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高度プロフェッショナル制度とは?制度の概要や導入手続きを紹介

2020.05.20

国が推進する「働き方改革」が本格的にスタートを切り、2019年4月には、長時間労働の是正を目的に時間外労働の上限規制などの改正法が施行され、2020年4月からは中小企業にも適用されました。また、多様で柔軟な働き方の実現を目的とした高度プロフェッショナル制度も2019年に創設されています。

高度プロフェッショナル制度とは、特定高度専門業務・成果型労働制とも呼ばれ、文字どおり高度の専門的知識等を有する労働者について、一定の要件の下で時間ではなく成果による労働を認めるものです。

 

本記事では、新しい労働制である高度プロフェッショナル制度について、制度の概要やメリット・デメリットを紹介します。

高度プロフェッショナル制度(高プロ)とは

高度プロフェッショナル制度について説明しています。
高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議および労働者本人の同意を前提として、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

対象労働者には、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずる必要があります。

 

高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、36協定を締結せずとも時間外・休日労働をさせることができ、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払いも不要ということになります。

 

36協定について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

 

ちなみに、管理監督者は、時間外・休日の割増賃金の支払いは不要ですが、深夜の割増賃金の支払いは必要です。

裁量労働制(専門業務型および企画業務型)は、専門業務型では労使で協定した(企画業務型では労使委員会で決議した)1日あたりの労働時間が法定労働時間を超えている場合には、時間外の割増賃金の支払いが必要ですし、もちろん休日・深夜の割増賃金の支払いも必要です。

 

裁量労働制の定義から採用ルール、実際の企業の事例などは、こちらの記事をご参照ください。

 

これらの違いから、高度プロフェッショナル制度は、これまでの時間による働き方とは異なる、成果による新しい働き方であるということが分かります。

高度プロフェッショナル制度の対象業務

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務については、下記の具体的な対象業務に該当する業務で、対象業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けないことも要件となっています。

 

具体的な対象業務

①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

②資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

※厚生労働省「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/000497408.pdf)には、対象業務となり得る・なり得ない業務の例が挙げられています。

 

対象業務は働く時間帯の選択や時間配分について自らが決定できる広範な裁量が労働者に認められている業務でなければならず、出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働等労働時間に関する業務命令や指示ができないのはもちろん、対象労働者の働く時間帯の選択や時間配分に関する裁量を失わせるような成果・業務量の要求や納期・期限の設定など、実質的に業務に従事する時間に関する指示と認められる指示についても、することができません。

 

ただし、使用者が対象労働者に対し業務の開始時に当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、中途において経過の報告を受けつつこれらの基本的事項について所要の変更の指示をすることは問題ないとされています。

高度プロフェッショナル制度の対象労働者

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者については、対象業務に常態として従事しており、下記の対象労働者の要件をいずれも満たすことが必要となります。

 

対象労働者の要件

①使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること

②使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること(1,075万円以上であること)

 

①の合意の方法については、(1)業務の内容、(2)責任の程度、(3)求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準を書面にて明らかにした上で、その書面に労働者の署名を受けて合意を得なければならないとされています。

また、①の「職務が明確に定められている」とは、(1)~(3)が具体的に定められており、対象労働者の職務の内容とそれ以外の職務の内容との区別が客観的になされている状態をいいます。

使用者の一方的な指示により業務を追加することはできず、職務の内容を変更には再度の合意が必要であり、その場合も職務の内容の変更は対象業務の範囲内に限られます。

 

②の「使用者から支払われると見込まれる賃金額」とは、名称の如何にかかわらず、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金であるとされています。

例えば、賞与や業績給等でその支給額があらかじめ確定されていない賃金は含めることができませんが、支払われることが確実に見込まれる最低保障額が定められている場合には、その最低保障額は含めることができるとされています。

高度プロフェッショナル制度の導入手続き

高度プロフェッショナル制度の導入手続きにおいては、労使委員会の決議と労働者本人の同意がポイントとなります。具体的な手続きの流れは、以下のとおりです。

 

①労使委員会を設置する

②労使委員会で決議をする(委員の5分の4以上の多数による決議)

決議すべき事項

(1)対象業務

(2)対象労働者の範囲

(3)対象労働者の健康管理時間を把握すること及びその把握方法

(4)対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること

(5)対象労働者の選択的措置

(6)対象労働者の健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

(7)対象労働者の同意の撤回に関する手続

(8)対象労働者の苦情処理措置を実施すること及びその具体的内容

(9)同意をしなかった労働者に不利益な取扱いをしてはならないこと

(10)その他厚生労働省令で定める事項(決議の有効期間等)

③決議を労働基準監督署に届け出る

④対象労働者の同意を書面で得る

⑤対象労働者を対象業務に就かせる

⑥決議の有効期間の満了(継続する場合は②へ)

 

②の(3)にあるように、高度プロフェッショナル制度の対象労働者だからといって時間管理をしなくても良いというわけではなく健康管理時間(対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間)の把握は必要となります。

また、長時間労働の抑制や健康確保の観点から、(4)~(6)のような制度・措置を整える必要があります。

高度プロフェッショナル制度のメリット・デメリット

高度プロフェッショナル制度は、多様で柔軟な働き方の実現を目的として創設され、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できる新しい働き方として期待されるものです。

働き方の選択肢が増えたという点は、労使双方のメリットだと言えるでしょう。

 

また、メリハリのある効率的な働き方が実現すれば、労働者のワークライフバランスの向上にも寄与しますし、使用者には労働者の一層の能力発揮が生産性の向上として還元されます。

 

反対にデメリットについてですが、労働者のデメリットとしては、やはり長時間労働への懸念が挙げられます。

こういった指摘に対して、手続き上、健康・福祉確保措置等が義務付けられることとなりました。

使用者にとっては、これにより制度導入・運用のハードルが上がったことがデメリットとして挙げられるかもしれませんが、安全配慮義務の観点からも、積極的な健康・福祉確保措置等が望まれることは言うまでもありません。

自社に合った労働制の採用を

厚生労働省は、令和元年度3月末時点の高度プロフェッショナル制度に関する届出状況を公表しており、届出件数は12件、適用労働者数は414人(うち顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務が369人)となっています。

今後、高度プロフェッショナル制度がどの程度普及するかは未知数ですが、自社に合った労働制の採用について検討されるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

(執筆: 特定社会保険労務士 水間 聡子)

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