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もはやオフィスは都会にある必要がない、パソナが作る夢の働き方

2021.01.04

企業特集記事②のメインビジュアルです。

1970年代から日本の人材を担ってきたパソナ

コロナ禍における企業の働き方改革を追う本特集。

前回は、国内の大手総合エレクトロニクス企業 富士通による、大規模な働き方改革を紹介。富士通の働き方改革は、ニューノーマル時代に向けた、リソースとコストの破壊と再構築だと論じた。

 

コロナ禍において、労働環境を変革した企業は富士通だけではない。ユニークなのは、兵庫県の淡路島に本社機能を移転すると発表した株式会社パソナグループだ。

前進となる株式会社テンポラリーセンターも含めると同社の歴史は長く、1970年代から続いている。何度かの改称や事業の統合を行った後、現在の株式会社パソナという名称になったのは1993年のこと。

以降もいくつかの新規分野への参入や、他社の買収などによる子会社化により拡大を続け、現在は資本金50億円、従業員数およそ2万人を数える、国内の大手人材派遣業者として君臨している。

 

2000年代に入ってからは、中国の上海にPasona Human Resources Co.,Ltd、米国シカゴに米三菱商事との合弁会社であるPASONA MIC, INC.を設立するなど、海外進出にも意欲的。現在は、北米地域ではカナダに、アジア太平洋地域では台湾やシンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドなどにも各国の法人を有している。

数ある人材派遣会社の中でも、国内外を問わず、また業種も問わず、総合的に人材派遣を行う、超大型の派遣会社と言えるだろう。

千代田区から淡路島へ本気の本社移転

パソナの本社はこれまで東京都千代田区にあった。国内にも数多くの拠点を持つが、本社オフィスでは、主に人事、財務経理、経営企画、新規事業開発、グローバル関連業務、IT/DXを担っていた。公表している業務内容も、いかにも本社らしく、パソナという企業の心臓部が千代田区に集中していたことになる。

 

私が「パソナが淡路島へ本社を移転」という第一報を見たときの率直な感想は、「移転とは言っても、コワーキングスペースを設置する程度では?」というものだ。

これは「大企業の本社といえば東京」という固定観念が私の中に強く根付いていたことも意味しているが、東京の本社に中枢機能を残しつつ、遠隔地に作業スペースのようなオフィスを設立し、「コロナ時代の都市の過密に配慮している姿勢を見せる」という、いわばパフォーマンス的な発表ではないかと、うがった見方をしたのだ。

 

ところが、次第に明らかになった本社移転計画を知り、私は認識を改め、自分の懐疑的な目線を深く恥じることとなったのである。

まず、淡路島には、およそ1,800人の本社機能社員のうち、1,200人が移転することが決定している。単純に考えれば、これは本社社員のうちおよそ2/3に当たり、人的リソースは1/3しか東京に残さないということになる。

ここが仮に、「1,800人の内100人」という発表だったら、私は「ほら、やっぱりね」と自身の懐疑的な分析に自信を持っていたところだが、2/3もの移転人数は、伊達やパフォーマンスというわけにはいかない。同社は、「本気で」淡路島に移転するのだ。

 

移転する業務もすでに明らかにされており、主には、クライアントとの直接的なやりとりが発生しない人事(採用、教育、給与計算等)、広報、総務、財務経理、新規事業開発、IT/DX、グローバル、経営企画といった業務の担当者が対象。

さらに、クライアント向けのインサイドセールス、デジタルマーケティング、AIを活用したコンタクトセンター、給与計算のクラウド化、RPAによる業務自動化など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の機能も、合わせて淡路島に置くという。

狙いは、真に豊かな生き方と働き方の追求

肝心な移転の理由について、同社では「働く人々の『真に豊かな生き方・働き方』の実現と、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策の一環」と公表している。

さらに、「就職氷河期世代やシニア世代、ひとり親家庭をはじめ様々な方に門戸を広げ、雇用する」とも発表しているが、この文面を見ただけでは、率直に言っていまいちピンと来ない。そこで、同社を取り巻く環境や、公式発表の内容から、その狙いをすこし深掘りしてみよう。

 

パソナと淡路島の関係は、実はいまに始まったものではない。同社は、グループ会社である株式会社パソナ農援隊という企業を2011年に淡路島に設立しているのだ。

パソナ農援隊は、農業分野における人材の育成、新たなビジネスモデルの構築、サポートインフラの整備を主業務とする企業で、2008年にパソナ本体の一事業としてスタートした「チャレンジファーム」という新規就農者支援事業に端を発する。

チャレンジファームでは、4ヘクタールだった農地を10ヘクタールにまで拡大し、農作物の生産だけでなく、加工、販売までを一貫して行う仕組みを確立している。新型コロナウイルスの影すらなかったおよそ10年前から、同社はすでに淡路島でビジネスを展開していたのである。

 

また同社は、自治体や地元関係者とも連携し、地域活性事業にも取り組んできた。

代表的なのは、兵庫県立淡路島公園内に設立されたテーマパーク「ニジゲンノモリ」だ。ニジゲンノモリは、アニメ、テクノロジー、自然の掛け合わせをテーマとし、家族で楽しめるアトラクションや園内の自然を活かしたアスレチック、グランピングをも楽しめるという大型の複合施設だ。

2020年8日には、ニジゲンノモリから車で10分ほどの海沿いに、劇場を併設したレストラン「青海波-SEIKAIHA-」もオープンしている。

 

さらに、関西の地理を知らないと意外に思うかもしれないが、淡路島は、実は大阪市の梅田駅から車で1時間強、電車とバスを乗り継いでも2時間ほど。「都会」へのアクセスも、そう悪くはないのだ。

 

さて、ここまでに紹介したいくつかのファクターと合わせて、総合的にパソナの移転を考えてみると、印象が変わってくるのではないだろうか。

すでに淡路島にビジネスの基盤があり、自治体とのつながりもある。本社機能社員の2/3が移転し、IT、DX機能も置く。これまでにも淡路島の地域活性化事業に取り組んでいて、施設もオープンしている。

豊かな自然に囲まれて、生活と仕事の向上

ここから読み取れるのは、「パソナは淡路島でやっていく」という、むしろポジティブな意図だ。

前稿で伝えた通り、新型コロナウイルス感染症の拡大により、いわゆる「3密」が発生しやすい人口過密都市である東京都、特に23区に対するネガティブなイメージが広がったことも、もちろん今回の移転の判断材料にはなってはいるはずだ。

だが、本質的には「東京を出る」ことよりも、「淡路島という環境でビジネスをする」方に比重があり、豊かな自然に恵まれ、居住環境としての利便性は決して悪くない淡路島で、「真に豊かな生き方・働き方」を社員と一緒に追求していくことが、パソナの本社移転の狙いだと分析できる。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、「都会」の抱える危うさも世間が知るところとなった。

現在、首都圏ではほとんどの企業や施設が感染対策を実施しており、道ゆく人たちの間にも、マスクをし、他人と距離が近くなりすぎないように配慮する姿勢が広がりつつある。しかし人口過密であることに変わりはなく、地方都市と比べて感染リスクが高いのは明らかだ。

パソナは「日々、感染の心配を抱えながら都会でサラリーマンをするのもいいけど、豊かな自然に囲まれながら、リラックスして仕事と生活の向上を図っていきませんか?」と世間に語りかけているように思える。

text: 海岡史郎

 

▼変貌する社会の新たなスタンダードを探求する企業たち

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