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INTERVIEW

“面白いことが起こっているオフィスでありたい” ─NEW STANDARDが挑む「オフィスの再定義」─

2020.03.12

企業のビジネス課題を解決するビジネスデザイン&ブランドスタジオ事業、『TABI LABO』を中心としたメディアスタジオ事業、イベントスペース&カフェ「BPM」の運営などといったプロダクトスタジオ事業を展開するNEW STANDARD株式会社。

昨年8月の社名変更に伴い、メディア企業の株式会社TABILABOから、世界中で生まれる新しい基準や価値観で従来の価値を捉え直すNEW STANDARD株式会社として新しいスタートを切り、D2C(Direct to Consumer)など新規事業開発も積極的に推進しています。

 

そんな同社のオフィスは、「社員に『来たい』と思わせる」空間を意識して作られているといいます。リモートワーク、テレワークが普及し、オフィス以外で働くことが当たり前になっている今、オフィスをどのように捉え、どう進化させようと考えているのか、代表取締役の久志尚太郎氏に伺いました。

NEW STANDARD社取材のメイン画像です。
NEW STANDARD社の企業ロゴです。
NEW STANDARD株式会社
代表取締役
久志 尚太郎 氏

中学卒業後に単身渡米し、16歳の時に飛び級で高校を卒業後に起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25カ国を旅する。復職後は25歳でサービスセールス部門のマネージャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2013年より東京に拠点を移し、2014年2月TABILABO(現「NEW STANDARD」)創業。

「オフィス=ワークスペース」は従来の発想であり再定義が必要

――社員が自発的に「行きたい」と思えるオフィス作りとはどのようなものですか?

そもそも、「オフィス=ワークスペース」という認識は従来のもので、オフィスに来ることで得られる体験やメリットは再定義されるべきだと考えています。

「オフィス=働く場所にとどまらず、知的好奇心を刺激する熱量の高い体験ができる場」などとカッコよく言語化することは簡単にできますが、実のところはもっとザックリしたイメージを持っていて、「オフィス=自分が知らない面白いことが起こっている場」として再定義したいし、当社のオフィスはそういう場でありたいと思っています。

NEW STANDARD社のキッチン画像です。

 

オフィスの再定義の例として、当社では創業時から、当番を決め自社のキッチンで皆のランチを作る「自炊ランチ」を行っています。これは当社の企業文化の1つですが、オフィスを再定義する1つの考え方だとも思っています。社員数はすでに80人を超えていますが、社内の横断メンバーで構成されるチームが当番制でメニューや材料、時間配分などを考え、全員分のランチを作る過程で、チームビルディングやPDCAの回し方などを学んでいます。

こういう「従来のオフィスにあったイメージ以外のこと」に積極的に取り組むことが、新しいオフィスを考えるためには必要ですし、当社が掲げる行動指針やカルチャーを体感し、標語である「WE CREATE WHAT WE WANT -欲しいものや未来は自分たちの手で創り上げる-」を実現するための第一歩にもなっています。

 

――「オフィスの再定義」の話が出ましたが、久志社長はどのような再定義をされているのですか?

実際のところ、まだ再定義し切れていないのですが、今はそのヒントを得るために「仕組み×クリエイティビティ」のハイブリッド(掛け合わせ)を、どこまでも突き詰めたいと思っています。

日本は「〇〇はこうあるべき」と“べき論”を押し付けがちですが、多様な視点で物事を見ないと今をうまく捉えられなくなります。とは言え、単に「規定せず、自由にやっていい」では弊害も多いのが現状。自由演技で何をやってもいいという状況は、クリエイティビティを阻害するケースもあります。だからこそ、明確な目標を置きながら「仕組み×クリエイティビティ」の色々な可能性を、ロジックを駆使しながら追求し続けたいと考えています。

 

今の当社のオフィスも、これが正解だとは思っていません。これからも「従来のオフィスの価値をどう捉え直すことができるか」を皆で考え続けたいですね。ただ、「オフィスは面白いことが起こっている場でありたい」という思いに変わりはないので、画一的な考え方はせず、「新しい基準や価値観で捉え直すのって面白いよね」という感覚で臨みたいと思っています。

NEW STANDARD社の取材画像の1枚目です。

 

では、オフィスをどう再定義すればよいのか?それを探る1つの方法が、当社で運営するイベントスペース&カフェ「BPM」での取り組みです。オフィスで「敢えてオフィスっぽくないことを行う」ことで、今までのオフィスでは生み出せなかったようなものが生み出せるのではないか?と。そしてこれが、オフィスの可能性を広げ、再定義のヒントになると同時に、再定義のために必要な要素だと思っています。

 

「BPM」で行われるイベントはどれも、社員がクライアントや社外パートナーとコミュニケーションを取る中で「これ面白い!」と素直に感じたものをイベント化しています。よく「仕事の多くがAIに取って代わられる」などと言われていますが、AIなどテクノロジーがなかなか代替できないのは人間の「五感」。“五感を刺激する体験”をキーワードに新しい兆しをキャッチし、イベント化していくことや、そのイベントに参加してみて新しい感覚を得たりすることは、非常に大切だと感じています。

どこでも働ける時代だからこそ「集まる意味」を考えたい

――リモートワークを推奨する企業が増えている中、なぜ今、貴社では社員に「来たい」と思わせるオフィス作りに注力されているのですか?

