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公的サポートは日本の方が充実?それでも米・英で「女性活躍」が進むワケ

2020.12.21

世界のはたらく10のメインビジュアルです。

北欧やフランスと比べると、米国と英国では女性が仕事と家事を両立させるための法制度が充実しているとは言えません。

しかし、両国とも先進諸国の中で高い出生率を維持しています。

さらに、米国での女性の就業率は、日本よりも2%ほど低いにも関わらず、女性の管理職の割合は日本に比べて4倍、世界でも最も高い割合となっています。

このような背景には、民間の保育サービスが充実していることや、男性が家事や育児に積極的な文化も影響しているようです。

 

シリーズ「欧米社会における女性の働き方」の最終回は、米国と英国の公的な施策と、企業や民間機関によるサポートを紹介します。

米・英・日 – 女性活躍の現状を比較

米国・英国・日本における「女性の社会進出」に関する現状は、下記の通りです。

 

企業における女性役員の比率
米国:40.7%
英国:36.3%
日本:14.8%

 

女性国会議員の比率
米国:23.6%
英国:32.0%
日本:10.1%

 

出生率
米国:1.89
英国:1.87
日本:1.53

 

男女の家事の分担(6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連時間/1日あたり)
米国:妻 5:40時間 / 夫 3:10時間
英国:妻 6:09時間 / 夫 2:46時間
日本:妻 7:34時間 / 夫 1:23時間

 

(資料:World Economic Forum「Global Gender Gap Report 2020」、 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「2018 国際労働比較」、内閣府「平成27年度少子化社会に関する国際意識調査」)

 

上記のデータから、米国と英国は日本よりも女性活躍が進んでおり、かつ、先進国の中でも高い出生率を維持していることがわかります。また、アメリカでは夫婦で家事・育児にあたる時間の差も小さく、女性が家事・育児にかける時間そのものが日本より2時間ほど少なくなっています。

米国の取り組み

産休・育休制度

米国の育児に関する支援政策は、欧州先進国と比べると積極的なものとは言えません。

理由の1つとして、米国は法律による労働条件規制が少ないことが挙げられ、連邦政府レベルでは年次有給休暇の付与を義務化していません。そのような中、連邦政府では1993年に「家族・医療休暇法(FMLA=Family and Medical Leave Act)」が成立しました。

FMLAは、被用者に対し12ヶ月に合計12週間の枠内で育児休暇、介護休暇、病気休暇、出産休暇を取得する権利を与えるものです。しかし、これはいずれの場合も無給となるため、経済的な保証はありません。

 

州レベルでは、もう少し進んだ制度を取り入れているところもあり、例えば、労働者への配慮が手厚いカリフォルニア州では2002年に全米初の「有給家族休暇(PFL)プログラム」が創設され、12か月に6週間を上限として従前賃金の55%相当額の給付金を受けることができるようになりました。

しかしながら、連邦労働省が2013年に発表した「Family and Medical Leave in 2012: Final Report(家庭及び医療関連の休職に関するレポート2012年版)」によると、調査対象のうちFMLA適用企業は1割、有資格者は6割に留まっており、適用企業は大企業に偏っていました。また、休暇取得期間の平均は34.5日で、10日以下が4割強を占めているという結果でした。

米国では子どもを産んだ後、無収入で3か月休暇を取ってから復帰する親がほとんどで、医療費が高いために出産も普通分娩なら1泊2日というのが一般的です。

 

このように、出産・育児に関する制度においては、日本の方が整っていると言えます。

しかし、米国の方が女性活躍が進んでいる理由は、働き方、保育サービス、文化的要素が大いに関係しているようです。

ワークライフバランス

米国の法定労働時間は週40時間です。アメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS=Bureau of Labor Statistics)のデータによると、2019年の米国人の1日の平均労働時間は約8時間、フルタイムの正社員は約8.5時間でした。

2014年のギャロップ社の調査では週の平均労働時間は46.7時間だったので、ワークライフバランスが改善されていることが伺えます。

 

さらに、子育て世帯に限らず米国ではもともと自由な働き方が浸透しているため、「保育園への送迎のために出退勤時間をずらす」、「職場近くの保育園に授乳に行くため職場を抜け出す」、「1日8時間のところを10時間働いて週4日勤務にする」、「在宅勤務をする」といったことが可能です。

女性管理職

男女の雇用機会の均等に限らず、移民の多い米国では雇用機会均等法(EEO=Equal Employment Opportunity)が基礎となっており、これは厳しく取り締まられています。

しかし、産休・育休制度同様、米国は伝統的に法を通じた労働への介入に消極的なため、欧州先進国のように企業の役員や管理職の女性比率をある一定数確保することを求めるような法制度はありません。

 

一方、州レベルでは様々な取り組みを行っているところもあり、カリフォルニア州は、2018年9月に全米で初めて上場企業に対し女性役員の配置を義務付ける法律を制定しました。違反した企業に罰則を科すほか、どの企業が女性役員を配置しているかといった情報をオンライン上で公開しています。

さらに同州では、人種や性別による賃金格差を取り除く目的で、2018年に雇用の際に候補者の過去の給与額を聞いてはならないという法律も制定しました。

 

政治や行政面では、連邦政府は1978年に公務員制度改革法を制定し、連邦政府職員の女性の割合を米国全土の労働力人口における女性の割合と同じ水準とすることを目標としました。

さらに、1980年代に民主党が男女の代表者が半数ずつとなることを党憲章で保障し、共和党もこれに続いて党大会における女性の割合拡大を推進し始めました。

保育サービス

米国には、基本的に12歳以下の子どもを保護者の監督なしで放置してはいけないという法律があり、子どもだけでの留守番も禁止事項に含まれます。そのため、「ナニー(Nanny)」と呼ばれる保育のプロや学生アルバイトに子どもの世話を依頼することが一般的です。

