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北欧とフランスの「女性活躍」事情─欧州に学ぶ、子育てとキャリア

2020.11.30

世界のはたらく⑧のメインビジュアルです。

 

国際労働機関(ILO)が2018年に発表したレポートによると、世界における女性管理職の割合は27%であり、その中で日本は12%と主要7か国(G7)で最下位でした。

また独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)が同年に発表した調査によれば、日本の男女間賃金格差(男性=100)は73%であり、ヨーロッパ先進国の84%~90%と比較すると10%近く低い水準となっています。

少子高齢化問題が深刻化している日本において、女性の社会進出は非常に重要な課題と言えます。

 

今回は、少子化対策と女性の社会進出に成功したヨーロッパ先進国の事例を紹介します。

男性の育児休暇取得は常識─北欧の女性たちの活躍

世界経済フォーラムが2020年1月に発表したレポートによると、経済状況、教育、健康、政治参加をもとにしたジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、世界1位となったのは11年連続でアイスランドでした。

続いて、2位ノルウェー、3位フィンランド、4位スウェーデンと北欧諸国が上位を占めており、上位3か国は首相も女性です。

それぞれの国の女性が占める企業の役員比率、国会議員比率、そして男性の育児休暇取得率(JILPT調べによる)は下記のとおりです。

 

▼企業における女性役員の比率
アイスランド:41.5%
ノルウェー:35.6%
フィンランド:31.8%
スウェーデン:38.6%
(日本:14.8%)

 

▼女性国会議員の比率
アイスランド:38.1%
ノルウェー:40.8%
フィンランド:47.0%
スウェーデン:47.3%
(日本:10.1%)

 

▼男性の育児休暇取得率
アイスランド:85%
ノルウェー:90%
フィンランド:80%
スウェーデン:88.3%
(日本:7.48% 2019年度厚生労働省)

 

このように北欧で女性の社会進出が進んでいることには、いくつかの理由があります。

 

まず、北欧諸国では「パパ・クォータ制度」(Papa Quota)を導入しています。

これは育児休暇の一定期間を父親に割り当てるもので、1993年にノルウェーで始まりました。

ノルウェーでは1977年から男性も育児休暇を取れるようになっていましたが、取得率は低いものでした。
しかし、この「パパ・クォータ制度」では、父親の育児休暇期間を母親に譲ることはできず、取得しない場合はその分権利を手放すことになります。

このため、制度導入をきっかけに父親の育児休暇取得率が急増し、北欧の他国にも広まっていったのです。

 

アイスランドでは育児休暇は最大10か月ですが、このうち4か月を母親、4か月を父親、そして残りの2か月は両親でシェアをすることが可能です。

さらに2021年からは全体の育児休暇が12か月に増えます。

育児休暇手当も充実しており、休暇取得前の給与の80%が育児休暇中に支給されますが、これもまた、育児休暇を取得しないとその支給を受け取る権利がなくなってしまいます。

 

また、北欧では育児休暇を取るタイミングもフレキシブルです。

ノルウェーでは、子どもが生まれてから3歳になるまでの間に好きな時に休暇を取得することが可能です。

スウェーデンも同じですが、有給でなければ子どもが8歳になるまで育児休暇を取得することができ、新たに子どもが生まれた場合は育児休暇が増える仕組みです。

 

保育園も充実しており、フィンランドでは母親の就業の有無と関係なく、すべての子どもに保育施設を用意することが自治体の義務になっています。

スウェーデンは、1990年に保育所と幼稚園が統合され「就学前学校」となり、1歳を生涯学習のスタートとしています。

保育料は1日3時間まで無償で、残り時間は親の収入によって変わりますが、実際には児童手当でほとんどが賄えます。

入園申し込みから3~4か月以内に園側が席を用意することが義務となっており、現在、待機児童はほぼ0となっています。

女性の就業率80% ─フランスの女性たちの活躍

JILPTが2018年に発表した「データブック国際労働比較」によると、25歳~54歳までのフランス人女性の就業率は80%を超え、合計特殊出生率は1.95と先進国でトップにランキングされています。
(日本の女性就業率は、25歳〜29歳が唯一の80%超で、30代は72%代に下がり、40歳から54歳は77%に上昇するというM字曲線が特徴。合計特殊出生率は1.70)