テクノロジーの進化により、今やオフィスでなくてもどこでも働ける時代です。しかし、集まることでしか生まれないモノやアイデア、熱量みたいなものは確実に、そしてたくさんあって、特にものづくりの現場においては「集まる意味」は大きいと思っています。どこでも働ける時代だからこそ、自発的に「行きたい」と思えるオフィスを作ろうと考えたんです。

 

では、どんなオフィスなら来たいと思えるのか?面白いものがあったり、面白い体験ができる場があれば、「オフィスに行こうかな」と思えるじゃないですか。だから僕たちは「オフィスで面白いものに出会える、面白い体験ができる」ことを大切にしています。

 

――先ほど「BPM」のお話がありましたが、具体的にどんな方法で、それを実現しているのですか?

当社の執務スペースはオフィスビルの3、4階ですが、2階を「Feel Your Heartbeat」をコンセプトにイベントスペース&カフェ「BPM」(編注:楽曲のテンポを表す単位。音楽用語)として開放しています。

NEW STANDARD社のBPMの画像です。

 

ここで行われるイベントの熱量やグルーヴ感、そして異なる価値観に触れることで、「鼓動が高まるような体感」を作り出したいと考え名付けました。現代社会は視覚情報が多すぎるので、逆に「五感を使って物事を感じる」、「そこにある熱量の高まりを感じる」というのは重要なことだと考えています。

 

この場所は、普段はカフェとして一般に開放しつつ、社員が仕事をしたりミーティングを行ったりする「半パブリック・半ブライベート」な空間です。自社のイベントで使うこともあれば、レンタルスペースとしても貸し出していて、来日アーティストのライブイベントから、企業やブランドのポップアップイベント、ショートフィルムの上映会、さらに映画やCMの撮影などでも使われています。

イベント内容は様々で、ワインの輸入元やワインショップによるナチュラルワインのイベントだったり、書道やタップダンスをジャズと組み合わせたライブだったり、先日はドムドムハンバーガーの1日限りのポップアップストアをオープンしましたが、わずか1時間で120食を完売するほどの大盛況でした。

 

「半パブリック・半ブライベート」という境界線が曖昧な空間を作ることで、普段の仕事では出会えないような人やコンテンツ、価値観、熱量に触れられる。クリエイティビティが刺激される。“自分が予想できること”とか、“好き”、“知っている”といった日常の外からやって来る体験が面白いんです。BPMは「オフィスで面白いものに出会える、面白い体験ができる」きっかけの1つになっています。

「これができたら面白いよね」から新しいビジネスが生まれる

――オフィスの中でこのような一般の方を集めるイベントが開催されるのは珍しいケースですね。

NEW STANDARD社取材の2枚目の画像です。

 

このビルには2017年に移転してきたのですが、当初この場所でイベントやライブを行うことは想定しておらず、オフィスの一部をカフェとして開放していただけでした。ただ、なかなか集客が伸びず、今後どうすればいいか皆で話し合う中で「ここでイベントやライブができたら面白いよね」と出てきたアイデアでした。

オフィスビルの中でライブができるなんて思ってもみませんでしたが、ビルオーナーの理解もあり、実現することができました。クライアントからの注目度も高く、当社と組んで様々なイベントが行われるようになり、今ではここで得た収益で3、4階のオフィス賃料も賄っています。

 

――「こういうことができたら面白い」から新しいビジネスが生まれ、収益にもつながっているのですね。

先ほどもお伝えしましたが、当社には「WE CREATE WHAT WE WANT -欲しいものや未来は自分たちの手で創り上げる-」という標語があります。この「こういうことができたら面白いよね」の発想は、この標語につながるもの。だからこそ、この発想を大切にしていきたいし、これからもこのスペースを使って「面白い」と思えることにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。

“べき論”に捉われず、自分に合った働き方を考える必要がある

――久志社長ご自身は、これからの「働く未来」をどのように捉えていらっしゃいますか?

巷では、「これからは個の時代だ!」、「パラレルワークだ!」などと言われています。もちろんそれを否定はしませんが、それだけではないはず。働き方やキャリアには色んな方法があり、仕事の面白さも多方面にある。“べき論”に捉われず、一人ひとりが自分に合った働き方を見つけることが重要だと思っています。

NEW STANDARD社取材の3枚目の画像です。

 

そして、この「働く」ということも再定義の対象になると捉えています。「仕事で得たスキルや知見」をプライベートで活かす、というのも1つの“働く未来”ではないでしょうか。例えば、仕事で磨いたプレゼンテーションスキルを、大事な人に思いを伝えることに活かす、など。逆に個人が生活の中で得た知見や気付きを仕事に活かせるということもたくさんあると思います。

仕事のベネフィットは仕事やキャリアのみに留まるものではなく、プライベートに好影響を与えるものもたくさんあると捉えると、「働く」の可能性は無限に広がっていくはず。僕自身、柔軟な発想で「働く」の可能性を考え続けたいと思っています。

text: 伊藤理子
photo: 石原敦志

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