また、デイケアやナーサリー(Nursery)と呼ばれる保育施設も充実し、日本のような「保育所不足」はありませんが、世帯収入による保育料の調整や自治体の補助などがないため、費用は日本よりも高くなります。

なお小学生には学童保育がありますが、保護者による送迎が必須となっています。

英国の取り組み

産休・育休制度

英国は、家庭での女性の役割が重視されてきたため、欧州の他の先進国に比べると育児に関する政策は遅れていましたが、女性の就労拡大が進むにつれ、その時々の課題に対応する形で育児休業関連の法整備が進みました。

 

産前産後の休暇は、最大で52週間取得が可能で、このうち産後の2週間の休暇が義務となっています。

初めの6週間は従前の給与の90%が支払われますが、その後は金額が減っていき、39週以降は無給となります。このため、産後26週で仕事に復帰する女性が多いようです。

 

父親は、産後8週目までに1週間または2週間の休暇を取ることができ、その間は従前の給与の60%が保証されています。2015年には「共有両親休暇」(Shared Parental Leave)という制度が導入され、出産休暇52週のうち産後に取得する分については、両親間で共有・分割して取得することが可能になっています。

 

米国と比較をすると充実していると言えますが、日本や北欧と比べると産後の母親にとっては少し厳しい制度と言えます。

なお、英国は国営医療制度のナショナルヘルスサービス(NHS)を利用すると医療費が無料のため、妊娠検査や出産にかかる手術やその他の費用も無料です。

ワークライフバランス

英国の労働法定時間は週48時間(残業時間を含む1週間の平均)です。このため、多くの人が残業をせずに帰宅します。

さらに、2003年にフレキシブル・ワーキング法が施行され、6歳以下の子ども、あるいは18歳以下の障がい者を持つ親は、柔軟な雇用形態で働くことを申請する権利が認められました。

ここでいう柔軟な働き方には、フレックスタイム勤務、在宅勤務、短時間勤務に加え、以下のような例があります。

 

年平均労働時間:年単位で労働時間に基づく勤務時間帯の調整が可能


集約勤務
:週4日など所定日数より短い期間に集中して勤務可能(賃金はフルタイムと同じですが、1日の所定労働時間を越えても残業手当は支払われません)


ジョブシェアリング
:フルタイム1人分の業務を、パートタイム2人で担うもので、賃金や有給休暇、福利厚生なども共有可能


学期間勤務
:学校の休暇期間に無給の休暇を取ることが可能

女性管理職

2010年の平等法(Equality Act 2010)によって、公共部門に対し「男女間賃金格差に関する情報の公表」が義務化されました。これは、2017年には従業員数250人以上の企業にも導入され、専門のポータルサイトで対象企業の格差率が見られるようになっています。

なお、開示を忘れたり拒否した企業には、上限なしの罰金が課される可能性があります。

 

また、企業の自主的な取り組みによる女性役員比率の引き上げを促進するため、2011年から「女性役員調査報告書(Women on Boards Review)」が発行されています。

2015年には、この対象企業(FTSE100社=ロンドン証券取引所の上場銘柄のうち時価総額上位100銘柄)における女性役員の比率が23.5%となり、英国政府の目標とする25%に大きく近づきました。また、すべての対象企業に女性役員が含まれていることも初めて報告されています。

 

北欧やドイツのように法律によるものではなく、企業の自主的な取り組みで成果を挙げているところが英国の特徴です。

保育サービス

英国では、3、4歳児を対象に週30時間(年間38週)の保育の無償化が実施されています。しかし、3歳未満の子どもがいる親は、自己負担で子どもをどこかに預けて働かなくてはなりません。

この場合、いくつかの保育施設がオプションとして挙げられます。

 

ナニー:英国にはナニーの国家資格や専門学校があり、乳児・幼児保育のプロフェッショナルとして普及しています。住み込みで雇うケースもあります。

ベビーシッター:ナニーのような専業ではなく、アルバイトで保育を請け負います。

チャイルドマインダー:自身も子どもがいる女性が自宅で他の子どもを預かる少人数保育制度です。国家資格が必要で、「Ofsted」という政府運営の監査機関による監査も行われます。

ナーサリー:日本の保育園にあたる施設です。フルタイムまたはパートタイムでの利用が可能です。

”家族政策不介入の米・英”と”介入する欧州諸国”

北欧、フランスは早い段階から様々な政策を打ち出し、女性の社会進出を進めてきました。ドイツもこれに続き、現在は国単位で様々な施策を行っています。

一方で、米国は労働に対して政府が介入することに消極的ですが、自由度の高い働き方や夫婦での子育てによって、高い出生率と女性活躍を実現しています。英国も、政府が企業に自主的な行動を促すことにより、女性活躍を後押ししてきました。

 

3回にわたって北欧、フランス、ドイツ、米国、英国の「女性活躍」事情を見てきました。

本シリーズで取り上げた国々に共通していることは、「(米英の場合は費用が高いが)保育サービスが充実していること」、そして「男女ともに所定労働時間内に効率良く働いて結果を出すことが重視されること」です。

このことからも、日本で女性活躍を推進するためには、“保育サービス”や女性管理職の比率引き上げも含む“女性活躍支援の施策”の拡充とともに、残業削減に向けた労働時間の管理や人事制度面の工夫など、パートナーである男性も家事育児に参画しやすい“仕組みづくり”や“文化の醸成”が必要になってくるのではないでしょうか。

 

▼欧米社会における女性の働き方

③公的サポートは日本の方が充実?それでも米・英で「女性活躍」が進むワケ

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