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スタートアップが取るべき“コミュニティマネジメント”を活用したチームづくり

2021.01.05

コミュニティマネジメント特集記事のメインビジュアルです。

 

社会課題を解決するための革新的なビジネスモデルを携えて急速な成長を狙うスタートアップ。財務省の広報誌「ファイナンス」によると、日本では年間で1,000社を超えるスタートアップが生まれています。

 

自社の商品やサービスの開発・強化に集中しなければいけない成長過程のスタートアップでは、会社という共同体を維持存続、成長させていくために必要不可欠な「強いチームづくりに役立つ施策の検討・実施」まではなかなか手が回らない、ということが往々にしてあります。

従業員が少数のうちは、メンバーのほとんどが創業者の思いや理念、企業のビジョン・ミッション・バリューに惹かれて集まり、チームは「高い熱量を持った集団」として機能します。

 

しかし、成長して集団が大きくなっていく過程で、「熱量の浸透」という観点で少人数では起こらなかった様々な問題が発生します。

そうした時、これらの問題を解決するためにどのような施策があるのでしょうか?

集団規模の拡大には帰属意識の醸成で対処

ここからは、スタートアップのチームを1つの「コミュニティ」と捉え、このコミュニティを「マネジメント」するという観点で問題解決のヒントを探っていきます。

 

スタートアップのように短期間で急激な変化が伴う企業にとって、コミュニティの形成とそのマネジメントは非常に重要です。30人、50人、100人と規模が拡大するにつれて、重要性はさらに高まります。

 

コミュニティマネジメントの基礎となるのは、メンバー一人ひとりのコミュニティに対する帰属意識を高めることにあります。

チームにおいて、各メンバーが自らの仕事を“自分事”として捉えるだけでは十分ではなく、チームの一員として“自分達事”と捉えることが必要であり、このために重要なのが帰属意識の醸成になります。

 

つまり、チームに対する意識を一人称の“I(わたし)”ではなく、二人称の“We(わたしたち)”にまで引き上げるということが必要です。

“We”のレベルまで帰属意識が醸成されると「チームの中で自分がどのようなアクションを起こせば全体に貢献できるか?」という意識が行動に表れるようになります。

その結果、シナジーが生まれやすくなるだけでなく、様々な問題をチーム自身でフォロー、解決できるようになっていきます。

 

では、“We”のレベルにまで帰属意識を醸成し、高めるためには、どんな方法が効果的なのでしょうか?

コミュニティの中と外を演出する

帰属意識の醸成には、境界線を認識させることが効果的です。

「コミュニティに入った」、「コミュニティの中にいる」、「コミュニティから出た」という境界線を意識させる仕組みづくり、つまり「コミュニティの中と外を演出すること」が必要になります。

 

その代表的な例が、会社というコミュニティに入ったことを認識させる入社式やオリエンテーションです。

新たなメンバーを迎える際に、大企業の新卒入社式のような大掛かりなものでなくとも、普段とは異なる改まった場や歓迎会を設けるだけでも「チームに入った」という意識を高めるきっかけになります。

ここでまず中と外を分ける境界線を引くということが肝要なのです。

 

また、「コミュニティの中にいる」という意識を高めること、そしてそれを維持することも重要になります。

多くの企業で既に実践されていますが、表彰式のような社内イベントの開催や、オリジナルのステッカーやTシャツといったグッズ作成など、“We”を意識させる仕組みづくりで、コミュニティの中と外の境界を演出していきます。

 

その過程で、「社内用語」のようなチーム内特有の言葉が生まれることがありますが、これは自然発生的にコミュニティの外との境界が演出され、コミュニティが盛り上がっていることを示す例でもあります。

一方で、この境界を強調しすぎると、かえって他のチームなど、コミュニティの外から見た場合に排他性が高まってしまうため、チームを大きくしていく必要があるスタートアップでは、そのバランスに注意が必要です。

 

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として、多くの企業が在宅勤務やテレワークを推奨していますが、帰属意識の醸成には、チームが活動するオフィスという場が重要になってきます。

「リアルな場」によって、分かりやすく、身体的・物理的に「境界」を演出することができるからです。

 

在宅勤務やテレワークでメンバー間に生じた「出勤しなくとも勤務はできる」という認識は、帰属意識の希薄化を招き、将来的にチームづくりに影響が出てくる恐れを孕んでいます。

