ビジネスはサウナから生まれる──パフォーマンス向上に期待できるサウナワーカーという働き方 | akeruto_ はたらく未来のカギになる

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INTERVIEW

ビジネスはサウナから生まれる──パフォーマンス向上に期待できるサウナワーカーという働き方

2021.02.01

プロサウナーが選出する“今行くべき全国のサウナ施設”ランキング「サウナシュラン」の2020年版では5位に入り、すでに殿堂入りも果たしている人気サウナ施設・スカイスパYOKOHAMA。

 

極上のリラックスを提供するだけでなく、2018年末には「コワーキングサウナ」としてリニューアルし、“サウナではたらく”を体現できる施設としても人気を集めています。

コワーキングサウナの誕生秘話や“はたらく”と“サウナ”の相性、さらにはサウナーの活用法について、同施設を運営する国際企業株式会社の代表取締役・金憲碩氏に伺いました。
スカイスパ取材のメインビジュアルです。

スカイスパのロゴ画像です。
国際企業株式会社
代表取締役
金 憲碩 氏

1967年横浜市生まれ。スカイスパの前身である「国際ヘルスクラブ」および「スカイサウナ」創立者を父親に持つ、2代目サウナ経営者。スカイスパ代表の他にも、公益社団法人日本サウナ・スパ協会常務理事、国際サウナ協会理事を務める。

IT系企業経営者がサウナで意思決定の準備をしている

――まずは最近のサウナ需要の変化についてお聞かせください。

5~6年ほど前から、IT系企業の経営者や文化人、クリエイターの利用が増えていました。私の知り合いで、日本サウナ大使(※)をやられている漫画家のタナカカツキさんという方がいらっしゃるのですが、タナカさんが手掛けられた漫画「サ道」がヒットし、ドラマ化もされてサウナ人気に拍車がかかりました。

2019年の秋くらいから、若い男女、特に20~30代の方々の利用が増えましたね。

 

※公益社団法人日本サウナ・スパ協会が公式に任命した、サウナ・水風呂の素晴らしさを世に伝える広報大使

タナカカツキさんの描いたイメージ画像です。

 

昔は「サウナ=年配の男性が使う」というイメージがありましたが、ここ数年で「サウナ=デキる人が利用する」というイメージが付き始めたことも大きいと思います。

IT系企業の経営者やクリエイティブな人たちが愛好していると聞くと、イメージが良くなりますよね。実際に彼らは、サウナで物事を考えたり、意思決定の準備をしているようです。

 

「温冷交代浴」と言いますが、サウナと水風呂、休憩を繰り返すことで非常にリラックスし、柔軟な発想やアイデアが生まれやすい状態になると言われています。

メディアやSNSで、そういった愛好者の方々のエピソードを知った人が、サウナに入って実際にその良さを体感し、リピーターになる人が増えているのだと思います。

 

――確かにメディアがサウナの効果を取り上げる機会が増えていますね。

2019年にテレビの取材が入ったことがありますが、サウナで“ととのった”状態の脳波を測定すると、「癒やされているときに出る“アルファ波”、覚醒しているときに出る“ベータ波”、瞑想のときなどに出る“シータ波”の3つの脳波の数値が上昇していた」という結果が報じられました。

番組内では「瞑想状態でありつつ覚醒している。さらに感覚的に癒やされている不思議な状態」という国際医療福祉大学病院の教授の解説もありました。

スカイスパ取材時の2枚目の画像です。

(安全な距離や措置を講じたうえで、取材・撮影をさせていただきました)

 

「瞑想状態でありつつ覚醒している」というのは、心は静まっていながら、脳は活性化している状態なので、アイデアが生まれやすくなると考えられ、煮詰まったときなどに180度違った発想が生まれることもあるのではないでしょうか。

恐らくそういった部分で、IT系やクリエイティブな人たちの感性にマッチしたのだと思います。

サウナ愛好家の提案から生まれた「サウナ」x「コワーキングスペース」

――サウナの効果については分かったのですが、そもそもなぜコワーキングサウナのような発想が生まれたのでしょうか。

日本初のコワーキングサウナとしてリニューアルしたのは2018年の11月です。

先程もお話しましたが、思考の整理やアイデア出しとサウナは相性がいい。特にクリエイティブな職業の人にフィットすることは分かっていましたし、“サウナがビジネスパーソンにつながるコンテンツになり得る”ということは以前から周囲に話していました。

実際、同僚とサウナに入った後に休憩スペースでブレストというか、活発な意見交換をしている人の姿もよく目にしていたので、だったらもっとビジネス利用にもつながる形にできないか、と漠然と考えていました。

 

それが形になったのは、当店をよく利用されるコクヨさんのサウナ部の方の提案がきっかけです。彼らがある日、「コワーキングサウナというアイデアを考えたので提案させてください」と言ってくださって。

私が漠然と考えていたことを、「はたらく空間づくり」のプロであるコクヨさんが、私たちの思いも汲みながら明確な形にしてくれたわけです。

 

