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日本との違いとは?ドイツで進む「女性活躍」社会実現に向けた施策

2020.12.15

世界のはたらく⑨のメインビジュアルです。

 

「女性の社会進出」という点において、ドイツは欧米先進国のなかで遅れをとっていると言われています。

下記のようなデータからも、男女平等な社会の実現について、ドイツは欧米の他国に先行されていると言えるでしょう。

 

①合計特殊出生率
フランス:1.92
スウェーデン:1.85
米国:1.82
英国:1.79
ドイツ:1.59
日本:1.44
(2016年・内閣府レポート)

 

②企業における女性役員の比率
フランス:34.5%
スウェーデン:38.6%
米国:40.7%
英国:36.3%
ドイツ:29.4%
日本:14.8%

 

③パートタイム勤務をしている人の比率(男女別)
フランス:女性48.62% 男性30.39%
スウェーデン:女性17.50% 男性10.04%
米国:女性27.99% 男性16.46%
英国:女性 37.00% 男性 11.50%
ドイツ:女性57.47% 男性 26.29%
日本:女性36.70% 男性 11.50%

 

(②・③ 2020年・世界経済フォーラムレポート)

 

日本とドイツは、産前・産後の休暇日数や育児給付金の金額は同程度、また家事をメインで担当するのは女性という風潮が強いところも似ています。

ところが、このような類似点があるにも関わらず、各国の男女格差を分析した世界経済フォーラム(World Economic Forum)が発表した2020年のレポートによれば、経済状況、教育、健康、政治参加を基にしたジェンダーギャップ指数ランキングで、ドイツは14位、日本は121位という結果でした。

 

シリーズ「欧米社会における女性の働き方」の第2回は、制度や慣習に類似点の多い日本とドイツが「女性の社会進出」という面で相違する理由を紹介します。

育児休暇制度の比較

産前・産後休暇

ドイツの産前・産後の休暇日数は日本と同じです(産前:6週間、産後:8週間)。

しかし、日本では休業前の平均賃金の3分の2が健康保険から休業手当として給付されるのに対し、ドイツでは法定医療保険と雇用主からの付加手当によって賃金の100%が保障されています。

育児休暇

ドイツでは、2007年にアンゲラ・メルケル(Angela Dorothea Merkel)首相によって「両親手当」(Elterngeld)が導入され、育児休業前の賃金の67%が支給されるようになりました。

同年には「パートナー月」も導入され、これは一方の親のみが育児休暇を取得した場合は手当受給期間が12か月であるのに対し、両親とも休業をして育児にあたった場合は手当受給期間が2か月延長されるというものです。

ここまでは、日本の制度とあまり差異はありません。日本の「パパママ育休プラス」は「パートナー月」と類似しています。

 

しかし、2015年、メルケル首相は新たに「両親手当プラス」(Elterngeld Plus)を導入しました。

従来の「両親手当」では、短時間勤務と併用して育児休暇手当を受給した場合、受給期間は最長14か月で、短時間勤務で得た収入の分だけ両親手当の受給額は減額されていました。

ところが、「両親手当プラス」では、短時間勤務をした場合も、手当の半額を上限として育児休暇手当を最長28か月間受給することが可能になりました。

これによって、両親が早期に職場復帰するインセンティブを高めることに成功したのです。

 

また、日本では子どもが2歳になるまで育児休暇の取得延期ができるのに対し、ドイツは子どもが3歳になるまで育児休暇の取得延期が可能です。

保育状況の比較

日本でも2016年に内閣府が「企業主導型保育事業」という企業向けの助成制度を開始しましたが、ドイツでは2008年には雇用主が企業保育を実施した場合、保育運営費の50%の助成金を給付する「企業内保育助成プログラム」が導入されていました。

また同年には、3歳までの児童を対象とした保育施設を増設することを目的に、「児童支援法」も導入されました。

これは、保育施設の建設等の費用の3分の1までを連邦政府が補助する制度です。

 