 

出産後も職場復帰が当然と言われるフランスでは、結婚をしなくても子どもを産む女性への手当が厚いことが特徴で、出生に占める婚外子の割合は59.7%と高くなっています。
(アイスランド:70%、ノルウェー:56%、スウェーデン:54.9%、ドイツ:35.5%、日本:2.3%)

 

フランスに限らず、ヨーロッパ先進国では婚姻や離婚に関する法律的な条件が厳しいため、結婚をしないカップルも少なくなく、近年では、Pacs(Pacte civil de solidarite=民事連帯契約)というパートナーシップ制度を利用する若者も増えています。

これは、社会保障や税法上で婚姻と同等の権利を持てるパートナー契約で、裁判所が公証すると政府から「世帯」として認められます。Pacsを経て結婚するカップルもいます。

 

フランスの母親の産前・産後休暇は16週間で、このうち少なくとも8週間の休暇取得が義務付けられています。

父親にも産前・産後休暇が11日間あり、どちらも出産予定日までに10か月以上健康保険に加入していれば、休暇中も給与とほぼ同額の手当が支給されます。

 

育児休暇は3年まで取得が可能ですが、こちらは無給になるため、ほとんどの人が産休後に職場へ復帰します。

ただし、フランスの法定労働時間は週35時間であり、残業もほとんどありません。

また短時間勤務を選択できたり、フレックスタイム制度もあるため、子どもがいてもワークライフバランスが取りやすい環境が整備されています。

 

「女性に多様な選択権を与える」ことを政策として掲げてきたフランスは、上記のような産前・産後休暇に加え、在宅保育サービスや保育ママ※を利用する家庭への給付金の支給、子どもの数に応じた減税措置、さらに保育施設の拡充などを行ってきました。

※assistante maternelle。保育士が自宅もしくは施設で、数人の子どもを保育する制度

 

また、子どもの権利を重要視するフランスでは、いかなる子どもにも同等の権利が与えられます。

そのため、子どもの教育に関する制度や手当も充実しており、公立であれば授業料は幼稚園から高校までは無料で、さらに児童手当も18歳になるまで支給されます。

0歳~3歳までの預け先も選択肢が豊富で、収入によって異なるものの手厚い補助金も給付されるため、保育料に給料が消えるということもありません。

日本の育児支援と働く女性

日本では、産前・産後の休暇は14週間で、出産育児一時金や出産手当金が支給されるほか、厚生年金や健康保険の支払いが免除になります。

育児休暇は原則子どもが1歳になるまで取得でき、最初の180日間は育児休暇前の給与の67%が、それ以降は50%が育児休業給付金として支給され、この間は社会保険料も免除されます。これは、男性が育児休暇を取る場合も同じです。

 

2010年からは「パパ・ママ育休プラス制度」も導入されました。

共働きの両親が分担して育児休暇を取得した場合、育児休暇が1年2か月まで延長できるというもので、両親が同時に育児休暇を取得することもでき、取得タイミングも連続して取得しなくても良いというフレキシブルな制度になっています。

 

こういった制度は、諸外国と比べても決して劣るものでありませんが、それでも日本では男性の育児参加が進まず、女性の社会進出が遅れているのが現状です。

働き方のフレキシブルさ、行政の政策や支援、保育施設の充実など、欧州先進国から学べるところは色々とありますが、日本でも女性の社会進出を進めていくためには、子育てをしながら男女ともに平等に育児をし、仕事ができるような文化を社会全体で作っていく必要もあると言えるでしょう。

 

▼欧米社会における女性の働き方

①北欧とフランスの「女性活躍」事情─欧州に学ぶ、子育てとキャリア

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