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欧米事例から学ぶ、DX推進のためのロードマップ

2021.02.24

欧米事例から学ぶ、DX推進のためのロードマップ

昨今、様々なメディアにおいて、DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)というキーワードをよく目にするようになりました。経済産業省は、2018年に「DXを推進するためのガイドライン」を発表し、DXの定義を次のように述べています。


“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
(参照:経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン」』)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、ビジネスを取り巻く環境は急速かつ大きく変化しています。日本でも以前から多くの企業がDXの推進に力を入れようと動いているものの、実際には具体的な取り組み方がよく分からないという声も多く、様々な課題に直面しているようです。

今回は、新型コロナウイルス感染症拡大以前からDXを進めてきた欧米企業の事例から、DXを成功させるためのポイントを紹介します。

DXの意義とメリット、課題点などを紹介し、さらに実現までの手順とポイントを紹介しています。「DXとは?中小企業がDXを推進するメリットと課題、ポイントを解説」をご参照ください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状と課題

世界におけるDXの現状と阻害要因

2020年に、デル・テクノロジーズが世界各国の4,300人のビジネスリーダーを対象に行ったアンケートによると、回答者の3分の1が不確かで変化が激しい昨今の環境下において、2、3年後に自社が生き残れるかどうかを懸念していることがわかりました。このデル・テクノロジーズの調査では、94%が「DXを阻む障壁に直面している」とも回答しています。

米テクノロジーメディア・調査会社 International Data Group(IDG)社が、DXを推進中又は計画中である従業員数1,500名以上の米企業を対象として実施した調査によると、DXにおける主な阻害要因として、「データのプライバシーとセキュリティの問題」、「予算およびリソースの不足」の他に、「組織幹部による支援の欠如」も挙げられています。

組織幹部による支援の欠如

(参照:IDG『The Challenge of Change:IT in Transition』)

DXを推進するには、経営陣の理解と協力、そして異なる部門間での連携が必要となってきます。しかし、実際は部門間での協働ができる体制になっていないケースも多く、経営層によるDXへの理解と支援は、企業がDXを進める上で非常に重要な要素の一つです。

米企業におけるDX戦略の失敗と教訓

DXの推進には経営層の支援と理解が非常に重要なポイントの一つです。しかし、DX先進国であるアメリカの大手企業の中には、最高経営責任者(CEO)を中心に組織のトップがDXの取り組みをリードし、多額の費用やリソースを費やしたにも関わらず、成果を上げられなかったケースがあります。ここでは、実際にあった事例を紹介します。

①General Electric社(GE社)の事例
GE社は、2011年に「Industry Internet」戦略を打ち出し、産業向けIoTプラットフォームの構築に多額の投資をしました。その後、2015年にはデジタル戦略をリードする事業部門「GE Digital」を立ち上げ、1,500名以上を新規採用、2020年までに同社を世界トップレベルのソフトウェア企業にする目標を掲げました。

しかし、なかなか成果を得ることができず株価が低迷を続けたため、「GE Digital」は長期的なイノベーションではなく、短期的な業績向上にフォーカスをせざるを得なくなってしまいます。2017年に当時の経営陣は退任を余儀なくされました。大規模なDXに取り組む最中、業績面の問題によりトランスフォーメーション半ばで経営陣が退任するケースは他にもたくさん見られます。

②Procter & Gamble(P&G)社の事例
P&G社は、2011年に「地球上で最もデジタルな企業」になるための DX イニシアチブを提唱。同社のあらゆる事業部門にテクノロジーを適用することで「消費者向け商品・サービスを改善する」という目標が掲げられ、莫大な投資が行われました。

しかし、漠然とした目標が仇となりました。リーマンショック後の世界経済危機の不況下において具体的な達成目標がなかったため、投資に対して得られた効果は僅かでした。さらには、一部で競争力が低下するという結果に終わってしまいました。

この2社は、市場競争や経済情勢といった外的要因を十分に考慮して、具体的なDX戦略を策定していなかったことが失敗の要因と考えられています。DXによって成果を上げるには、対象を絞り、明確な目標のもとにデジタル投資を行うことが大切ということを示した事例と言えます。

DX推進の鍵

経済産業省が2019年に発表した「DX 推進指標とそのガイダンス」によると、現在は日本でも多くの経営者がDXの必要性を認識し、デジタル部門設置などの取り組みを行っているものの、ビジネス変革にはつながっていないというのが現状のようです。
そこで、米大手コンサルティング会社McKinsey & Company社が、様々な業界の企業に対する調査に基づいて作成した、DXを成功させるためのポイントをご紹介します。
(参照:McKinsey & Company『Five moves to make during a digital transformation』)

