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INTERVIEW

【働きがいのある企業ランキング上位】三井不動産が進める「働き方改革」とは?

2019.11.25

三井不動産は以前から社員の働きやすさ向上に注力しており、2016年4月には「働き方企画推進室」を新設し、全社を挙げて働き方改革に取り組んでいます。

働き方改革にいち早く取り組んだ背景、働き方企画推進室を設置した経緯、現在の取り組みとその成果などについて、働き方企画推進室の蛭田和行室長に伺いました。

三井不動産が進める「働き方改革」取材の1枚目の画像です。
三井不動産のロゴです。
三井不動産株式会社
人事部 働き方企画推進室 室長
蛭田 和行 氏

1968年生まれ
1992年4月 三井不動産株式会社入社
その後、人事、住宅事業の用地取得や開発、事業法人のCRE戦略立案等を経験
2013年4月 三井不動産レジデンシャル株式会社横浜支店 副支店長
2017年4月から現職

「限られた時間で効率的に働く」ことの意識付けに注力

――貴社は業界内でもいち早く、働き方改革に取り組んでおられますね。

以前からより働きやすい環境整備には力を入れていましたが、本腰を入れて働き方改革に取り組み始めたのは2015年。2016年は「働き方企画推進室」を設置し、明確な目標を設定して働き方改革に取り組んできました。業界内では比較的早く取り組んだほうと言えるかもしれません。

働き方企画推進室では、真のダイバーシティを目指すための土台づくりとして、「お客様の価値観の多様化に対応する」「あらゆる世代が活躍できる場を作る」の2点を改革の目標に置き、さまざまな施策を考え、実行しています。

 

――「お客様の価値観の多様化に対応する」「あらゆる世代が活躍できる場を作る」の2点を目標として設定した背景を教えてください。

三井不動産が進める「働き方改革」取材の2枚目の画像です。

 

「価値観の多様化への対応」は、社会情勢、経済動向が目まぐるしく変化する中、従来の不動産の発想だけでは対応しきれないほどお客様の価値観が多様化していると実感しているためです。

当社には、成果をとことん追求するタイプの社員が多く、目標を達成するためには時間を惜しまずがむしゃらに働くという雰囲気がありました。「お客様第一主義」という理念のもと、長年かけて醸成された企業風土ではありますが、「似たようなタイプの社員が阿吽の呼吸で仕事を進める」のが常、という状態に。お客様のために一致団結し目標に突き進む力はあるものの、一定の枠から突き抜けられていない、さまざまな価値観を持つ人が切磋琢磨できる土壌になっていない、などといった危機感が経営課題としてありました。

そこで、まずは勤務時間を見直すことで、限られた時間を有効活用したり、自己研鑽や新しい価値を創造したりする時間を捻出してほしいと考えました。

「あらゆる世代が活躍できる場づくり」も、この考えに基づいています。例えば子育て中の社員や介護をしている社員など、働く時間に制約がある人も活躍できるよう、会社の風土や制度、運用体制を整え、皆が働きやすい環境を作るべきだと考えました。もともと女性活躍のための環境整備には力を入れていて、20年以上前から「育児休業からの職場復帰率100%」を実現しているのですが、その範囲を広げ、「社員全員が、時間には限りがあることを理解する」ことを目的としています。

省略化、効率化できるところを徹底的に洗い出す

――では、目標達成のための具体的な推進施策を教えてください。

三井不動産が進める「働き方改革」取材の3枚目の画像です。

ワークスタイリング八重洲①

 

2段階のフェーズを設けており、現在はフェーズ2の途中にあります。
フェーズ1は、2015~17年の3年間。「意識改革」「インフラ整備」「組織単位での業務改革」を3本柱に置き、推進してきました。

最も重視したのは、「意識改革」。「時間には限りがある」ということを強く意識づけるために退社時間を20時に設定、トップからメッセージを継続的に発信してもらい、啓蒙し続けました。

業務効率化を進め「20時まで退社」を促すためには、それを支えるインフラも重要。ノートPCやタブレットの貸与、ビジネスチャットや社内SNSの導入、自社で展開する法人向け多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」の利用促進、事業所内保育所の整備など、時間のロスなく働ける環境整備に注力しました。

さらに、働き方企画推進室が各部署の取り組みをサポート。各部署において業務内容を棚卸して効率化できる部分がないかを考え、働き方のカスタマイズを進めたほか、業務知識は積極的にナレッジ化することでさらなる業務効率化を推進しました。


――「以前は目標を達成するためには時間を惜しまない社員が多かった」とのことですが、20時まで退社を打ち出したことで混乱はありませんでしたか?

いきなり全社的に進めるのではなく、まずは社内でも残業時間の多い部署を4部署ピックアップして、トライアルで施策を実施しました。社内の模範になるべく、どの部署も前向きに取り組んでくれたため、「あの忙しい部署が対応できたのだから、うちの部署もできるはず」という流れを作ることができました。

もちろん、一部の社員からは「業務時間を制限されたら、納得できるまでとことんやり尽すことができないのでは」という不安の声も上がりましたが、「やりたいのは必要なものを削ることではなく、業務を見直して省略化、効率化できるところを削ることだ」と繰り返し伝え、他部署での成功事例などを共有しながら効率化のためのサポートを行い、現場に浸透させていきました。

生産性向上に加え、「組織知の強化」「相互理解」を推進

――2018年から始まったフェーズ2では、どんな取り組みを行っているのですか?