さらに、日本では保育が保障される最低年齢の規定がありませんが、ドイツでは2013年より「1歳以上の全ての子どもの保育を受ける権利」が保障されるようになりました。

 

これらの政府の施策を受けて、企業側も様々な取り組みを行っており、例えばオフィスに隣接した保育所で子どもの預かりを実施し、その保育費用の50%を企業が負担したり、企業によっては市が提供するベビーシッターの仲介なども行っています。

労働時間の比較

現在では、「労働先進国」とも呼ばれているドイツですが、「ワーク・ライフ・バランス」が重要視されるようになったのは、欧州の他国同様に、少子高齢化問題に対する強い懸念があったためです。

 

効率良く働き、高い生産性を維持することが重視され、現在では法律により1日の労働時間は原則8時間(最長10時間/日まで。残業時間分は後日相殺する)が義務付けられており、これは管理職も同様です。

また、ドイツの週平均労働時間は40時間と、EUで規定されている週労働時間の上限48時間を大きく下回っています。

 

さらに、2019年から施行された新たな労働契約法において、従業員数45人超の企業では在職期間が 6か月を超えた従業員に一定期間(1年~5年以内)労働時間を短縮できる権利が付与され、期間満了後は再び元の労働時間に復帰することが保証されました。

この新たな権利は、育児や介護などの理由に限らず、誰でも理由を問わず請求できます。

また、従業員が短時間勤務からフルタイム勤務に復帰することを企業が拒否する場合は、従業員に対する説明・立証責任を企業が負うことになったため、短時間労働者がフルタイムへ復帰しやすくなりました。

 

その他、ドイツではフレックスタイム制度が主流であり、新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって以降は、急速に在宅勤務制度も進みました。

こういった働き方のフレキシブルさも、「ファミリー・フレンドリー」な環境を整え、働く女性をサポートしていると考えられます。

女性管理職を増やすための法整備

女性管理職を増やすため、ドイツは2015年に「女性クオータ法(Gesetz zur Frauenquote)」を制定しました。

この法律では、下記のポイントが注目されました。

大企業監査役会の女性比率を30%以上に

監査役会は企業の経営に関して大きな権限を有していますが、この法律によって上場企業大手108社で新たに監査役の委員を選出する場合、女性比率を最低30%とすることが義務付けられました。

もし女性が要求通り選出されなかった場合は、空席を維持しなくてはなりません。

大企業の役員・管理職の女性比率

この法律では、「上場企業か、従業員500人超の共同決定義務のある約3,500社」に対し、役員や管理職における女性比率を高めるための目標値や具体的な施策を自主的に設定するよう期限付きで求めています。

ここでも、役員・管理職の女性比率は30%以上を目標とし、達成期限は5年以内となっています。

 

この他に、公的部門には「連邦平等法」があり、「女性比率が50%未満の部門における採用や昇進の際、同一の適性、能力、専門的業績がある場合には、女性を優先的に考慮しなければならない」と定められているほか、「連邦委員会構成法」では、委員の選出に際し、できる限り男女の比率を均等にすることが定められています。

日本がドイツから学べること

ドイツは戦後40年間にわたり東西に分裂していたために西側と東側で女性の働く環境が少し異なるということもあり、女性の社会進出の点で、欧米先進国のなかで遅れをとっていると言われています。

 

しかし、2005年に旧東ドイツ出身のメルケル首相が就任して以来、育児休暇制度の充実や保育状況の改善、さらに働き方のフレキシブルさや女性管理職を増やすための法整備など、女性の社会進出を促すための施策が次々と展開され、その効果も現れています。

 

“真面目で勤勉”、“組織や集団を重んじる”、“製造業が産業の主力”、そして“子育てや家庭の仕事は主に女性が担当する”など、国民性や慣習に日本と共通点の多いドイツだからこそ、近年の施策から学べることは少なくないのではないでしょうか。

 

▼欧米社会における女性の働き方

②日本との違いとは?ドイツで進む「女性活躍」社会実現に向けた施策

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