です。
こうした分析を繰り返すことで、自社内で採用のノウハウを蓄積できるようになります。
ダイレクトリクルーティングのメリット④転職エージェントで紹介されにくい人材も見つかる
転職エージェントは、採用決定時の年収から成功報酬を決定する方式で収益を得ていることが多いため、特定の人材を狙った求人の場合、年収を多く提示できる大企業が優先されやすいという特徴があります。
これは同時に、年収を大幅に引き上げることが難しい中小企業では大企業よりも紹介される人材が少なくなりやすいということにもなります。
ダイレクトリクルーティングなら、SNSなどを活用し、個別のアプローチができるため、転職エージェントで紹介されにくい人材を見つけやすくなるかもしれません。
ダイレクトリクルーティングのデメリット
逆に、ダイレクトリクルーティングのデメリットは何でしょうか?デメリットとして、「採用担当者の負担が増える」「短期では成果が出にくい」という2点が挙げられます。
以下、それぞれについて説明していきます。
ダイレクトリクルーティングのデメリット①:採用担当者の負担が増える
求人内容の策定、候補者探し、候補者へのアプローチ、面接の設定・実施、社内での検討、結果の通知など、採用活動のすべてを自社で行うため、採用担当者の負担が大きくなるのは大きなデメリットと言えます。
場合によっては、採用の人員を増強する必要があるかもしれません。
ダイレクトリクルーティングのデメリット②:短期では成果が出にくい
どのようにダイレクトリクルーティングを行っていくのかという方法はそれぞれの企業で決められるものの、それを1から始めた場合、さまざまな採用プロセスに付随する準備活動やノウハウ不足などにより、どうしても最初は成果が出にくいことが予想されます。
最初の頃は、PDCAを回しながら一つひとつの採用活動を分析し、コツコツとダイレクトリクルーティングの採用ノウハウを蓄積する必要があります。
ダイレクトリクルーティングの注意点
ここまで紹介したようなメリットを最大限に活かし、デメリットを解消するためには、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう。
ダイレクトリクルーティングの注意点①:会社が一丸となって取り組む
自社の魅力を伝えるとともに、転職者に対し熱意を持ってスカウトする必要があります。
そこで、少しでも自社の魅力を理解してもらえるよう、経営陣などの上層部を含めた会社全体が一丸となり、採用活動に取り組むことが重要です。
そうすることで、候補者からの自社に対するイメージの向上なども期待できます。
ダイレクトリクルーティングの注意点②:採用情報は一元管理する
採用ノウハウ蓄積のための分析データは、専任者を配置するなど一元管理することをお勧めします。
それによって、過去の採用で得たノウハウやデータを網羅的に分析、活用できるようになります。
そして、それらのノウハウやデータを元に、利用するツールを選定したり、コミュニケーション方法を設計・改善するなど、ダイレクトリクルーティングの効果をさらに高められるでしょう。
ダイレクトリクルーティングの注意点③:決して手軽な手法ではないことを意識する
ダイレクトリクルーティングでは、コストが低いかわりに自社で1から採用ノウハウを作る必要があります。
手軽ではありませんが、きちんと分析と改善を繰り返せば、より自社に合った人材を見つけやすくなるでしょう。
短期で結果が出ないからとすぐに諦めず、じっくりと試行錯誤が必要であることを意識しましょう。
ダイレクトリクルーティングを活用し、自社に合った人材を見つけよう
ダイレクトリクルーティングでは、企業から求職者にアプローチし採用活動を行います。
潜在層にもアプローチできる、採用コストが低いなどのメリットがある反面、採用担当者の負担が増える、短期では成果が出にくいといったデメリットもあります。
しかし、結果をきちんと分析できれば、自社に合った採用ノウハウを蓄積できます。
採用活動に課題を感じているなら、新たな採用手法としてダイレクトリクルーティングを検討してみてはいかがでしょうか。
ダイレクトリクルーティングと同様にコストを抑えられる採用手法として注目される「リファラル採用」については、こちらの記事をご参照ください。