――実際にコワーキングサウナにリニューアルしてから、どのような変化がありましたか。

私が想定していた通りコワーキングスペースとして活用される新たな層のお客様が増えました。

タブレットやノートPCを持ち歩く若い方が増え、ワークスペースで仕事をしたり、2~3人でミーティングをする人の姿も徐々に増えていきました。

没入スペースの画像です。

 

コンセプトや施設を変えるのは非常に勇気がいることですが、どこかで変わらなければ新しいお客様を獲得することはできません。一方で、同時に従来からのお客様の満足度も高めないといけません。

現在はお客様ごとの利用形態の違いを考え、コワーキングスペースとリラクゼーションスペースはフロアを分けていて、従来からのお客様と新しいお客様とが同じ施設の中でうまく共存できているのではないかと感じています。

サウナを組み込むことで、ストレスの溜まらないワークスタイルを実現

――スカイスパでは、企業ワーカーの受け皿として”サウナ部会員制度”というものがあるそうですね?詳しく教えてください。

サウナ部を作る企業が増えていることを受けて始めた制度です。サウナ部単位でご登録をいただくと、サウナハットを借りられたり、サウナを楽しむ方にとって嬉しい特典や割引などをご用意しています。

店頭でも公開していますが、日本航空さんや日本経済新聞さん、野村総合研究所さんなど、現在は65の企業や団体にご登録いただいています。ちなみにサウナ部登録企業の第一号は、コワーキングサウナを提案されたコクヨさんです。(笑)

 

――サウナ部の方も含めて、ビジネスパーソンはどのような使い方をされるのでしょうか。

例えば、18時からアウフグース(※)があるとしたら、サウナ好きの方はそのタイミングでサウナに入りたいので、18時までにある程度の結果を出そうと考えます。もし18時までに決まらなければ、サウナでととのった後にまたアイデアを出し合おうという話にもなります。

 

※熱したサウナストーンにアロマ水などをかけて、発生した蒸気をタオルなどであおぎ、利用者の発汗を促進する。

サウナストーブを使ったテーブルの画像です。

(ミーティングスペースのテーブルにはフィンランドから取り寄せた本物のサウナストーブを使用)

 

――面白いですね。サウナに入って“ととのう”とアイデアも出てくるのですね。
先程もお話しましたが、サウナでととのった後というのは、心は静まっていながら、脳は活性化している状態なので、アイデアが生まれやすくなるのいうのが私個人の体感値としてもあります。

なので、仕事のチームでサウナを利用すれば、アイデアが膨らみ易くなるという効果もあるかもしれませんね。

 

また、自社内だけでなく、7社くらいのサウナ好きの方々が偶然に集まって、ミーティングスペースで意見を交換し合っているケースも見られます。サウナ好きという共通項があるので話も合い、異業種交流会のようにビジネスマッチングが生まれるケースもあるようです。

 

他にもコロナ前に多かったサウナ部の方たちの使い方としては、14時頃に集まってミーティングスペースで2時間ほど会議をし、16時頃からサウナに入って18時から親睦会というパターンもありました。

一緒にサウナに入って“ととのう”ことで、自然体でコミュニケーションが取れ、組織の風通しが良くなる。ワーケーションにもつながるような使い方ですね。

 

――サウナというツールが、色々なかたちで“はたらく”に影響を与えることがわかりました。“はたらく”と“サウナ”の関係性は、この先どうなっていくのか。何か提言のようなものがあったら教えてください。

私はサウナの母国・フィンランドの人たちと交友がありますが、コワーキングサウナを立ち上げたとき、「リラックスの場に仕事を持ち込むなんて、君たちはどれだけ働くんだ」と言われたのを覚えています。

しかし、最近では「サウナをリラックスだけでなく、仕事のパフォーマンスを上げるために使うというのもなかなか面白いね」と見直す人もいます。

スカイスパ取材時の6枚目の画像です。

 

新型コロナの感染拡大以降、テレワークをする人が増えていますが、サウナは1つの新しいワークスタイルを提供できるのではないかと思いますね。

例えば、前日宿泊されて朝から“ととのった”状態で仕事を始めたり、あるいは、朝入店して仕事をし、最後にサウナで“ととのって”から満員電車を避けて出社するなど、上手にサウナを組み込むことでストレスの溜まらないワークスタイルが実現できます。

実際に当店をテレワークの拠点とする方もいらっしゃいます。

 

コワーキングサウナを1人で利用されても良いですし、チームなど複数人で利用すれば、発想なりアイデアをすぐにチームで共有したり、それを膨らませたり、形にすることも可能です。

健康とパフォーマンスの向上を実現できれば、従業員満足度の向上にもつながるかもしれません。私は、そう遠くないうちに自社内にサウナを設置する企業も現れるのではないかと見ています。

リラックスしたい人、新しい発想を得たい人、それぞれの目的に合わせて自由に活用でき、かつ健康にも良い。このサウナという文化をこれからも広めていきたいですね。

text: 伊藤秋廣
photo: 石原敦志

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