コロナ禍における帰属意識の醸成は、あらゆる企業の喫緊の課題と言えるでしょう。

シェアオフィスに見る境界線の演出

ここからはシェアオフィスを例に、コミュニティの中と外を演出する施策を見ていきます。

 

近年、スタートアップの企業同士がコミュニティを醸成できる場所として、シェアオフィスに注目が集まっています。

東京駅前の八重洲・日本橋・京橋エリアを中心としたまちづくりに取り組んでいる東京建物株式会社のxBridge-Tokyo(クロスブリッジトウキョウ)は、これまで約30社、200名以上のスタートアップが入居しているスタートアップ向けシェアオフィスです。

ここでは、入居者同士が助け合うことでビジネスの協業が生まれるなど、シェアオフィス内に熱量の高い起業家コミュニティが形成されています。「xBridge-Tokyoに所属している」という帰属意識が醸成された結果、利用者同士で互いに助け合おうという意識が生まれているからです。

 

その意識を生む工夫が、やはり中と外を演出する仕組みである入居の際の「ピッチ(短いプレゼンテーション)」と、退去の際の「卒業式」です。

xBridge-Tokyoでは、入居に際しては必ず起業家にピッチをしてもらい、「xBridge-Tokyoで急成長を遂げる志があるか」、「コミュニティにこれまでの知見や人脈を提供できるか」などの意思確認を行う儀式的なイベントを設けています。

また、退去の際には、卒業記念としてトロフィーを贈っています。

 

「特に卒業式では、xBridge-Tokyoのコミュニティの外に出たという認識を、事業成長の次の段階にシフトチェンジする原動力にしてほしい」と同シェアオフィス運営責任者の渡部氏は言います。

卒業と銘打つことで、卒業したスタートアップには「アルムナイ(卒業生)」として引き続きコミュニティを意識してもらうきっかけにできると共に、引き続き残る企業に対しても、焦燥感を刺激しつつ、「同じステージにいる仲間」という意識付けを行うことができます。

 

また、その結果、xBridge-Tokyoに関わったスタートアップ同士での熱量の高まり相互貢献の意識が生まれ、「このコミュニティに入れば、事業成長につながる」という意識が生まれるという好循環を生み出しています。

スタートアップのコミュニティ運営をサポートする存在

集団規模が大きくなると入退社する人が増え、小規模時にあった「一体感」や「居心地の良さ」は次第に薄れていきます。そして、それらは帰属意識の維持の足かせになりかねません。

 

そこで注目したいのが「コミュニティマネージャー」という役割です。

コミュニティマネージャーは、コミュニティを円滑に運営・維持するための環境の整備やルールづくりといった総務的な役割に加え、メンバーの交流促進や満足度向上といった人事的な役割も担うなど、チームのパフォーマンス向上に貢献するコミュニティ運営のエキスパートとして存在します。

シェアオフィスのコミュニティマネージャー

複数の企業が利用するシェアオフィスでは、単なる場所の提供だけではなく、「コミュニティ」を付加価値として提供するためにコミュニティマネージャーを置くところが増えてきています。

 

前述のxBridge-Tokyoの渡部氏は、同シェアオフィスの運営責任者ですが「入居するスタートアップの成長をサポートするコミュニティマネージャーの役割も担いたいと思った」と言います。

 

「入居者同士がコミュニティを活用し、アイデアや人脈を共有し合って各社の事業に活かしてもらうこと。それが、xBridge-Tokyoでコミュニティをマネジメントする目的の1つです」

 

シェアオフィスのコミュニティマネージャーとスタートアップ企業内のコミュニティマネージャーでは、その目的や役割が多少異なりますが、ここでは、スタートアップ企業内のコミュニティの活性化にも活用できる施策や考え方を見ていきます。

コミュニティ同士をつなぐシェアオフィスならではの仕掛け

シェアオフィスxBridge-Tokyoでは、入居者同士のコミュニティを活性化するために、さまざまなタッチポイントを用意しています。

 

例えば、運営者が常駐しないことで、コピー用紙の補充やウォーターサーバーの水の交換などのオフィス運営の一部を入居者が担う仕組みになっています。

これによって自主的な運営を通した連帯感や共通の話題が生まれ、自然なコミュニティの活性化につなげることが狙いです。

 

渡部氏は、

 

