新型コロナウイルス対策のテレワーク(在宅勤務)─労務管理上の注意点は─ | akeruto_ はたらく未来のカギになる

Akeruto はたらく未来のカギになる

MANAGEMENT

新型コロナウイルス対策のテレワーク(在宅勤務)─労務管理上の注意点は─

2020.04.17

昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大への対策としてテレワークが推進され、2020年4月11日には、政府は緊急事態宣言を出した7都府県にオフィス出勤者の7割減を要請しています。

ただ、パーソル総合研究所が2020年3月に行った調査によると、正社員のテレワーク(在宅勤務)実施率は13.2%、そのうち現在の会社で初めてテレワークを実施した人は半数近い47.8%で、緊急的なテレワーク実施により、不慣れな従業員のための労務管理上の課題も多くなることが推察されます。

 

本記事では、新型コロナウイルス感染症の影響で緊急的にテレワークを導入した企業向けに、テレワーク中の労務管理上の注意点や就業規則の変更のポイントを解説します。

【テレワークの労務管理】勤怠管理の方法を決める

テレワーク(在宅勤務)時の労務管理上の注意点をご紹介しています。
テレワークは、オフィスとは異なる自宅などでの勤務となりますので、勤怠管理の方法についても改めて検討が必要となります。

普段、クラウド型の勤怠管理ツールなどを使用している場合は、そのまま活用できることも想定され、テレワークへのスムーズな移行が期待できます。その場合は、オフィス勤務時と同様に始業・終業時刻を正確に打刻するよう改めて周知を行いましょう。

 

上記のような勤怠管理ツールを使用しない場合は、Eメールやビジネスチャットツール、電話などで始業・終業時に報告を行う方法を検討すると良いでしょう。

普段の勤怠管理の方法よりも一手間かかる場合もあるかもしれませんが、労働時間を適正に把握することは企業の責務ですし、正確な報告が行われないと、万が一の労災事故の場合も業務時間だったかどうか分からなくなってしまいます。

従業員には、始業・終業時の報告の重要性をよく説明し、報告の抜け漏れがないように協力を促していきましょう。

【テレワークの労務管理】始業・終業時刻や中抜け時間などに関するルールを決める

テレワーク時には、育児・介護・家事などの理由により、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げや中抜け時間の設定の要望が出ることも予想されます。特に今回の新型コロナウイルス感染症の影響による緊急テレワークの場合、自宅に休校中のお子さんがいるという従業員も多いでしょう。

 

このような従業員に配慮し、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げや中抜け時間の設定を行う場合には、就業規則に始業・終業時刻や休憩時間の繰上げ・繰下げの条文などを追加することが考えられます。就業規則の規定例は、以下の下線部のとおりです。

 

【規定例】

第〇条 所定労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。

2 始業時刻、終業時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。
始業時刻  午前9時00分
終業時刻  午後6時00分
休憩時間  午後0時から1時まで

3 前項の規定にかかわらず、業務の都合その他やむを得ない事情により、始業時刻、終業時刻及び休憩時間を繰上げ又は繰下げを行うことがある。この場合、所属長が前日までに従業員に通知する。

4 テレワーク勤務者の労働時間及び休憩時間についても、第1項から第3項の定めるところによる。ただし、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。

5 前項の規定により所定労働時間が短くなる者の給与については、育児・介護休業規程第〇条に規定する勤務短縮措置時の給与の取扱いに準じる。

(厚生労働省「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」より一部改変)

 

第3項の始業・終業時刻、休憩時間の繰上げ・繰下げは、始業時刻等を前後にスライドさせるというもので、一般的な就業規則でもよく見られる条文です。

中抜け時間を休憩時間として扱い、休憩時間を増やす措置を想定し、第4項を追加しています。

上記のような条文を整備したうえで、従業員の希望をヒアリングし、テレワーク期間中の始業・終業時刻、休憩時間とその運用方法を通知すると良いでしょう。

 