DXに成功する組織の特徴

①Ruthlessly focus on a clear set of objectives(明確に設定された目標に徹底的にフォーカスする)
DXに成功する企業は、多くの異なる課題に取り組むのではなく、例えば、「生産性の向上」「カスタマージャーニーの再形成」など、実際にビジネスの結果につながるような2、3個の具体的なデジタル目標にフォーカスしています。

②Be bold when setting the scope(大胆にスコープを設定する)
DXを推進するには、異なる部門間での連携が必要となってきます。会社全体が一丸となって特定の目標に向かって集中して取り組むことが重要であるため、特定の部門に限定してDXの投資を行うのではなく、複数部門に渡って幅広く行う必要があります。

③Create an adaptive design(フレキシブルで軌道修正可能な戦略を立てる)
デジタルがもたらす速い変化のスピードに対応するには、DXの戦略自体もフレキシブルでなくてはなりません。最初に設定した複数年にわたる投資要件や目標も随時見直していく必要があります。最低でも月に1回のペースで調整をしていくことが成功へつながる大切な要素です。

④Adopt agile execution approaches and mind-sets(アジャイルな実施体制と思考を持つ)
DXの実施体制においてもフレキシブルさは求められます。DXで成果を出している企業の多くはトランスフォーメーションが行われている間、リスクへの挑戦やイノベーション、部門間の積極的なコラボレーションを推奨しています。中には、従業員の積極性を促すために、評価や賞与制度に取り入れている企業もあります。また、アジャイルな体制を作るためには、優れたデジタル人材が必要不可欠になります。成功している多くの企業が新たに優秀なデジタル人材を雇用すると同時に、デジタル人材の育成にも力を入れています。

⑤Make leadership and accountability crystal clear(リーダーシップと説明責任を明確にする)
企業が推進するDXに向けた取り組みは、リソースの優先順位や組織におけるビジネス全体の方向性に大きな影響を及ぼします。リーダーがどのようにDXの戦略とその実行を先導していくかによって成功が大きく左右されます。経営層はもちろん、特定の取り組みを実行するリーダーも積極的にDXの取り組みに関与していく必要があります。DXに成功している企業の経営層は、定期的にDXの進捗状況を社内外に説明する機会を設けています。また、各取り組みについて誰が責任を負っているのかを明確にしています。

DXのリーダー:ドイツの事例

ドイツは2011年に「Industry 4.0(インダストリー4.0)」を策定しました。「4.0」は「第4次産業革命」のことで、官民一体となって「モノとサービスのインターネット(Internet of Things and Services)」を製造プロセスに応用することで、生産プロセスをより円滑にし、既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築」を目的とする構想です。製造業の多いドイツで政府と企業が協力してDXを推進することにより、製造プロセスのネットワーク化や、マスカスタマイゼーションの実現を目指しています。

ドイツの大手自動車メーカーであるフォルクスワーゲン社では、ソフトウェア部門を自社内に設立しました。そして2025年までに、これまで外注していた車両制御や自動運転などのソフトウェア開発を60%内製化する戦略を立てています。また、デジタル化による繰り返し作業の自動化を図っており、定年退職者の補充をしないなどの人員削減を行うことも発表しています。一方で、電気自動車(EV)へのシフトを強化するための技術開発職の人員を約2,000人増やし、2019年から2023年にかけてDXの推進に190億ユーロ(約2兆3,990億円)を追加投資することも発表しています。

同社ではこのDXを進めるにあたり、同じソフトウェアプラットフォームを利用していないことによるシステムの複雑さが課題となっています。このため、将来的には車で使用されるソフトウェアをすべて同じOS、クラウドシステムで利用することを目標に掲げており、こうったDXの推進により、2023年から持続して59億ユーロ(約7,450億円)の利益拡大を見込んでいます。

日本におけるDX事例は、「中小企業におけるDXの成功事例5選【従業員規模別に解説】」をご参照ください。

日本におけるDXの展望

日本でも、多くの企業がDXを加速させています。しかしながら、株式会社電通デジタルが行った調査によると、回答した企業の約50%が「DXの成果を感じている」と答えているものの、「非常に成果が出ている」と答えたのはその内わずか3%であり、成果が限定的であると感じている企業が多いようです。DX成功のポイントは、DX先進国である欧米諸国の事例からヒントが得られるのではないでしょうか。

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