「オフィス内に設置したバーカウンターも仕掛けの1つです。電子レンジや冷蔵庫などが自由に使えることはもちろん、コロナ前は、誰でも飛び入り参加可能な飲み会、通称『ゆる飲み』も開催していました。理想は、運営者がイベントの集客に努めて入居者を無理につなぐのではなく、入居者一人ひとりが自然に接点を持ち、コミュニケーションが自然発生することです。コミュニティマネージャーは、あくまでも裏方に回ってコミュニケーションの自然な発生や活性化を支えることが重要だと考えています」

 

と話します。また、

 

「時には共有物の使い方を巡って細かなトラブルが起きることもありました。当初は注意書きを掲示していましたが、一向に効果が見られません。そこで、コミュニティに配慮した利用をされている方に対して、オフィス内やSNS上のオープンな空間で感謝の気持ちを述べるようにしました。これは、コミュニティマネージャー育成の学校BUFFで学んだことですが、『ネガティブなことが起きた時はリアクションを小さく、ポジティブな時はリアクションを大きく』することを念頭に運営すると、上手くいく場面が多くなりました。単純な方法ですが、入居者同士のストレスが少ないルールづくりを自然に浸透させることができるので、コミュニティも良い方向に向かうと思います」

 

とも話します。

 

そして、コロナ禍でテレワークが増加しても、タッチポイントの重要性は変わらないと言います。

 

「xBridge-Tokyoでは、シェアオフィスの運営に関する日常の連絡にはSlackを使用していますが、Slack上で運営以外のコミュニケーションも図ることで、シェアオフィスの外でもxBridge-Tokyoを意識し、コミュニティを活用してもらいたいと思っています。コロナ禍により、リアルの場で得られるコミュニティへの所属意識が希薄になりがちだからこそ、オンラインツールも活かしてコミュニティを更に活性化させたいと考えています」

 

ここまで、シェアオフィスにおけるコミュニティマネジメントの意義やコミュニティマネージャーの役割を見てきました。

シェアオフィスとスタートアップでは、目的や役割が多少異なりますが、境界線の演出法やタッチポイントの設け方、そしてメンバーからコミュニティへの配慮を引き出す運営のポイントなどは、一般企業でも大いに参考になるのではないでしょうか。

スタートアップ成長の鍵「帰属意識」と「コミュニティマネージャー」

集団規模が拡大するスタートアップでは、熱量の浸透が課題であり、そのためには「コミュニティに対する帰属意識の醸成」と「コミュニティの中と外を演出する仕組みづくり」が重要であることは既に述べた通りです。

 

それでも集団が大きくなることで綻びが生じる場面は出てくるでしょう。

チーム内のコミュニティがその力を存分に発揮するためには、コミュニティの運営をカバーしてくれるコミュニティマネージャーの存在が大切になります。

本稿で紹介した施策や考え方を参考に、自社でコミュニティマネージャーの役割を担う人材の配置や施策を検討してみてはいかがでしょうか。

 

しかし一方で、成長段階にあるスタートアップには、コミュニティのマネジメントに割くリソースの余裕がないケースがほとんどです。

そのような場合は、コミュニティマネージャーが在籍するシェアオフィスのイベントに参加するなどして、コミュニティ運営について学ぶという手もあります。

特にxBridge-Tokyoようなスタートアップに特化したコミュニティであれば、所属するだけで、チームに好影響を与える熱量の高い入居者と出会ったり、ビジネスの協業が生まれる可能性もあります。

また、スタートアップ期を超えた後も、ここで実際に経験した「コミュニティの力」は、自社でチームを強化していくフェーズや、人事・組織戦略を立てる手段としてコミュニティマネージャーを配置する際に役立つなど、自社成長の糧にもなるのではないでしょうか。

 

東京建物・渡部美和さんの画像です。
記事監修:渡部 美和
東京建物株式会社 まちづくり推進部 都市政策室 主任
コミュニティマネージャーの学校「BUFF」認定コミュニティマネージャー

慶應義塾大学文学部卒業後、2015年東京建物に入社。オフィスビルの法人営業を担当後、シェアオフィス「+OURS」の運営業務に従事。2018年より、大好きな八重洲・日本橋・京橋エリアの魅力をスタートアップに発信するため、スタートアップ・スタジオ「xBridge-Tokyo」をXTech社と共に開設し、“みんなの総務”として入居者の成長支援を開始。現在は、同エリア独自のイノベーション・エコシステムの形成・発展に向けて、さまざまなプレーヤーと共に各施策を推進中。

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