ただこの場合、所定労働時間が深夜(午後10時~午前5時)に及ぶと、深夜労働割増賃金が必要となってしまう点には、注意が必要です。

また、商業、保健衛生業などの一定の事業(※1)を除き、休憩は一斉に付与することが原則となっていますので、この措置により、一斉休憩ではなくなる場合には、労使協定の締結が必要となります。

休憩時間(中抜け時間)については、始業・終業時の報告と同様に、勤怠管理ツールやEメールなどで報告をもらうようにしましょう。

 

※1 運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署

【テレワークの労務管理】通常の労働時間制と事業場外みなし労働時間制

テレワーク時もオフィス勤務時と同じ労働時間制とする場合は、就業規則の変更は必要ありません。原則は通常の労働時間制となりますが、一定の要件に該当する場合は、事業場外みなし労働時間制の適用も検討できますので、その概要について以下で解説していきます。

 

事業場外みなし労働時間制とは、労働時間の全部または一部を事業場外(つまり所定のオフィス以外)で業務に従事し、労働時間を算定しがたいときに、就業規則などで定められた所定労働時間(※2)労働したものとみなす制度です。ただし、この場合でも、健康管理の面から労働時間の把握は必要となりますので、勤怠管理ツールやEメールなどで始業・終業時の報告をもらうようにしましょう。

 

※2 業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」については、労使協定により決定することが望ましく、その時間が法定労働時間を超える場合には、労働基準監督署への届出が必要です。

 

テレワークにおいて事業場外みなし労働時間制を適用するためには、次の3つの要件をすべて満たすことが必要となります。

 

①テレワークが起居寝食等私生活を営む自宅で行われること

②情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

③随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 

②については、情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であることとされています。

例えば、回線が接続されているだけで、労働者が自由にパソコンから離れることや通信可能な状態を切断することが認められている場合や、会社支給の携帯電話を所持していても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合などは、②の要件を満たします。

 

③については、「具体的な指示」には、例えば、当該業務の目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、これら基本的事項について所要の変更の指示をすることは含まれないとされています。

【テレワークの労務管理】手当や費用負担について決める

テレワーク時であっても、所定労働時間が短くなったなどの理由がない限りは、基本給や諸手当を減額することはできません。

ただ、通勤の頻度によって通勤手当を見直すことは可能と考えます。就業規則の規定例は、以下の下線部のとおりです。

 

【規定例】

第〇条 通勤手当は、従業員の通勤に係る費用負担の補助として、通勤に電車、バス等の公共交通機関を利用する従業員に対して、1か月定期代相当額を支給する。

2 前項の規定にかかわらず、在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が月に〇日以上の場合の通勤手当については、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給するものとする。

(厚生労働省「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」より一部改変)

 

この規定例では、テレワークにより出勤の頻度が減少することを想定し、第2項を追加しています。

 

また、テレワーク実施時にかかる通信費や水道光熱費などの費用負担についても、就業規則の変更が必要となります。

具体的には、①情報通信機器の費用、②通信回線の費用、③消耗備品費、④水道光熱費などについて、会社負担とするか個人負担とするか検討していきます。

業務で使用するものなので、会社負担とすると従業員の理解も得られやすいと考えますが、②や④については、個人使用分と業務使用分の切り分けが難しいケースもありますので、定額のテレワーク勤務手当を支給するといった取り扱いも見られるところです。

「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」の活用も

本記事では、新型コロナウイルス感染症の影響で緊急的にテレワークを導入した企業向けに、テレワーク中の労務管理上の注意点や就業規則の変更のポイントを解説してきました。

 

テレワークの環境を整えるためには、今回、紹介したような就業規則の変更の他に、テレワーク用通信機器の導入などももちろん必要となってきます。これらの費用については、「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」の助成金の活用が検討できます。

(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースについては、詳しくはこちらの記事をご参照ください)

 

緊急的に始まった今回のテレワークですが、労務管理上の課題は早期に解決し、従業員が安心して業務に取り組める環境を整備していきましょう。

(執筆: 特定社会保険労務士 水間 聡子)

関連記事