三井不動産が進める「働き方改革」取材の4枚目の画像です。

ワークスタイリング八重洲②

 

フェーズ1では、時間への意識付けを行うために20時退社を徹底し、おおむね達成することができましたが、フェーズ2では「自ら考え、自走する」ステージであると捉え、20時退社という一律の目標はなくしました。

現在の定量目標は、残業時間を年間480時間以内に収めること(三井不動産社の所定時間換算)。均すと概ね月40時間、週10時間以内に収めようという目標を打ち出しています。
定性面では、改めて「生産性向上」を徹底するとともに、「組織知の強化」を打ち出しています。社員一人ひとりが持っているナレッジの共有を積極化することで、より効率的・効果的に業務を進め、組織力をも強化するというのが目的です。

加えて「相互理解」も掲げています。社内にはさまざまな課題や時間的制約を抱えている人がいることを理解し、助け合ったり補完し合ったりする風土の醸成に努めています。

例えば、当社は「共働き」の社員が多く、35歳以下の総合職でみると、10年前は共働き比率25%だったものが、5年前には約50%、そして直近では75%にまで上昇しています。20代に限定すると8割を超えていると思われ、育児による時間的な制約を持つ社員は男女問わず増えていると考えられます。一方で、親の介護問題に直面している40~50代の社員も増えています。

育児、介護は代表的な例であり、それ以外のどんな課題や時間的制約を抱えていても、会社を辞めたり休んだりせずに済むよう制度面からサポートしていますが、社員全員が「時間に制限があるのは当たり前」ということを理解して、相互理解を深めながら働くことが大切だと考えています。

これらの定性目標3つについては、新たに人事考課に加え、より一層の定着を図っていく方針です。

「働き方改革は自分たちのためになるもの」と理解してもらうことが何より重要

――働き方改革を進めるうえで、大事にしている「軸」はありますか?

三井不動産が進める「働き方改革」取材の5枚目の画像です。

 

働き方改革は上から無理に押し付けるものではなく、社員一人ひとりが「働き方改革は自分たちのためになるもの」と理解したうえで、納得の上で取り組むことが何より大事だと思っています。

仕事で成果を上げるためには、心身の健康が大切ですし、家族との時間も大切、そして人間としての幅を広げるため自身の多様性を育てる時間も大切。働き方改革の本当の目的はここにあるのだと、社員全員に理解してもらうことを最優先に考えています。

 

――「働き方企画推進室」として今後、新たに挑戦したいことはありますか?

すでに一部移転が始まっていますが、今年度中に日本橋室町三井タワーに本社を移転する予定です。今までは日本橋や銀座に拠点が点在していましたが、来年度からは新本社に集約されるため、社内外のコミュニケーションがより一層取りやすくなるような仕組みを考えていきたいと思っています。

個人にとっての「最適な働き方」は、時代や環境によって変化すると思われます。個人にとって最適なもの、会社、組織にとって最適なものとの「結節点」も今後変化していくはず。働き方企画推進室としても1つの考え方に固執せず、時代の流れを読みながら臨機応変に対応していく方針です。

一方で、会社の文化や業務の特性などを踏まえ、「当社らしい働き方」は大切にしていきたいと考えています。

現状、働く場所の自由度はかなり高まっていて、「ワークスタイリング」などで働いたり、そこから会議に参加したりしていますが、「ワークタイム」は10~16時のコアタイムを堅持しています。働き方改革を進める中で「コアタイムを撤廃しワークタイムの自由度も上げてはどうか」との声も上がりましたが、デベロッパーの仕事は一人でできるものはなく、社内外での連携・協働が欠かせないため、コミュニケーションの観点から「皆が一堂に会さずとも、同じ時間に働く」ことを重視しています。

三井不動産が進める「働き方改革」取材の6枚目の画像です。

ワークスタイリング八重洲③
(休息に使えるリフレッシュルームも)

――ある企業リサーチサイトの調査によると、「社員が選ぶ『働きがいのある会社』」で三井不動産がトップ3にランクインしました。この結果をどのように捉えていらっしゃいますか?

素直に嬉しいですね。当社の社員は皆、意識高く仕事に取り組んでくれていますが、それを後押しする環境が整いつつあるのかなと感じています。

以前から、社員一人ひとりが自身の考えを積極的に発信し、より良い方向に改善しようとする企業風土はあるので、働き方改革によりそれがうまく回転するようになり、いい相乗効果が生まれているのではないかと考えています。

当社では、直接雇用している社員に対して人事部が年1回、必ず面談の機会を設けています。現場の声を間接的に聞くだけでなく、直接聞くことで、社員一人ひとりが現状どんな課題を抱えているかを把握し、会社としてどんなサポートができるのかを考え、より良い環境づくりに活かしています。

これからも、社員の声に積極的に耳を傾け、次の施策に取り入れていきたいと考えています。その結果、働きやすさ、働き甲斐を感じてイキイキと働いてくれる社員がどんどん増えれば嬉しいですね。

text: 伊藤理子
photo: 石原敦志

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